テクノロジーに支配されるか支配するか 今後3年で世界に影響をおよぼすテクノロジートレンドに関する最新調査レポート『Accenture Technology Vision 2020』が公表される

ECのミカタ編集部

アクセンチュア株式会社は、今後3年間でビジネスに大きな影響をもたらす重要なテクノロジーのトレンドを予測した年次調査レポート「テクノロジービジョン2020」を公表した。ここではその概要についてポイントを絞って見て行く。

調査概要

同社によれば今回の調査では、公的機関や民間企業、研究機関、ベンチャーキャピタル、ベンチャー企業に在籍する25名以上の有識者で構成される「テクノロジービジョン外部諮問委員会」から収集された知見を参考にしているという。

またテクノロジービジョンの編纂チームは、テクノロジー分野の有識者や業界の専門家、アクセンチュアの経営幹部約100人に対するインタビューも実施された。同時に、新しいテクノロジーの導入に関する実態を調査するために、アクセンチュア・リサーチが25カ国、21の業界にわたる6,074人の企業経営層およびIT担当幹部を対象に、主要な課題と優先的に導入、投資すべきテクノロジーについてオンライン調査を行ったそうだ。

回答者は年商50億ドル以上の企業に所属している上級役職者および部門・部署の責任者が大多数を占めている。今年は、中国、インド、英国、米国の消費者2,000人を対象にした調査の内容も含まれている。

テクノロジーと人の調和とは?

アクセンチュア(NYSE: ACN)は、世界のテクノロジートレンドに関する最新の調査レポート「Accenture Technology Vision 2020(以下、テクノロジービジョン2020)」で、社会の至る所にデジタルテクノロジーが遍在する世の中において、企業が提供する価値と、顧客や従業員を含めた“ひと”が持つ価値観に対し、従来とは異なる調和を図ることが成功のカギになると予測している。

「テクノロジービジョン2020」は、今後3年間でビジネスに大きな影響をもたらす重要なテクノロジーのトレンドを予測した年次調査レポートで、今回で20回目となる。今回のレポートでは「ポスト・デジタル時代を生きる – 企業が『テック・クラッシュ』を乗り切るには」と題し、“ひと”がかつてないほど多くのテクノロジーを自らの働き方や暮らしに組み込んでいる一方で、企業や組織が必ずしもそのニーズや期待に対応しきれていないことを明らかにしている。デジタルテクノロジーが偏在する時代において、企業や組織がそれらを活用してより良い世の中を構築するためには、新たな考え方やアプローチが不可欠なのかもしれない。

今日のビジネス環境が「テクノロジーに対する反発(テック・ラッシュ)」と表現されることがあるが、この表現には、社会がテクノロジーの恩恵を受けているという事実が反映されていないようだ。むしろ「“ひと”のニーズや期待と、それらにそぐわないビジネスモデルやテクノロジー活用方法の不一致(テック・クラッシュ)」と表現するほうが適切と言えよう。

アクセンチュアでは、「テクノロジービジョン2020」の作成にあたり、日本を含む全世界6,000人以上の企業や組織の上級役職者およびIT担当役員を対象に調査を実施したところ、83%が「テクノロジーは、“ひと”の体験を形作る上で欠かせないものになった」と回答。また、今年は2,000人の消費者にも調査を行い、その70%が「今後3年間でテクノロジーと自分の関係が深まる、もしくは大幅に深まる」と回答したそうだ。

テクノロジーとの不調和をどう乗り越える?

「テクノロジービジョン2020」では、企業が既存のモデルを踏襲し続けることは、顧客に不満を与え、従業員の心を遠ざけるばかりでなく、永続的にイノベーションや成長の可能性を制限してしまうリスクもはらんでいると警告している。一方で「テック・クラッシュ」は解決できる課題でもある。「テクノロジービジョン2020」では、企業が「テック・クラッシュ」を取り除き、“ひと”とのより強い信頼関係によって成り立つ新たなビジネス価値を提供するために、今後3年間で押さえるべき5つのテクノロジートレンドを定義した。

◆体験の中の「私」(The I in Experience)

企業は、個人の選択肢の幅が広がるように、一人ひとりに合わせた体験を設計することが必要になる。「自分でコントロールできず、蚊帳の外に置かれている」といった感覚を与えてしまう一方通行の体験を、双方向性を持った体験に変えることで、“ひと”に積極性をもたらすことが可能になる。今回の調査では、企業経営層やIT担当幹部の85%が「次の10年間を乗り切っていくためには、顧客との関係をパートナー関係に昇華させる必要がある」と答えた。

◆AIと私(AI and Me)

企業は、人工知能(AI)を自動化のための手段ではなく、業務に付加価値をもたらすものとして活用することが不可欠だ。AIが日々進化する中、企業は信頼性と透明性を担保しながら、業務にAIを組み込んでいくために、業務のあり方を再考する必要がある。今回の調査では、わずか37%の企業が「人間とマシンの協働を促すため、インクルーシブデザイン(多様な利用者と一緒にデザインを行う手法)または人間中心デザインの原則を採用している」と答えた。

◆スマート・シングスのジレンマ(The Dilemma of Smart Things)

製品は常にベータ版であるという時代に突入し、製品を所有することの基本概念が揺らぎ始めている。企業がデジタル体験を起点にした新たな製品を模索する中、こうした新たな時代の到来に備えることは不可欠だ。今回の調査では、企業経営層やIT担当幹部の74%が「インターネットに接続された自社製品やサービスのアップデートの回数が、今後3年間で増える、または大幅に増える」と答えた。

◆解き放たれるロボット(Robots in the Wild)

ロボティクスが活躍する場はもはや、倉庫や工場だけではない。5Gの登場によりロボティクスの活用がさらに加速していく中、あらゆる企業はこうした傾向を踏まえて、自社の未来を考え直す必要に迫られている。従業員によるロボットの活用について、今回の調査で経営層の意見は分かれている。「従業員がロボットを使った作業に慣れるには困難を伴うだろう」と答えた回答者が45%だったのに対し、55%は「容易に慣れるだろう」と考えた。

◆イノベーションのDNA(Innovation DNA)

企業は、分散型台帳、AI、拡張現実、量子コンピューティングをはじめとした、かつてないほど多様な破壊的テクノロジーを活用できる環境に置かれている。企業がこれらをすべて管理し、市場が求める速さで進化するためには、自社独自のイノベーションのDNAを構築する必要がある。今回の調査では、経営層の76%が「イノベーションの不確実性がこれまで以上に高まっており、着実な推進に向けて、エコシステムパートナーや第三者企業との新たな取り組みが必要になる」と考えていることが明らかとなった。

やみくもに市場に投入されるデジタル製品・サービス

今回の調査に際し、アクセンチュアの最高技術責任者(CTO)兼 最高イノベーション責任者(CIO)であるポール・ドーアティ(Paul Daugherty)氏は次のように述べている。

「多くの企業が、テクノロジーの力に期待を寄せてきた一方で、“ひと”、組織、社会への影響を十分検討しないまま、やみくもにデジタルを活用した製品やサービスを市場に投入しています。これにより、消費者の期待、テクノロジーの潜在的な提供価値、ビジネス目標のそれぞれに食い違いが生じ、『テック・クラッシュ』が起きてしまっているのです。企業は、大きな転換期を迎えているなかで、やみくもにテクノロジーを活用するのではなく、“ひと”の信頼を得ることを最優先に据えて、その中核となるビジネスやテクノロジーのモデルを見直し、競争と成長のための新たな基盤を築いていく必要があります」

EC市場でもAIチャットやさまざまなマーケティング分析ソリューションのほか、ロジスティクスやバックヤードではロボットも活用されてきている。それらは、わたしたちの生活を豊かにしているが、一方でビジネスの場への急速なテクノロジーの投入は、人と技術の新たな「あつれき」も生じさせるリスクがあるのかも知れない。

グループウェアひとつとっても、市場では多くのものが提供されているが「他社も使っているから」「なんとなく真新しいから」といった基準ではなく、なにが必要で、そのためにはどういったテクノロジーを利用すべきかを常に問う姿勢が求められているのかも知れない。


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