Yahoo!が広告の安全性と品質向上策についてまとめたレポートを公表 

ECのミカタ編集部

ヤフー株式会社は、「広告サービス品質に関する透明性レポート」を公表した。ここではその概要についてポイントを絞って見て行く。

広告審査について

同レポートは、ヤフーが実施している広告サービス品質向上のための取り組みについて、広告主・広告会社・広告配信パートナー、そしてヤフーを利用するユーザーに安心してサービスおよび広告を利用してもらえるよう、その取り組み内容を伝えることを目的としている。

ヤフーでは不適切な広告の掲載を防ぐため、Yahoo! JAPAN 広告掲載基準を定めており、虚偽誇大広告や詐欺的な広告などの法令に違反する広告、ユーザーに不快感・不安感をあたえるような広告なども禁止している。

この基準は、法改正や社会情勢に合わせて常に見直しを行っており、2020年上半期も複数の基準を見直し、新基準の審査への適用を開始した。この基準を満たさない広告を掲載しないよう、掲載前および掲載後に審査をしている。また広告の審査は、審査スタッフとシステムの両方で、24時間365日行っているとしている。

広告掲載基準への社会動向の反映

◆新型コロナウイルスに関連する広告

2020年4月、広告主の皆様に向けて、新型コロナウイルスへの感染が「予防」「治療」できるような誤解を与えたり、感染拡大を利用して利益を得ようとするような内容の不適切な広告は掲載することができない旨を、注意喚起した。

◆コンプレックスに関する広告

一部の身体的特徴がコンプレックスであると思わせるような広告表現が増加し、それらを見たユーザーが不快感を抱くおそれがあると判断した。そのため、既存の基準である「コンプレックス部分を露骨に表現したもの」に抵触する広告であるとして、広告主の皆様に掲載をお断りすることをあらためて周知した。

広告審査結果

広告審査結果

2020年度上半期(4月~9月)は、Yahoo!広告において、約1億1千万件の広告素材を非承認(基準に抵触する広告として掲載を断った)とした。2019年下半期よりも非承認数が増加した要因としては、2020年5月に不当表示を禁止する基準の審査基準の見直しなどがあげられる。

広告審査による非承認の理由の内訳は、次の通りだ。2020年上半期は、最上級表示・No.1表示や薬用化粧品(医薬部外品)、化粧品の基準に抵触する広告数の増加が見られた。これらは、景品表示法や薬機法に基づきYahoo! JAPAN広告掲載基準を定めている。また、広告の関連性(広告文やバナーと、リンク先ページに関連性がないものなど)や、ユーザーの意に反する広告(リンク先ページが開けないものなど)に対しても、広告の品質を担保するために日々審査を行っているとしている。

広告のタイトル・説明文、画像(静止画・アニメーション画像)、動画における非承認理由の内訳は次の通りだ。2020年上半期の傾向として、広告タイトル・説明文での貸金業の広告での非承認が増加した。この非承認の内訳としては、金融サービスを比較した広告の不適切な表現によるものが多くを占めた。また、画像や動画の広告での、ユーザーに不快感を与えるような表現の非承認数が2019年下半期に引き続き目立った。体型や毛髪など人のコンプレックス部分をことさらに強調した表現は、掲載を断っているとしている。

広告審査では、広告単位での対応のみでなく、広告アカウントを停止することがある。これは、アカウント内の広告に多数の広告掲載基準への抵触があったり、 悪意をもって審査をすり抜けようとするような不正行為や詐欺行為のおそれがあった場合に行う対応だ。広告アカウントが停止されると、以降の広告出稿が不能になる。また、新規アカウント開設時にも審査をしており、過去に不正行為のあった広告主との名寄せを行い、同一の不正者による広告出稿を防止しているとしている。

広告掲載面の非承認理由について

広告掲載面の非承認理由について

広告掲載面の事前審査では、ブランドセーフティとアドフラウドの両方の観点で審査を行っており、2020年上半期の非承認率は前回の2019年下半期と同水準で約18%となった。審査対象デバイスは、アプリ掲載面が大幅に増加し、2019年下半期に比べおよそ6倍の審査依頼があった。なお、アプリ掲載面に関しては、2020年8月より株式会社SpiderLabsが提供している「Spider AF(スパイダーエーエフ)」との連携を開始し、アドフラウドの発生疑いのあるアプリを事前に検知する取り組みをより一層強化している。

事前審査の非承認理由の傾向は、性的な表現や知的財産権侵害の疑いがある掲載面が減少している。一方で、広告配信先運営者の明示不備が理由により非承認となった掲載面が増加した。これは、アプリ掲載面の審査依頼数増加に伴い、アプリにおける運営元(事業者)の明記がユーザーにとって分かりやすいかどうかの観点で判定基準を見直したことにより、一時的な該当数の伸びに繋がったためだという。Yahoo!広告の掲載面としての信頼性を維持・向上するため、パソコンの掲載面だけでなくアプリの掲載面においても、サイトの運営元が明確であることを重視しているとしている。

さらなる品質強化策を実行

さらなる品質強化策を実行

2020年上半期は、無効クリックを検知して排除する割合が、2019年下半期よりもさらに増加した。特に検知した割合が顕著だったスマートフォンに関しては、特定の不正アクセスが多く集中していますが、継続的なブロックを行うことができている。検知した無効クリックに関しては、課金対象から除外しているため、広告主の広告費用への影響はないとしている。2020年9月には、新しい傾向による無効クリックを検知し、非課金処理システムへの反映を行ったが、完了までのタイムラグで発生した費用について、一部の顧客へ返金する対応を行っているとしている。

Yahoo!広告の主要な掲載面の一つである「Yahoo!ニュース」では、健全な言論空間を創出するため、その阻害となるようなコメント(記事との関連性の低い内容、人権侵害や誹謗・中傷、ヘイトスピーチなどを含む)の投稿を禁止するコメントポリシーを制定し、ユーザーへの周知・啓発など継続的な対策をとり続けている。2020年6月には、コメントポリシーの一部改定を発表した。コメント欄での個人に対する誹謗中傷等の投稿については、法律家やその他幅広い分野の有識者による検討会を設置し議論を進めている。また、コメント投稿画面の下部に、コメントポリシーへのリンクを設置したり、投稿前の注意事項を表示させるなど不適切投稿の事前抑止にも取り組んでいる。

さらにYahoo!広告のさらなる安全性向上のため、グローバルに展開するDoubleVerify (ダブルベリファイ)の解析技術を活用した、広告掲載面のアドフラウド排除とブランドセーフティ制御を強化するためのリアルタイムによる不正解析機能を2021年春に導入することを発表した。これにより、ディスプレイ広告では、広告主は特別な手続きや追加費用の負担なくこの機能が利用可能になるという。

このように、同社として広告サービス品質の向上について各種の施策を実行しており、その基準と運用について透明性を確保についても取り組みが進行していることが示された。広告そのものは、各ECプラットフォームにおいても重要な収入源ともなっているが、その運用に関しては、コンプライアンスの観点からも慎重な運用が必要となる。それはプラットフォームだけではなく、そこへ出品するショップにとってもブランドの維持に直結する。なにより一般の消費者を守ることにもつながるだけに、今後のさらなる施策強化が求められることになりそうだ。

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