米国の返品額は約60兆円、日本も増大 返品業務の課題解決を目指す『Recustomer』のβ版をリリース

ECのミカタ編集部

ANVIE株式会社は、小売事業者の返品・返金業務を自動化するSaaS「Recustomer(リカスタマー)」のβ版をリリースした。

業務を圧迫する返品対応

Recustomerは、購入者からの返品依頼から商品交換・返金、在庫の補充まで、返品に関するCS業務を自動化することで、コスト削減を実現するソリューションだ。また、返品完了までのスピードが上がることで顧客体験の向上も可能だという。

そもそも返品対応業務は、商品を販売するよりも大幅に手間がかかる。購入者とのやりとりもメールで行われ、返品商品はスプレッドシートやエクセルで管理されているのが現状だ。

ECサイト運営における物流やバックオフィスは自動化しているが、返品周りの業務に限ってはアナログな手法を使っている事業者も多いのが現状だろう。したがって、小売事業者にとっては、増え続ける返品に対して対応業務をどう効率化してコストを削減するかが課題となる。

返品自動化サービス「ReCustomer(リカスタマー)」

返品自動化サービス「ReCustomer(リカスタマー)」

Recustomer(リカスタマー)は、購入者からの返品依頼受付から商品交換・返金、そして在庫の補充までの業務を自動化する。それにより、増え続ける返品に比例して、カスタマーサポートの人員を増やす必要がなくなるのだ。また、購入者にとっては、24時間返品受付ができる返品ポータルを通して、返品依頼から返金実行までのスピードが格段にアップし、顧客体験の向上も同時に実現することができる。

Recustomerを導入したECサイトでは、購入者は注文番号といくつかの質問に答えるだけで、スムーズに返品申請が可能だ。また、返品ポリシーに沿った返品申請は即時に承認され、その場で佐川急便による集荷を手配することも可能になり、顧客体験向上にもつながる。

EC事業者にとっては、購入者との複数回のメール作業や倉庫業者を交えた在庫管理の業務が自動化され、業務コスト削減およびスムーズな返品プロセスによる顧客体験向上を実現する。

◆ReCustomerの主な機能

[メールレスな返品センター]
返品センターを構築することで、返品リクエスト受付〜返送指示をWebシステムが自動で対応。複数回にわたるメールでのコミュニケーションは必要ない。

[返品・返金可否の自動振り分け]
あらかじめ商品交換・返金許諾条件を設定しておくことで、ほとんどの返品リスクエストに対して、自動で商品交換・返金可否を振り分ける。

[倉庫との連携]
倉庫と連携することで、注文番号・顧客情報・検品の結果・商品配送ステータス・対応状況・対応手段を一つの管理画面で管理することができる。スプレッドシートでの管理体制だったことによる複雑なオペレーションがスリム化する。

[自動集荷依頼]
配送業者と連携することで、集荷を自動で手配する。ユーザーの返品業務の負担を軽減することで、顧客体験向上につながる。

[外部システム連携]
クラウド型カスタマーサービスツール「zendesk」や、自動出荷指示ツールなどと連携ができる。これにより、交換商品の出荷指示や在庫管理の自動化、チケット管理の一元化が可能になる。

[ストアクレジット]
返金を希望する購入者に、Recustomerが返金の代わりにクーポンの利用を提案する。購入者は即時に自動発行されるクーポンで再購入することができる。

国内でも返品対応可のECが選ばれる傾向に

同社はForbesの調査を引用して、次のような点を指摘する。米国のEC小売業の返品率は、25%〜40%が標準となっており、2020年の返品額は$500 billion(日本円にして約60兆円)と言われている。また、インドや中国やヨーロッパなどの先進国でも日本と比較して返品率が高いことが判明している。

別の調査では、オンライン上で返品した購入者の44%、店舗で返品した購入者の66%が返品時に追加で商品を購入していることが判明した。また、UPSの2017年の消費者調査によると、購入者の67%が寛容な返品ポリシーが満足度に良い影響を与えると回答し、79%の購入者がこのような返品ポリシーはECサイトを選ぶ際の重要な指標であると回答した。

このような統計から、海外では返品を顧客接点として、次の購入に繋げていることがわかるそうだ。実際に、最大手モールのAmazonは2016年より出品者に対して返品無料を義務付けており、さらにTry-Before-You-Buy Program(購入前試着プログラム)の実施も始めた。他にも、AllbirdsやZARAなども返品無料ポリシーを掲げることで大きな成長を遂げている。

このような返品ポリシーを持つ海外の小売事業者が日本市場に参入することにより、日本の小売事業者の間でも返品ポリシーの変化が見られている。具体的には、返品無料ポリシーを掲げるロコンドなどが挙げられ、返品に関する課題を解決するような施策を行なった企業は、売上増加や購入者増加の結果が見られるという。

つまり、時代の流れは返品を受け入れる流れになってきており、「購入後に返品が可能なECサイトの方が安心して購入ができる」という流れが加速することが予想される。これらのことから海外企業のように、返品をマイナスではなく、売り上げ向上の施策としてとらえる企業が増加することにもなるだろう。同社のソリューションは、まさにこうしたトレンドを捉えたものとなっており、多くの事業者のビジネスを加速させることになりそうだ。

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