EC事業者、顧客、配送員、地球環境にも優しい配送を
翌日配送、時間指定が当たり前となったEC物流だが、配送現場に無理がきていることも事実。株式会社LOCCOは自社インフラを活かし、置き配の新サービス「OCCO」を展開。配送コストの削減をはじめ、顧客の受け取りや配送員の作業の負担も軽減でき、CO2削減にも貢献できる。同社取締役社長の関谷文隆氏にサービスの詳細について伺った。
EC業界における配送状況の変化
―コロナによってEC業界は売上が伸びましたが、配送周りではどのような変化がありましたか。
BtoCの配送数は、以前より増加しておりましたが、コロナ禍でその数は急増し、再配達によるドライバーへの負担がより顕著になりました。再配達の比率はコロナ前で15%、昨年で12%にも上ります。Amazonの置き配分を加味した数字ですので、それ以外の配送ではさらに比率が高くなるでしょう。また再配達が増えれば、CO2の排出量も比例して増えます。この影響で、近年では、不在時や非対面でも受け取れる置き配が求められるようになりました。
運賃上昇、配送員減少となる「2024年問題」が迫っている
―2024年には、自動車運転業務の時間外労働上限規制などが義務付けられます。
「2024年問題」ともいわれますが、運賃の上昇、物流企業の売上減少、配送員の収入減少など、さまざまな課題が発生するといわれています。さらに配送員の高齢化も深刻な問題となっております。
一つの解決策として、EC事業者は置き配サービスの導入を検討すべきです。そのためには顧客が簡単に置き配を選択できるようなシステムや出荷の仕組みが必要ですが、膨大な費用と時間がかかり、自社で用意するのは難しいと思います。
グループ会社のシステムや幹線輸送を活かしてコスト削減
―配送サービス「OCCO」をリリースした背景とサービス概要を教えてください。
現在、物流業界は日時指定の配送や、翌日指定などの配送、さらに再配達対応など顧客の要望に合わせた配送を行っている状況ですが、配送員の長時間労働の解消や高齢化への対応からこのままでは破綻しかねません。LOCCOでは置き配サービスを提供することで、そこからこぼれてしまう荷物をしっかり届けられる環境をつくりたいと考えました。
LOCCOのリソースを他社様にもご提供し、簡単に置き配ができるようにしました。配送についてはセイノーホールディングスが持つ全国画一の幹線配送網でお近くの配達店まで輸送し、ラストワンマイルの配送はLOCCOの地域に密着したパートナー企業が行います。
―盗難などリスクへの対応は?
荷物をお届けたしたときに配送員が写真を撮影し、顧客のスマホに画像をお送りしますので、在宅ならすぐ取りに行っていただけます。置き場所に宅配ボックス、ガスメーターなど、盗難リスクのない場所を指定していただくことでも予防できます。
また顧客が商品を手に取る前に、箱が雨やほこりをかぶらないよう、ビニールとオリジナルのロゴ入りテープで包んで置きます。このサービスも好評いただいています。
―LOCCOの置き配サービスのメリットはどんなところでしょうか。
一番はコストの安さ。幹線を走る大型トラックをグループ会社が多数用意しているため、幹線部分でのコストダウンが図れます。
また複数の荷物を一つにまとめて“ロット化”する「OCCO」の提供により1個当たりのコストも減らしています。
さらにラストワンマイルでは新聞の配達業者の余力を活かすなど、さまざまな配送パートナーと協力関係を築くことでもコストをカット。「OCCO」を使うことでEC事業者の物流費が10%削減しています。
―配送スピードについてはいかがですか。
日時指定はお受けせず、配達店には翌日到着し、そこから顧客にお届けするまでは3日間ほどいただきます。多くの方は、すぐ必要なものはお急ぎ便で買うか、近所の店舗に買いに行きます。日時指定できないデメリットよりも、EC事業者や顧客は運賃コストが抑えられ、配送員が余裕を持って仕事ができるメリットの方が大きいと考えます。
再配達がなくなることでSDGsの取り組みにも
―他にも「OCCO」を利用するメリットがあれば教えてください。
昨今、環境に配慮した商品を販売するEC事業者も増えていますが、配送周りも環境に配慮し商品をお届けしたいというお声を頂いております。置き配を導入することで、CO2の排出は抑えられます。企業としてSDGsへ取り組みをしなければいけないといわれていますが、何から始めたらいいのか分からない方にまずは、「OCCO」を選ぶことでSDGsの取り組みにもつなげていただけます。
また再配達がなくなれば、配送員の負担が減り、顧客のストレス軽減にも寄与。配送に関するアンケートを取った結果「配送員さんに再配達で迷惑をかけたくない」「暑い中、寒い中、いつも届けてくれてありがとう」などのコメントが多く、たくさんの方が配送員に思いを持っていただいていることに驚きました。「OCCO」でしたら、その思いに応えられます。
今後は企業の姿勢として配送スタイルも重視される時代
―配送の視点から、今後EC事業者はどのようなことを意識するべきでしょうか。
今後は配送スタイルもその会社の姿勢を表すものとして重要視されると考えます。実際に、地球に優しい商品を販売されていながら、配送員や環境に負担をかける配送をしていることにお悩みだった事業者様が、「OCCO」を導入することで理念を貫けた事例もございます。
―今後の展望についてお話ください。
直近の課題はオートロックマンションへの配達方法です。オートロックマンションには宅配ボックスが設置されていますが、午前中のうちにいっぱいになることも多いです。そこでLOCCOではシステム会社と連携し、スマートロックが導入されたマンションを対象に、配送員がスマホアプリを使用して共用部のオートロックを開錠、配送先の玄関前に置き配できるしくみを準備しています。今後は対応範囲を拡大し、対応するECサイトの拡充にも注力するとともに、顧客の希望に応じて占有部にもスマートロックを設置し、玄関内に荷物を届ける配送への展開も視野に入れています。
なおLOCCOでは、配送員が自分のスマホにアプリを入れるだけで配送ができます。配送員不足が懸念される今後、すきま時間で仕事ができるような未来もつくりたいですね。今後もEC事業者、顧客、配送員、環境にも優しい配送をテーマに運営してまいります。