楽天EXPO潜入!②河野氏が語る楽天市場の「戦略」

利根川 舞

 7月20日に楽天株式会社(以下「楽天」)が開催した楽天EXPO 2016内で、三木谷氏の講演後、上級執行役員 河野 奈保氏によって戦略共有会が行われた。

 20周年を目前にした楽天。2016年の上期は「クオリティ」というキーワードをもとにした戦略を進めてきたが、下期では持続的な成長に向けた3つのキーワードをもとにしたサービスを提供していくという。

<持続的な成長に向けた3つのキーワード>

・Personalization(パーソナライゼーション)
 コンテンツに合わせたUI/UXの提供
・注力施策の進捗と新しい取り組み
・Quality(クオリティ)

4月発表「ジャンル強化戦略」の現状

 今年の1月に発表されたジャンル強化戦略が発表され、組織体系が変更されたが、次の4つのジャンルに対する専門的なサポートを通じてユーザービリティの向上を図っていくという。

ファッションジャンル
 掲載画像数を9枚から20枚にアップすることで平均転換率が60%アップ。また、ユーザーからの要望に合ったファッション限定のサマーセールを開催したり、インフルエンサーを活用した施策により、楽天市場外からの流入を見込んでいる。

ホームジャンル
 また、ホームジャンルにおいてもインテリアの写真を共有できる「RoomCllip」や「iemo」などの外部メディアとの連携を通じて、楽天市場とはまた異なるユーザー層を狙う。

フードジャンル
 フードジャンルにおいては楽天市場ブランドの強化に努めていく。現在も行なわれている専門家による認定プログラムをスイーツ以外にも拡大。また、店舗間同士のコラボ商品なども積極的に行っていくという。

 また、AI(人口知能)の活用も語られた。ワインに特化したアプリでラベルを画像認証して情報を読み取り、そこから目的のワインを探すことができるものだ。

リテールジャンル
 リテールジャンルでは、周辺付帯サービスを充実させていくという。楽天市場で注文した商品をリアル店舗で受け取れるようにすることで、お店で受け取ることのできる安心感を与える。そして、リアル店舗において関連商品のついで買いにより客単価のアップを見込む。

 他にもジャンルページを刷新し、ユーザーが過去に買ったブランドをもとにオススメの商品を表示することで転換率をアップしていくという。

注力施策の進捗と新しい取り組み

 現在注力している施策として、インフルエンサーと店舗とのコラボレーション商品やキュレーションメディア「ROOM」の活用、SPU(スーパーポイントアッププログラム)などの進捗が語られた。

 現在、モバイルからの利用が日に日に増えており、現在既に6割がモバイルからの流入だ。河野氏は「皆さんのお店のトップページを思い浮かべてください。今、PCのページを思い浮かべましたか?楽天市場のユーザーさんは7割近くがモバイルからアクセスしています。その状況をもう一度考えてください。」とモバイルの重要性を強調した。

 今後の新たな取り組みとしては、今年楽天にグループ入りしたハングリード社の商品一括登録のサービス、「アイテムロボット」を秋から無料で提供するという。現在楽天市場の商品一括登録サービスを利用している店舗であれば無料で、なおかつCSVの知識も不要で利用できる。楽天市場の店舗だけでなく、自社の店舗や他社のモールに対しても一元管理が可能だ。「アイテムロボット」では商品名や商品画像を予約することが可能で、深夜や休業日であっても更新することができるため、EC事業者の負担も軽減される。

 新しい取り組みの中でも大きなトピックとして語られたのは広告の効果開示についてだ。これまで出店店舗から要望の多いものであったが、今回、買い物カゴへの到着率と投入率、デバイス間の転換率などが開示され、ユーザーの行動を様々な要素で検証することが可能になる。より細かなデータを見ることができるため、ターゲティングした広告を強化することが可能だ。

楽天市場の追い求める「Quality」とは

 新春カンファレンスでは今年力を入れたいものが「Quality」、そしてその「Quality」にはユーザーの声である「VOC(ボイスオブカスタマー)」と出店店舗の声「VOM(ボイスオブマーチャント)」の2つがあるということが語られていたが、実際上半期で注力されていたのは「VOC」であった。そのため、下期では「VOM」に注力していくことが語られた。

 出店店舗が今注目していることといえば、9月からスタートする「違反点数制度」であろう。この「違反点数制度」の一方で、違反をすることのない優良店舗に対しては「品質向上制度」を進めていくという。

 具体的には優良店舗にはサーチ結果の表示順位をランクアップしたり、ユーザーに優良店舗であることが伝わるようにアイコンをつけるなど、店舗の努力がユーザーに伝わり、売上アップにつながるような施策を行っていく。

 また、ポートシステムを導入し、開発要望の見える化を進め、機能の開発に反映していく予定であるという。窓口を作ることにより、コミュニケーションをしながら出店店舗の声にも耳を傾けていく。

 そして、「Rカルテ」を一新する予定であることも発表。「楽天市場側からクオリティを上げてくださいという話があっても、高品質なものというのがわかりにくい。」という声が多数寄せられていたそうだ。一新することで、次のアクションに何をすれば良いのか、戦略を練っていく上での指針として「Rカルテ」を活用できるようにしていく。

 これまで語られたように、楽天市場ならではのモノは継続していくとし、それが出店店舗と二人三脚で歩むことであり、そして、クオリティを向上していくための楽天市場の文化である河野氏は語る。

 また、7月にカンパニー制を導入した経緯についても語られた。「ここにいる皆様には直接関係はないかと思いますが、何故カンパニー制にしたかというと、皆様の声を聞いた際にスピーディーに経営判断を行い、出店店舗様に貢献していきたい。」と。そして、「これからも皆様とクオリティ向上、そして革新的なプレイをしていきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。」と戦略共有会は締めくくられた。

 出店店舗向けの戦略共有会ということで、細かな部分についてまでも語られており、楽天市場の”今”、そして”これから”が語られた会であった。そして、出店しているモールの戦略を学び、自店舗の戦略にどう組み込んでいくのかを考えるために重要な機会であるに違いない。今回語られたことがどのように実行されていくのか、注目である。


記者プロフィール

利根川 舞

メディア編集部
ロックを聴きつつ平安時代に思いを馳せる文学人間。タイムマシンができたら平安時代に行きたいです。
ライブハウスやフェス会場に出没しては、笑って、泣いて、叫ぶ姿が目撃されている。ACIDMANや10-FEET、ROTTENGRAFFTYが大好き。

サービスやその場の雰囲気がイメージしやすくなるような記事を書いていきたいと思います。

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