【第8回】商品の良さを語れないお店に未来はない

酒匂 雄二

第7回はデイリー1位にして頂き、ありがとうございました。回を増すごとにコラムについてお声がけ頂くことが本当に増えてきました。

タキシード、燕尾服、モーニングコート、フォーマルスーツ・・・

メイドインオオサカの紳士礼服を製造販売するフォーマル専門店ノービアノービオ。1952年に礼服の生地問屋として創業、今は製造から小売(ネットと実店舗)まで手がける、いわゆるSPA企業ですが、小さな小さな町工場です。

バブル最盛期、従業員230人 年商65億円、紳士礼服メーカーとして業界2位。バブル崩壊後、従業員20人、負債45億円、在庫は倉庫に14億円分。


年商65億から負債45億円、約100億円のジェットコースターを下りきった頃、服の「フの字」も知らない素人だった僕は楽天市場店のスタッフとして、この会社にやってきました。

順調に伸びていた頃、相次ぐ大手の参入で再び窮地に。首の皮一枚すらちぎれそうなとき、次々と訪れた出会いと気付きと・・・たくさんの先達に出会い、学び、SNSを使ってV字回復。

SNSは次々にピンチをチャンスに変えてくれました。

子供の頃から大好きだった僕の「ヒーロー」に自社のタキシードを着てもらえ、「僕より僕のことを知ってる日本一のファン」と抱きしめてもらえた・・・。

SNSをやってたら、売上が伸びて子供の頃から大好きだった方に約30年越しで対面が実現、これまでの想いを伝えることができ、夢がかなった瞬間。

スタッフ数人の小さなECサイトのごくごく平凡な僕に起こったウソみたいなお話。

これから記させて頂くことは特筆すべき秀でたスキルなど何もない普通の僕がやってきた、「今日から誰にでもできるお話」です。

このお話を通じ、皆さんのお店のコンバージョン率+0.1%~に少しでもお役に立つことができればと、経験した全てをお伝えしていきたいと思います。

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https://ecnomikata.com/column/20041/

大阪地震で被害に遭われた皆様へ、心からお見舞い申し上げます

大阪地震で被害に遭われた皆様へ、心からお見舞い申し上げます6月18日大阪北部を震源とする地震では、当社の大阪梅田のお店も大きな被害を受けました。

本来、6月18日に更新予定の8回目でしたが、18日7:58大阪北部を震源とする最大震度6弱の地震により更新が遅れました。震源地に近い大阪北部の僕の自宅は食器が飛び出して割れるなど、部屋に荷物が散乱しました。

大阪梅田にある当社の直営店ノービアノービオでも、ディスプレイのマネキンが倒壊、照明や試着室、商品棚も破損するなどし、営業を断念しました。

多くのスタッフが出勤できず、僕も午後になって自転車で出勤することが出来ました。普段、使わない道を行くことで、混雑すると移動もままならない場所や道があることを認識することができました。

改めて地震の多い日本に住む者として防災にも意識を向けねばと思わされました。被害に遭われた方には心からお見舞いを申し上げます。

「安い」を連呼する「モノ売り」は終わった

「安い」を連呼する「モノ売り」は終わった旅先でのおみやげ探した楽しいもの。しかし、それを一変する体験がありました。

私事ですが2018年度より鳥取県商工会連合会登録専門家になりまして、毎月のように鳥取県に伺い、ECサイトのお手伝いや企業のSNS導入・活用支援を行っております。

県下の商工会加入企業さん事業者さんは、僕を呼んで頂くことができますので、鳥取県でEC、SNS、サイト運営でお困りの方、もしくはお友達でそういった方がいらっしゃれば、ぜひ、僕にお声がけください!

それでは8回目もどうぞよろしくお願い申し上げます。

登録専門家としての活動で、鳥取に行ったときのお話です。

僕は地元の方のご厚意で、鳥取はわい(羽合)温泉のホテルに泊めて頂きました。全国でも珍しい湖上に露天風呂がある有名ホテルでは、ロビーで催される朝市が有名だというので、早起きをして見に行きました。

そこには、日本海の海の幸、山陰の山の幸が並び、二十世紀梨やスイカの予約など、見ているだけでワクワクするものでした。

僕が宿泊した日、関西やアジア圏からのツアー客も多数宿泊しており、外部から売りに来ている朝市の方の気合の入り方も並々ならぬものでした。

宿の手配や地元企業との取り組みをアテンドして下さった地元はわいご出身の方と朝市に並ぶ品を眺めていたら、朝市のおじさんが声をかけてきました。

「安いよ!こんなに安いのはない!港の水産センターは高い!地元のみんなも高すぎるって言ってるからね。値段の付け方がおかしいんだよ」と、語気を強めて言ってくるのです。

しばし、おじさんの話に耳を傾けていても、「売り手側から」の「売る」行為に終始するんですね。何分か話していても、安いと高いしかいわない。

売り手のおじさんは、僕たちをツアー客だとハナから決めつけて、安さで売りにかかってきているのです。一緒にいた方は生まれも育ちも超地元の方、僕は僕で山陰に親類もあり、鳥取も毎月のように来ているので、魚の相場も、美味しいことだって知っているわけです。

ですが、僕が関西弁を話すことからもツアー客と決めつけて、値段の差だけで「買わせよう」としてくるんです。お客の気持ちが不在の売り売りですね。

少し離れて2人で話しました。「地元の人間が聞いても辟易する。安いしか言ってないでしょ?自分たちの魚がどんなものか語れないんですよ」と。

その方曰く「これが地方の課題である」と。

商品が悪いものと思っているわけではなく、品質には自信がある。けれど、それが普通になり過ぎていて語ろうとしない。そもそもツアーで訪れた人は、遠くに出かけて来ているわけですから、そこでしか手に入らない稀少で良いものなら値段は二の次で手にするはずなんですよね。

一番多く並んでいた魚の干物でいうと、干物の干し方のこだわりや方法、食べ方の提案、合うお酒、漁場の様子、採れた港の雰囲気、そういうものが本来は「買う!」を作り出すのに、まるでそれがない。

商品力はあるんだから、その特長をしっかり語ればいい。これはECサイトでも同じですよね。

お客さんの買いたいを作り出してこそ、売れた!になると思います。もう、モノ売りは壊滅し、コト売りすら通り過ぎ、今はストーリー売り、そんな気がします。

ですので、カテゴリページ、商品ページを含むコンテンツが益々重要になってくることは間違いないと思います。

売る≠売れる≠買って頂く

売る≠売れる≠買って頂く弊社のfacebookページのギャラリーのモデルさんはお客さんです。商いは飽きないをつくる。ベタですがとても大事なことだと考えています。

僕は個人的には「売る」という言葉が好きではありません。商品力や届け方で「売れる」になるんですが、最終形は、やはりお客さんの「買って頂く」が存在してこそだと思います。

ですが、結構ECサイトの方でも「売れた、売れた」とおっしゃるのを耳にします。

だから、その場でしか、結果でしか語れないという状況なのではないかなと思うことがあります。

すごいベタな言い方をしますが

【商いは、飽きない】なんですよね。

「売れた」の対極に「買った」がある。そのお客さんの「また買いたい」を創り出す「飽きない」を創出するのが商いだと思います。

当店ではこのコトが売上に直結します。消耗品、生活必需品、リピーター商材のように顧客×リピート回数のような売上はありません。

毎月毎月、売上のメドがないゼロから始まります。冠婚葬祭というニッチな目的商材ですから、LTVが大変低い商材です。

冠婚葬祭の参列に迫られ、ご来店・ご購入。使用頻度も定期的にあるものではありませんから、使い減りによる買い替えも期待できません。礼服を複数お持ちの方はそういらっしゃらないはずです。普通ではリピーターになりづらい商材なのですね。

そんな礼服専門店でも、リピーター率はECサイトで7~8%、実店舗で12~13%。皆さんのお店からすると、低いと思われるかもしれませんが、冠婚葬祭商材では健闘している方ではないかと思います。

ネット上の口コミでは

「2年ぶりの来店なのにこだわり覚えてくれていた」
「ここ意外には考えられない」

そんな書き込みを頂いています。特に実店舗では多くのお客さんとスタッフはfacebookでお友達にならせて頂いていて、チェックイン、タグ付けなどで交流をはかり、お客さんの友達の友達へ・・・とその輪はじんわりと広がっています。

ECサイトであれば、再訪者率の高い・多いトップページの鮮度が大事ですよね。何度アクセスしてもトップバナーが同じ、もう初夏なのに、お知らせに「年末年始の営業について」が残っている。こんなお店では売り場に鮮度を作ることができるとは思えないですよね。

ECサイトでは最初の画面で「あ、変わってる」をこまめに出すことは大事ですよね。ECサイトでない企業サイトでも、春夏秋冬ぐらいでは一見してわかる違いを出す方がいいと想います。検索エンジンのクローラーに対しての働きかけにもなりますしね。

視点を変えれば季節商材も賞味期限が伸びる

視点を変えれば季節商材も賞味期限が伸びる

楽天市場に出店されているセレクトショップさんの事例です。

売上が数年横ばいになっていた2013年の夏、ご相談を頂きました。本格的な秋冬商戦が始まる直前になんとか対策をしておきたいというものでした。

まずは開店時のまま手付かずになっている店舗トップを刷新。前章の鮮度を出すことに注力しました。

続いて、過去の売上データから、季節ごとで販売の異なる商品、販売数の多い商品、数はそこそこでも手堅く売上をつくっている高単価商材など、いくつかの条件で商品を整理しました。

アパレルセレクトショップさんですから最初のヤマはクリスマス。最初からそこに照準を合わせて、初月の7月から前年を超える売上となり、4ヶ月目の11月はクリスマス需要を見事に取り込むことができ、売上は昨対で約180%となりました。

この間、モールの広告は一切使っていません。ご一緒させて頂いた10ヶ月間で、売上は前年の160%となりました。

お店の売上が軌道に乗り2014年の4月一旦お手伝いを終えましたが、2015年の年始、再びご相談を頂きます。

2013年の売上に基づき、2014年の秋冬品の仕入れを行ったそうなのですが、コートなどの重衣料の在庫の持ち越しが相当数になってしまうということでした。

コート類は2月に入ると極端に売上が下がってしまいます。このままではまた半年以上在庫を持ち越してしまいます。ギリギリのタイミングでしたが、なんとかならないかというご相談でした。

値引き、ポイント増しは最終手段。まずは商品の掘り下げから始めました。商品ページに記述できていない「特長」「強み」がまだあるんじゃないかと考え、オーナーさんに商品について聞き取りを行いました。

特に在庫過多が顕著だった上図のナイロン素材のビジネスコートについてお聞きした所、商品ページで全く触れていない強みが見つかったのです。

このコート、インナーにベストが付いていて暖かいのですが、そのインナーベストが取り外し可能で、外せば軽く着ることができるのが1つ。そして、もう1つは撥水加工が施されているので少々の雨では染み込んだりしないというものでした。

この特長が商品ページで訴求できていないので、そのことをページに書くことにしました。

■インナーベストは脱着可能なので、春先でもスプリングコートとして軽快に着て頂くことができます。

■撥水加工が施されており、多少の雨でも染み込みません。3月や4月の長雨、菜種梅雨の季節の突然の雨にもオススメです。晴雨兼用のコートとしてもお使い頂けます。

これらの文言を商品ページに追記し、メルマガでも訴求したところ、値引きをせずに、4月までにほとんどの在庫にオーダーを頂くことができました。

空白期間が1年ほどありましたが、2013年から2016年までの3年で客単価は190%、売上は250%に成長しました。特に客単価については、これまで乱発していた不要な値引きを止めたことがほとんどの要因です。

先述のように商品のもつ底力をしっかりとページやメルマガでお客さんに伝え、その価値がある価格であることをご理解頂いたことが実を結んだと思っています。

この事例は、冒頭の山陰の朝市と大変似ていて、販売側が商品に対する視点を変えたり、深く考察してみたり、想いを詰め込むだけで売上が変わるというものですね。

中小企業やECサイトが安売りの継続をしていては自社の体力を削ることになりますから、安い安いでモノを売るのではなく、しっかり商品に対する気持ちと、その商品を手にするであろうお客さんをしっかり思い描くことがまず先決ですね。


第8回も最後までお読み頂き、ありがとうございました。
ぜひぜひ今回のご感想・温かいお言葉をよろしくお願いします。
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以前、ECのミカタさんでもコラムを連載していた「ゲキハナ」の古屋さんとYouTubeチャンネルも開始しました。ECサイト運営者のヒントになるトークライブを中心にお届けしておりますので、是非チャンネル登録お願いします。
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次回のお話では更にSNSを活用し、ECサイトの売上に活用した事例などをご紹介する予定です。
次回もよろしくお願いします。

【第9回】半年でCVR6%超え 開店直後のECサイトでやったこと
https://ecnomikata.com/column/19401/


著者

酒匂 雄二 (Yuji Sakoh)

1977年大阪生まれ。
ネット通販会社、ゲーム会社を経て、2005年紳士礼服SPAの株式会社NFLに入社し、
タキシード・燕尾服などフォーマル専門店ノービアノービオの楽天市場店を担当。
現在はBtoB、実店舗・ECサイトを統括。

自社ECサイトは2017年、イーコマース事業協会(EBS)主催の
第9回全国ネットショップグランプリで準グランプリを受賞。

利益が残らない薄利多売・広告依存から脱却するためSNSを活用、
広告費をゼロにしながら売上を飛躍的に改善。

自社の成功事例を共有するべく異業種交流会「まちカレッジ」運営の傍ら、
中小企業やECサイトの支援、セミナー講演も多数。

大阪地域密着型クラウドファンディング「FAAVO大阪」も運営、
企業や団体の資金調達支援も行う。

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