費用対効果を上げたい人必見!ROIの概要と計算方法を紹介

みなさんはROIという概念をご存じでしょうか。ROIは企業が生み出す利益を増大させるために極めて大事な指標で、企業の経営に携わる方であれば誰しもが知っておいて損はない概念です。ここではROIの概要をご紹介するとともに、その計算の仕方についても詳しく見ていきます。これまであまり馴染みがなかったという方は、これを機にぜひ知っておくことをおすすめします。

ROIとは?

まず最初にROIというのは、英語の「Return on Investment」の略語です。Returnは収益や利益、Investmentは投資を意味することから、ROIは日本語では投資収益率、または投資利益率と訳されます。投資したコストに対して実際にどの程度のリターンが得られたのかを表す指標であり、基本的にはROIが高ければ高いほど投資効率が良いと言えます。

このROIという概念が最もよく使われるのは、企業の買収や出資などのM&Aを行う場合です。買収などを行う際には投資した金額に対してどの程度の収益が得られるかを厳密にシミュレーションした上で、その結果をもとに買収対象となる企業の価値についてのバリエーションを行って買収金額を決定するというのが一般的なやり方です。そのため、買収後にその案件の成否をチェックするには、ROIのような投資に対する収益の率が明確に分かる指標が適しているのです。

ROIが用いられるのは何もM&Aの場合だけではありません。企業が費用をかけて投資を行うケースとしては、M&A以外にもマーケティングや広告宣伝などの営業活動をはじめ、システム開発や研究開発に至るまで多岐にわたります。それぞれの領域において、投資した金額に見合うリターンが得られたかどうかや複数の投資案件を比べてどれがもっとも投資効率が良かったかを見極めるために、ROIは極めて使い勝手の良い指標となっています。

もし、ROIが期待した数値以上であれば、その投資はうまくいっているということになるため、引き続き案件を進めて問題ないでしょう。一方、思ったようにROIの数値が伸びていないというのであれば、何かしら問題があるはずですので、何か改善に向けた見直しを行う必要があります。このように、ROIは投資案件の継続の要否を判断する場合にも利用可能です。

ROASとの違いとは

ROIに類似する概念として、ROASというものがあります。このROASは「Return on Advertising Spend」の略語で、Advertisingは広告、Spendは支出を表すため、広告費用の回収率や広告の費用対効果などと訳されます。使った費用に対して得られた効果を測定するために用いる指標という点ではROIと同じですが、ROIがあらゆる投資に適用される概念であるのに対し、ROASは対象が広告に限定されているという点が異なっています。

より正確に説明すると、ROASとは広告費用に対するその広告によって得られた売り上げを示す指標で、コストをかけて出稿した広告が当初の目的通りの効果があったかどうかをチェックするために非常に有効なものであるとされています。ROIも数値が大きければ大きいほど投資の効率が良いことを示すわけですが、ROASについても同様に大きな数値であればあるほど売上アップのための広告効果が高いという意味になります。そのため、いかにしてROASの高い広告を作り上げるかが企業の広告担当者にとっての腕の見せ所となるでしょう。

ROIの計算方法

ここからは、ROIの計算方法について見ていきます。実はROIの算出の仕方はそれほど複雑なものではなく、考え方を一度理解してしまえば誰でも簡単に計算できます。その計算式はいたってシンプルで、一言でいうと利益を投資額で割るだけです。数式で表すと(売上ー売上原価ー投資額)÷ 投資額×100となり、最後に100を掛けることによって、その数値はパーセントで表記されます。

例えば、1億円を投入してのべ3億円分の売上が見込まれる商品の製造が可能になる製造ラインを新たに工場に設けたとしましょう。その商品の売上原価が5,000万円だとすると、ROIは(3億円-5,000万円-1億円)÷1億円×100=150パーセントということになります。一方、同様の事例で売上が2億円しか見込めない場合には、ROIは(2億円-5,000万円-1億円)÷1億円×100=50パーセントと一気に低くなってしまいます。一般的にROIが100パーセントを下回っている場合には、その投資によるビジネスは赤字となってしまう可能性が高いと言われています。そのため、ROIが100パーセントを上回るかどうかは投資の収支を見極めるために、非常に重要なポイントであると考えておきましょう。ここで挙げた例の場合には、3億円の売上が見込まれるのであればその投資は行うべきですが、売上が2億円しか見込めないのであれば再検討が必要と言えます。

ROIが重視される背景

コストを抑えてリターンを確実に獲得したいと考える企業が増加しつつあるため、マーケティング活動を行う上でROIが重要視される場面が以前に比べて多くなってきています。では、経営においてROIが重視視されるようになった背景には何があるのでしょうか。

まずはマーケティング活動に用いるツールが多様化したこと、その結果として商談が成立するまでの期間が長くなっているという点が挙げられます。それに加えて、フローが複雑になったこともあって、マーケティングによって実際にどれくらいの効果が得られているのかが分かりにくくなっているのです。また、企業の最終的な目標はいかに利益を最大化するかという点であり、いくら莫大なコストを費やしてプロモーションを行っても、それが思うように利益に結び付かないのであれば意味がありません。そのため、特に2008年のリーマンショックに端を発した金融危機以降は経営の体制を見直す企業が増加傾向にあり、それとともにROIへの注目が高まってきたと言えます。

ROIを活用するメリット

では、次にROIの活用によって得られるメリットについてご紹介します。

規模の違う事業の費用対効果を比較できる


まず、ROIの1つ目のメリットは規模が異なる複数の事業における費用対効果を比べられるという点にあります。規模が違っている事業間では、単純に利益だけを見比べてもその事業がどの程度の投資効果を有するものであるかを見極めるのは困難です。そこで、事業ごとにROIを算出すれば、それぞれの事業がどの程度の採算性を有するのかを利益ベースで一目瞭然で把握できるようになります。数ある事業の中からROIの数値が良く、投資対効果に優れたものだけを選び出して集中的に投資を行っていけば、それだけ効率的に会社を発展させられるようになるでしょう。

なお、一般に小売業などはROIが低く、逆に飲食業などはROIが高くなる傾向にあると言われています。そのため、小売業を営んでいる企業においては、飲食業のようにROIの高い事業に進出することによって、より効率よく利益を生み出せるようになるでしょう。"

投資が成功したかどうか数値で分かる


2つ目のメリットは、ROIを用いれば投資の成否を明確に判断できるようになるという点です。ROIを算出すれば、投資によってどのくらいの利益が生み出せているのかを数値によって知ることができますので、事業によってどの程度の効果が得られたのかを簡単に見極められます。この点、ROASを使うと投資がどの程度の売上に寄与したのかは分かりますが、それによって本当に利益が出ているかまでは判別できません。ROIを用いれば、投資が実際に利益につながっているかがすぐに確認できるため、それによって投資が成功したかどうかを判断できます。

ROIを活用して企業の利益を高めましょう

ROIの概念と計算の仕方についてしっかりと理解できたでしょうか。企業を経営する上で重要なのは、いかに効率的に利益を上げられるかどうかという点です。そのためには、ROIのような指標をうまく活用して、企業の費用対効果をチェックすることが不可欠と言えます。ROIを有効に活用し、自社の投資の費用対効果を確認してみましょう。