EC物流の棚卸、出荷を止めずにできる? 現場で起きる課題と注意点

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EC物流を運用していると、避けて通れない業務のひとつが「棚卸」です。

棚卸とは、倉庫にある実際の在庫数と、システム上の在庫数が一致しているかを確認する作業です。
一見すると、単純に「商品を数えるだけ」のように思われるかもしれません。

しかし、EC物流の現場では、日々入荷・出荷・返品・移動・検品など、さまざまな作業が同時に動いています。
そのため、棚卸を正確に行うには、想像以上に慎重な設計が必要です。

特に多いご相談が、

「出荷を止めずに棚卸はできますか?」

というものです。

EC事業者様にとって、出荷を止めることは売上機会の損失やお客様対応への影響につながるため、できるだけ避けたい判断です。
一方で、物流現場としては、正確な在庫数を把握するためには、一定時間でも在庫の動きを止めた方が安全です。

今回は、EC物流における棚卸の考え方と、出荷を止めずに実施する場合の注意点について解説します。

棚卸で一番重要なのは「いつ時点の在庫か」

棚卸で重要なのは、単に商品を数えることではありません。

大切なのは、

「いつ時点の在庫数を確定させるのか」

という基準を明確にすることです。

たとえば、棚卸作業中にも出荷が進んでいる場合、現場では次のようなことが起こります。

・棚卸で数えた後に商品がピッキングされる
・出荷予定の商品がすでに作業場へ移動している
・システム上は出荷済みだが、実物はまだ倉庫内にある
・返品や入荷が同時に発生する
・棚卸中に在庫ロケーションが変わる

このような状態で在庫を数えると、
「実際に数えた数量」と「システム上の数量」がズレやすくなります。

そのため、棚卸ではまず、

棚卸基準時点をどこに置くか

を決める必要があります。

出荷を止めて棚卸するメリット

物流現場として最も正確に棚卸を行いやすいのは、出荷や入荷を一時的に止める方法です。

出荷を止めることで、棚卸時点の在庫が動かなくなるため、数量を確定しやすくなります。

メリットとしては、以下のような点があります。

・実在庫を正確にカウントしやすい
・システム在庫との差異確認がしやすい
・再カウントがスムーズにできる
・作業者間で認識を合わせやすい
・棚卸完了までの時間を読みやすい

特にSKU数が多い場合や、在庫数が多い場合は、出荷を止めた方が棚卸精度を高めやすくなります。

また、初回の棚卸や、これまで在庫差異が多く発生している現場では、まずは一度しっかり在庫を止めて確認する方が、後々の運用改善にもつながります。

出荷を止めずに棚卸することはできるのか?

結論から言うと、
出荷を止めずに棚卸を行うこと自体は可能です。

ただし、出荷を止める棚卸と比べて、難易度は大きく上がります。

出荷を継続しながら棚卸を行う場合、棚卸中に動いた在庫を正確に反映させる必要があります。

たとえば、

・棚卸後に出荷された数量
・棚卸前にピッキング済みだった数量
・作業場に移動済みの商品
・出荷キャンセルとなった商品
・当日入荷した商品
・返品で戻ってきた商品

こうした動きをすべて整理しなければなりません。

システム上でリアルタイムに在庫移動が管理されており、入出荷履歴をSKU単位で正確に追える場合は、出荷を止めずに棚卸することも比較的現実的です。

一方で、システムや運用がそこまで整っていない場合は、手計算や個別確認が増えるため、棚卸の完了までに時間がかかったり、差異の原因特定が難しくなったりします。

出荷を止めない棚卸で起きやすい課題

出荷を止めずに棚卸を行う場合、現場では次のような課題が発生しやすくなります。

1. 差異の原因が分かりにくい

棚卸中にも在庫が動いているため、差異が出た場合に、
「数え間違いなのか」
「出荷処理によるものなのか」
「システム反映のタイミングによるものなのか」
を切り分けるのが難しくなります。

2. 作業者の負担が増える

通常の棚卸作業に加えて、当日の出荷分やピッキング済み商品の確認が必要になります。
そのため、現場作業者の負担は大きくなります。

3. 棚卸完了まで時間がかかる

在庫を数える作業そのものよりも、差異確認やデータ突合に時間がかかることがあります。
特にSKU数が多い場合は、棚卸後の確認作業が長引く可能性があります。

4. 棚卸精度を担保しづらい

出荷を止めていない以上、完全に静止した状態で在庫を見ることができません。
そのため、棚卸精度を高めるには、事前のルール作りと作業手順の明確化が重要になります。

出荷を止めずに棚卸する場合に決めておくべきこと

出荷を止めずに棚卸を行う場合は、事前に以下の点を決めておくことが大切です。

★棚卸基準時点

何月何日何時時点の在庫を正とするのかを決めます。

★当日出荷分の扱い

棚卸前にピッキングした商品、棚卸後に出荷した商品をどのように反映するかを整理します。

★入荷・返品の扱い

棚卸当日に入荷や返品を受け付けるのか、受け付ける場合はどのタイミングで在庫反映するのかを決めます。

★差異発生時の確認方法

差異が出た場合、誰が、どのデータを見て、どこまで再確認するのかを決めます。

★完了報告のタイミング

棚卸当日に速報値を出すのか、差異確認後に確定値を出すのかも決めておく必要があります。

循環棚卸という考え方

出荷を止めずに在庫精度を維持する方法として、循環棚卸という方法もあります。

循環棚卸とは、全在庫を一度に数えるのではなく、日々または週次で一部の商品を順番に棚卸していく方法です。

たとえば、

・動きの多い商品を重点的に確認する
・高単価商品を定期的に確認する
・ロケーションごとに分けて確認する
・出荷頻度の低い商品から先に確認する

といった形です。

循環棚卸を取り入れることで、出荷を止める負担を減らしながら、日常的に在庫精度を高めることができます。

ただし、これもシステム管理や運用ルールが整っていることが前提になります。
いきなり導入するのではなく、まずは対象商品や頻度を絞って始めるのが現実的です。

荷主様と物流会社で事前にすり合わせたいこと

棚卸は、物流会社だけで完結する業務ではありません。

荷主様側の販売状況、出荷停止可否、在庫証明の必要性、会計上の締め日などとも関係します。

そのため、事前に以下のような内容をすり合わせておくとスムーズです。

・棚卸の目的
・実施希望日
・出荷停止の可否
・対象商品
・報告形式
・在庫差異が出た場合の対応
・棚卸費用
・次回以降の実施頻度

特に、出荷を止めるか止めないかは、荷主様にとっても物流会社にとっても大きな判断になります。

「出荷は止めたくない」
「でも正確な数量は出したい」

この両方を実現するには、現場側の作業負荷やシステム上の制約を踏まえた現実的な設計が必要です。

まとめ

EC物流における棚卸は、単に在庫を数える作業ではありません。

日々出荷が動く中で、
どの時点の在庫を正とするのか
出荷中の在庫をどう反映するのか
差異が出た場合にどう確認するのか
を決める必要があります。

出荷を止めれば、棚卸精度は高めやすくなります。
一方で、出荷を止めずに棚卸することも可能ですが、その分、作業設計やデータ管理の難易度は上がります。

大切なのは、荷主様と物流会社が事前に認識を合わせ、無理のない方法で進めることです。

EC物流では、売上を止めないことも大切です。
しかし同時に、正確な在庫管理も欠かせません。

棚卸は、日々の物流運用を見直す良い機会でもあります。
在庫差異や運用負荷にお悩みの場合は、棚卸のやり方から見直してみるのも一つの方法です。


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