【第2回】データマーケティングに取り組む際のデータ蓄積法

稲益 仁

国内におけるEC経由での物流総額は年々凄まじいスピードで上昇し続けています。
競争が激化していくマーケットにおいて、今後を勝ち抜いていくためにはEC事業会社それぞれが持つデータを活用したマーケティングがこれからは必要です。

本連載を通じて、最先端のデータマーケティングについて語ります。

【第1回】いまデータマーケティングをやるべきたった1つの理由(https://goo.gl/JuV52K

データをどうやってためるべきか?

 データマーケティングを実践していくためには、データを使えるような状態にして蓄積していく必要があるが、取り組むにあたって重要なのは、データを活用して何を実現していくのかをまず始めに決めることだ。

1.データを活用して何を実現するのかを決定する

 前回のコラムでも紹介した通り、既知の顧客に対するマーケティングなのか、未知の顧客に対するマーケティングなのかによって、溜めるべきデータは大きく異なってくる。

 例えば既知の顧客であれば、「メールアドレス」「顧客属性」「購買履歴」「顧客IDと連結したcookieデータ」。
未知の顧客であれば、「cookieデータと連結したログデータ」といった具合だ。

 このように溜めるべきデータが異なるため、まず、何を目的に実施するのかを決定する必要がある。

2.どのようにしてデータを溜めるかを決める

 実現したいことを決定し溜めるべきデータが明確になったら、どのようにして溜めるか?(=どのツールで溜めるか?)ということを決定していく。このプロセスで重要なのが、データを活用して配信していくチャネルを選定ポイントとすることだ。

 データを活用できるチャネルは下記のように様々。
 ・Eメール
 ・DMやアウトバウンドなどのリアルコミュニケーション
 ・サイト上のコミュニケーション(CRO)*Conversion Rate Optimaization
 ・LINE、Facebook、TwitterなどのSNS
 ・Yahoo! JAPAN ,GoogleといったSEMメディア

 配信チャネルの他にも、配信するシナリオの数や配信頻度など実際のオペレーションにも留意して選定する必要がある。単純にメールマーケティングを行うにしても、購買日を起点に自動的に配信したいのであればステップメール機能は必須になるし、顧客育成プログラムを組むのであれば、マーケティングオートメーション機能を持つツールが必要となる。


 具体的に例を挙げると、
 ①お試し商品を購入した顧客に本商品をお勧めするメールを配信
 ②本商品を購入してくれた顧客にはクロスセルを狙うメールを配信
 ③本商品を購入しない顧客に対してはクーポンを付けたメールを配信

 こういったシナリオでメールを実施していく際、顧客の購買履歴に基づいたセグメントが必要となってくる。これを人力でオペレーションする際、かなりの工数が必要となるため、単純なステップメール機能を備えたメール配信ツールではなく、予め決定したセグメント条件とシナリオに従って自動的に配信してくれるマーケティングオートメーションを選定したほうがよい。

 マーケティングオートメーションにも様々な種類があり、分析に特化し配信チャネルはメールが主流のものや、成功(する確率の高い)シナリオが予め設定されているもの、各種チャネルで配信できるようAPIを公開し連携が容易なツール、海外製のものだとFacebookにオーディエンスデータ(メールアドレス)を連携し行動や趣味趣向が似たユーザーへと拡張配信ができるもの(ツール内から配信設定までが可能)まで存在している。

 実現したいことを挙げればきりはないが、「実際にやれること」とは大きなギャップがあることも多いため、〝身の丈に合った〟ツールを選定することがやはり一番重要だ。(実際に私自身も使いきれないケースに遭遇する機会も多い)

3.未知の顧客に対するデータマーケティング

 未知の顧客=アドレスや個人情報、購買履歴がない顧客に対するデータマーケティングを行う際には、主に「cookieデータ」を活用することになる為、ツール選定ポイントが変わってくる。

 未知の顧客に対するマーケティングとは、主にリターゲティング広告の細分化を指す。
ほとんどの企業のリターゲティング広告は、主に訪問した経路とリーセンシー(離脱してからの日数)、階層(サイトのどこまで進んだか?)の3軸で細分化されて運用されている。Cookieデータを活用するとより細分化したリターゲティング広告の運用が可能となる。

 例を挙げてみると
 A.YouTubeの動画広告(認知系の)に接触してサイトへ流入し、キャンペーンページを見て離脱
 B.同様にYouTubeから流入してキャンペーンページから商品詳細ページを見て、商品に疑問が湧いてFAQや商品レビューのページを見て回ったが、離脱

 AとBの未知の顧客ではエンゲージメントが異なるが、先述した通常のリマーケティング広告では未知の顧客の回遊データは使わずに配信することが多い。本来であれば入札する単価は、よりBを強めてかつ次に誘導すべきページを分けてリターゲティングしていくことが必要だ。

 こういった配信を実現していくためには、ログデータとcookieデータの紐付けをおこないそのデータ分析しセグメンテーションしていけるツールを選定していく必要がある。実現できるツールとして代表的なものはGoogleが提供するGoogle Analytics premiumやAdobe社のAdobe Analyticsがあるが、配信可能なメディアに対しても留意して選定しなければならない。(Yahoo! JAPANにも配信できるか?ソーシャルに対応しているか?など)

あとがき

今回のコラムでは、実際にデータマーケティングをはじめるにあたって、気を付けなければならないポイントをまとめてみましたが、スペースと締め切りの関係で(笑)書ききれないこともあるため、ご質問や意見がある方はぜひ個別にご連絡いただければと思います。

次回以降は、実際にサイバーエージェントで取り組んだデータマーケティングのフレームとその効果事例について紹介していきます。


著者

稲益 仁 (Jin Inamasu)

1981年福岡県生まれ。広告代理店でのグラフィックデザイン・編集デザイン経験し、2006年にサイバーエージェントへ入社。福岡支社に配属して以来、一貫して“単品リピート通販”クライアントを担当。2014年4月にダイレクトマーケティング局を立ち上げ、全国各地の単品リピート通販企業をスタッフとして支援。事業計画の策定から、販促企画・クリエイティブ、CRM企画まで多岐にわたり、デジタルマーケティング業務全般に従事。そして2015年6月に顧客のLTV最大化をミッションとした専門組織「eCRMソリューション局」を設立し局長に就任。顧客の購買データを活用した全く新しいCRMソリューションを国内に浸透させるべく、日々全国を飛び回る毎日を送っている。社内表彰ではベストプレイヤー、MVP、ベストマネジャー等多数受賞の実績がある。