【第2回】売上が劇的アップしたECショップの共通点『ユーザーが商品を選べない→選べるように改善』

水上 浩一

売上アップの教科書

EC実践会講師の水上 浩一です。

売上が劇的アップしたネットショップに共通する3つの改善点1番目、
「(1)リソースの分散→集中」を前回は説明させていただきました。
大体、EC実践会にご参加いただいている50%ぐらいの店舗さんは
ヒト・モノ・カネのどこかの領域でこのリソースの分散状態に陥ってしまっています。

これは実は店舗さん側ではなかなかわからないのです。
正確に言うと、経営者さんはリソースが分散している、
とは思っていないことが多いのです。
ですからEC実践会や個別のコンサルティング等で外部の目線でのアドバイスが有効なのです。
今回は、「売上が劇的アップしたネットショップに共通する3つの改善点
(2)ユーザーが商品を選べない→選べるように改善」ということについて説明させていただきます。

(2)ユーザーが商品を選べない→選べるように改善

■売上が劇的アップしたネットショップに共通する3つの改善点
(2)ユーザーが商品を選べない→選べるように改善

仕事で1年半、毎月香川県にうかがっていました。
たまに車で移動することがあり、そのときは瀬戸大橋を利用するのですが、
橋の途中に「与島」という島があり、そこにサービスエリアがあります。
そこで休憩したときのこと。
サービスエリアには大きな売店がありました。
与島は香川県なので、その売店には香川県の名産品等のお土産がズラッと並んでいました。
水上は、香川県と言えば「讃岐うどん」しか思い浮かばなかったので、
「すごいなあ、香川県にはこんなにたくさんの名産品があるんだなあ」と思って商品を眺めていました。
すると!
なんとそこにあったたくさんの商品は、すべて「讃岐うどん」だったのです!
ざっと200アイテムはあるでしょうか?
200アイテムが売店に並んでいて、それがすべて讃岐うどんだったのです。
これはまさに商品の一点集中と言えると思いました。

そこで、写真に収め、話のネタになると思い、
なにか商品を購入しようと思いました。
ところが、10分位あれこれ見ていたのですが、
結局なにも買わずにサービスエリアを後にしました。
なぜかというと、買わなかったのではなくて、買えなかったのです。
正確にいうと「200アイテムもある讃岐うどんの中で、どれを選んだらよいかわからなかったのです」
水上は讃岐うどんの通でもなければ、プロでもありません。初心者です。

その初心者が200アイテムもある讃岐うどんの中から、
どれかを選べ!と言われても選べる訳がなかったのです。
麺の種類も「乾麺」「半生麺」「生麺」とあり、その違いも特徴も全くわかりません。
しかも、どの商品にも簡単な説明文ぐらいしか無く、パッケージはどれも違うのですが、ほとんどのパッケージはイメージ画像みたいなものが多く、うどんの美味しさが伝わってきません。
それが均等に展示してあるだけの売り場でした。
こういう販売方法を「商品単純陳列型店舗」と呼んでいて、
売れないネットショップの典型なのです。
これは実店舗でも一緒です。
実際にほとんどの方は水上と同じ行動をとっています。
しばらく商品をいろいろ眺めているのですが、結局なにも買わずに帰っていきました。

余談ですが、最近東京のEC実践会にご参加いただいてる方が懇親会で
「実はうちの社員旅行で最近香川に行って、与島のサービスエリアで休憩したんですよ。実際にその売店に行ったんですけど、本当に商品を選べなくて何にも買わないで帰ってしまいました」とおっしゃっていました。
では、このショップ、どうやったら売れるようになると思いますか?
答えは「オススメして差し上げる」もしくは「選ばせない」。

ユーザーが商品を選べない

ユーザーが商品を選べない、ということに関してよくこんなたとえ話をします。
あなたは男性で、素敵な女性をエスコートして高級フレンチレストランへ到着しました。
予約もバッチリしていて、最高級のコース料理もセレクトしてあります。
服装もパリッと決めて、テーブルに着席しました。
するとソムリエさんがあなたに「ワインをお選びください」とワインリストを差し出しました。あなたはワインのことを全く知りません。

どれをみてもフランス語で「シャトー~」とか「カベルネソーヴィニヨン」「メルロー」「シラー」
みたいな訳のわからない言葉が羅列されています。焦るアナタ。
脂汗が出てきます。向かい側の席では素敵な女性がどんなワインを選んでくれるのだろう?
と興味深く見つめています。その状況で「どれを選んだらいいかわかりません」などとは口が裂けても言えません。どうしよう、どうしたらいい・・・

すると、その時ソムリエさんが
「今日のコース料理はフィレ肉のステーキ、フォアグラ乗せがメインですから、しっかりとしたボディのこちらの赤がおすすめです」とご提案くださいました。「あー、それはいいですね。ではそのワインをお願いします」とあなた。
内心は「よ、よかった~」とホッとしていることでしょう。
このあなたの状態が新規ユーザーの心境なのです。

そして、店長さんはこのソムリエの役割を担わないといけないのです。
では、先ほどのうどんショップの場合はどうでしょうか?
たとえば「店長イチオシ!」というポップを特定の商品に設置する。
あとは、ランキング表示なども効果的ですね。
売れ筋NO.1、NO.2、NO.3と掲載すれば、ユーザーはその3つの中から選ぶことができます。
あとは、売り場に平場を作り、そこに可能であればピラミッド状に積み上げて、
「今一番売れている讃岐うどんがコレ!」みたいなキャッチコピーと一緒に掲載します。

これは実際に沖縄のお土産屋さんの実店舗でアドバイスしたことがあります。
ホテルの売店の一角を担当していたその会社さんからのご依頼で、
その売り場の売上を上げたいので力を貸して欲しいとのご要望でした。
そこはまさに商品陳列型店舗の典型でした。
そこで、ある商品を1種類だけ2メートルぐらいピラミッド状に積み上げる展示方法を提案しました。
するとその商品だけがバカ売れしてなんと10倍の売上になったのです。
お土産屋さんにくるお客様は初めて沖縄に来た方も多く、どれを買ったらよいかわからない方が多かったのです。
そこで、このように1商品にフォーカスさせて、オススメする、というよりは選ばせない売り方をするのです。

たとえばネットショップで言えば、同じ沖縄の三線屋さんがいらっしゃいますが、
トップページのファーストビューには大きなバナーで「初めての三線ならコレ!必要なものがすべてそろった!
トライアル三線16点セット!」とトライアルセットをアピールしています。
これは三線屋さんにアクセスされるユーザーは、沖縄に観光で来ていて、どこかで三線の音色を聞いて「ああ、良い音色だなあ、自分も三線が弾けたらいいのになあ」と思って検索してくる方が多いのだそうです。
つまり三線初心者が多く来店するのでトライアルセットを一番目立つ場所に設置してあるのです。

ポエムにお祝いの当事者の名前を入れ込む「名前詩」を似顔絵や写真とともに額装するギフトを制作・販売しているショップさんでは、お祝いの用途ごとにランキングを掲載することで売上を大きく伸ばされました。

たとえば「長寿のプレゼント」「結婚祝いのプレゼント」といった用途ごとに
ランキング1位~3位までを掲載することで3つの中から選べばいい、という状況を作り出しました。
名前詩額装ギフトもなかなか初めての方が選ぼうと思っても難しいので、
この掲載方法は非常にユーザーに喜ばれているようです。

行動経済学でも実証「極端の回避性」

3種類というのは絶妙な数字で、これが1個とか2個だとお店から選ばされている感じがしてしまうのです。
「どちらにしますか?」的な印象を持たれてしまいます。
4つ以上だと商品陳列型と変わらなくなってしまうので選べません。
3つの中から選ぶと選びやすい上に「自分でセレクトした」という満足感も得られます。

ちなみにそのショップさんは、ランキング以外の商品紹介でも3つの商品をページで提案していますが、そのページでは3種類の価格設定になっていて、真ん中の価格帯の商品を一押ししています。
これはいわゆる「松竹梅の3プライス展示法」です。

通常この展示法の場合、竹のプライスの商品が一番選ばれるのですが、理由は3つの中からだと選びやすい、という理由がまず一つ。
もう一つは最安の商品だと品質的にもうちょっと良いものがいいかな、と思うのですが、一番高い商品だと、そこまでの品質はいらないかな、と一番上と下を除外する心理が働くようなのです。
これは行動経済学でも実証されていて「極端の回避性」というそうです。

「サンふじ」というりんご専門のりんご園さんの事例です。
こちらは元々、りんごのグレードが2種類だけだったのです。

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サンふじ(特秀)5キロ:3,400円
サンふじ(秀) 5キロ:2,700円
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この2プライスのときは安い「秀」の方が売れてしまい、「特秀」が後から売れていく、という動きだったそうです。
ところがそこに「プレミアム」というグレードをプラスさせました。

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サンふじ(プレミアム)5キロ:4,500円
サンふじ(特秀)   5キロ:3,400円
サンふじ(秀)    5キロ:2,700円
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松竹梅価格設定に変更したわけです。しかも最上位は「プレミアム」設定にしました。すると、なんとプレミアムから速攻完売してしまったのです。
そして次に売れたのが「特秀」でした。ここはプレミアムを追加したことで「特秀」が真ん中のプライスになったので「極端の回避性」が発動したのだと思います。
プレミアムは収穫したサンふじの中でも特別な上位数%の品質のりんごを選りすぐったものだそうです。
プレミアムというネーミングと希少性の訴求により、りんご園さんの場合はプレミアム商品から完売するという結果になりました。
「プレミアム」というネーミングによって、「とにかく当園のサンふじの一番美味しいところを堪能するにはプレミアム一択ですよ!」という暗黙のアピールが奏功したのだと思います。これも選びやすくするネーミングだと思います。


著者

水上 浩一 (Mizukami Hirokazu)

ランチェスター戦略を軸にしたウェブ活用・地域活性化コンサルタント。
「水上 浩一EC実践会 for FutureShop2」講師
株式会社ドリームエナジーコンサルティング代表取締役
8月5日 東京生まれ、神奈川鎌倉育ち。
●EC実践会参加1年間で売上純増2億1000万円(梱包資材)
・県産生鮮品月商1億円超、生花生産直売月商4800万円、
・オープン80日で月商1100万円(ファッション)
・月商200万円→6ヶ月間で月商1450万円等(地域土産)等

ランチェスター戦略の効果的なウェブマーケティング活用を中心とした勉強組織
「水上 浩一EC実践会 for FutureShop2」を全国で展開中。
2017年3月現在17地域、受講者数は2400名を超える。
講演・セミナー回数は年間240回以上、通算2000回超。
ジャンルを問わず短期間で劇的なネットショップの売上アップ実績多数。
大手上場企業から生産者直売店舗等地域活性化までコンサルティング成果事例多数。

http://www.ecjissenkai.com/