新しい世界を創り出す「VR」が注目される理由

ECのミカタ編集部

 近頃、耳にすることが多くなった「VR」。VRとは、実際に存在しない空間を創り出すことである。黒いゴーグルのようなものを覗くと、見たことがないような新しい世界が広がる。

 このVRが「流行してきている」ということで、国際ファッションセンター株式会社が「VRが拓く未来」というセミナーを開催した。講師は、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン合同会社 伊藤周氏と、株式会社プロノハーツ 藤森匡康氏だ。司会は、サヴァリ株式会社 福田泰志氏が担当した。

 今回は、セミナーの内容を踏まえながら、ECとVRの関係について考えていきたい。

VRの本当の意味「人間の五感に訴える」

 よく「VR」とは、“仮想現実”と捉えられることが多いが、それは間違いである。伊藤氏は「VRとは、実質的な現実であり、人間の五感に訴え、あかたも現実世界のようなことを実現する技術である。」と話す。さらに、ヘッドマウントディスプレイでもなく、プロジェクションマッピングなのだ。

 安価なVRデバイスが出てきており、圧倒的な体験ができるようになったことからVRは盛り上がっているが、機器の価格が高いことや性能が足りていない、ソフト開発が難しいなどの問題がある。それを解決すべく、「Oculus Rift DK1」が登場した。比較的に安価で体験が飛躍的にアップし、ソフトも誰でも使えるようになったが、価格問題が続いたり、配達問題があったりと問題は山積みであった。その中でも「メガネが入らない」ということが大きな問題であった。その後、開発されたのが「PlayStationVR」である。一般向けVR機器として最右翼とし、ハンドデバイスでも販売が開始された。何より、メガネが入ることもあり、注目を集めた。

 このVRは、以前までゲームの世界で活躍していたが、「今後は非ゲームで活躍する。」と伊藤氏は予測する。実例としては、建築会社がプレゼンする際に仕様したり、交通安全の危険予測シミュレーターとして利用したりと幅を広げている。

 最後に、伊藤氏は「VRの次はARが来る!」と語る。ARとは“拡張現実”であり、VRがCG映像の全てならば、ARは透過スクリーンにCGを重ねることだ。例は、最近流行り出した「ポケモンGO!」である。ARを利用して、ポケモンが街に存在しているように見せることができる。また、メガネ型ARゴーグルとなり、いつでも付けることができ、他人からも違和感が無い。さらに、VRとARが兼用することができるところも魅力的だ。

VRと共に日本の文化をフランスへ

 藤森氏がVRに出会ったのは2012年であり、「製造業+ゲーム業界=楽しい製造業」を目指す。その時に、「MikuMiku握手 ニコニコ動画」というイベントに参加し、初音ミクと握手をすることができるVRを作った。この時にこだわったことは、手の温かさだ。人間の手は温かいため、まるで本物と握手をしている感覚になってもらえるようにこだわった。

 2014年になると、藤森氏の「フランスに日本の文化を持っていきたい」という思いから、日本で大人気のドラえもんと共にフランスに行った。しかし、フランスではドラえもんは放送されていなく、ほとんどが知らなかった。それでもドラえもんは人気を呼び、多くの人がVRを楽しんだ。この際のVRは、例えばドラえもんの「どこでもドア」で“鎌倉に行きたい”と言ったら、まるで鎌倉に来たかのような世界観をVRで体験してもらうというものだ。

 そして、2015年に製造業向けDRシステム「pronoDR」の販売が開始した。「pronoDR」の特徴は、CADデータをダイレクト変換ができることだ。この他にも、高速性や低価格といった特徴が多い。この販売イベントには、700名程の人が参加したそうだ。このように多くの人がVRに注目していることが分かる。

 やはり、この「pronoDR」は建築関係で活用されるそうだ。例えば、建物を建てる際にケーブル等の配線を決めることがある。この配線の位置が、生活をする上で最も大切なことだ。しかし、身長の差で目線の位置が異なるため、混乱を招き、時間がかかる。しかし、「pronoDR」を利用すると、誰もが同じ目線で見えるため、混乱を防ぎ、正確に配置を決めることができる。このように、物の配置を正確に決める時にでもVRは役に立ちそうだ。

VRはECでも活躍の場を広げている

 ECでもVRを活用し、ユーザーを喜ばせている事例を2つ紹介する。まず、1つ目は、プレミアム・タイムセールサイト「LUXA」を運営する株式会社ルクサ(以下、ルクサ)だ。ルクサは、「Eat」と「Enterteinment」を掛け合わせた「Eatertaiment」を戦略とし、VRを活用した「ルクサTaste in visual Dinner~ちょっと不思議な体験レストラン~」を提供した。

 これは、食事が運ばれてくる待ち時間を素敵なエンターテイメントを本日のディナーの一つとして、わくわくする体験をしてもらうものだ。実際には、赤外線センサーと搭載することで、指定された箇所の映像に手をかざすことで変化が起きるインタラクティブな仕掛けとなっている。ECを飛び出して、ユーザーに不思議で楽しい体験を提供することで注目されている。

この他の喜ばせる工夫はこちらへ

 もう一つは、世界最大規模のオンライン・マーケットプレイスで「eBay」を運営するイーベイ・ジャパン株式会社(以下、ebay)だ。Ebayは、オーストラリア大手小売業者のマイヤー社と提携し、世界初のVR百貨店を立ち上げた。このVR百貨店は、リアル店舗の優れている点とEC店舗の便利さをユーザーに提供する。

 ユーザーは、VRヘッドセット「ショップティカル」を通して、マイヤー社ストア内で12,500点以上にも及ぶ商品を3Dで閲覧することができるため、デザインや質感など商品を理解しやすくなる。VR百貨店でのショッピングはとても簡単で、視線を送ることによりVR内を移動し、ユーザーが気になる商品の「情報」アイコンに視線を固定することで、商品の仕様、価格、在庫、配送等の詳細情報を見ることができる。実際に質感等を理解することができることがユーザーに喜ばれる。

 この2つの事例のように、VRはECでも活用することができるようだ。セミナーの講師である伊藤氏と藤森氏も語っていたが、VRは今後間違えなく流行することだろう。いつしか、VRを活用することが日常化され、今以上に生活が楽しくなる。不思議な世界観、楽しい世界観を提供してくれ、どこかワクワクするような気持ちにさせてくれるVRに今後も期待したい。

VR百貨店のさらなる魅力とは


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