【ECのミカタ】2021年 注目キーワードを集めました

ECのミカタ編集部

2021年のEC業界は、2020年からのコロナウイルスの影響を引き続き受け、大きな変化があった。

なかでも注目を集めたのが、課徴金制度が追加された改正薬機法や、EC市場が拡大する中での決済手段の多様化だ。ここでは、2021年に注目されたトピックをまとめ、今年のトレンドを振り返りたい。

薬機法

薬機法

2021年9月に発行した「ECのミカタ通信」では、EC業界の専門メディア視点で注目ニュースを解説する新連載「ニュースのヨミカタ」を公開した。初回のテーマは「薬機法」。8月に改正薬機法が施行され、新たに「課徴金制度」が導入された点に注目だ。

これによって、薬機法第66条が定める「誇大広告の禁止」に違反し、不当な売上を得た企業等には、違反対象商品売上の4.5%相当が課徴金として徴収されることになる。4.5%といえど、利益ではなく売上に対して課されるため、大きな負担となる可能性がある。

薬機法上の虚偽・誇大広告の規制対象は「何人も」であり、EC事業者はもちろん、広告代理店や個人アフィリエイターなど、薬機法の規制対象となる広告に携わる人全員が対象となる。しかも、故意ではなく知らず知らずのうちに違反してしまった場合でも、「知らなかった」からといって罰則から逃れることはできない。

薬機法の対象となる商品は医薬品だけにとどまらず、化粧品や健康食品、マスクなど幅広い。したがって、医薬品を扱ってはいなくても、化粧品や健康食品を扱う事業者は薬機法の規制対象となるのだ。

薬機法では、化粧品や健康食品の広告において「医薬品的な効能効果」をうたってはいけないとされている。事業の拡大とともにEC事業者が出稿する広告量も多くなるが、魅力的な広告表現を追求するあまり、法律に触れてしまっては、自社のブランドイメージが傷付くばかりか、関係者が刑事罰を受けることにもなりかねない。

化粧品や健康食品を扱う事業者にとって、薬機法の順守はますます重要な課題となっているが、具体的な禁止表現が法律の条文に定められているわけではないため、判断が難しいこともある。

そこで、ECのミカタ通信WEBでは、弁護士監修のもと、広告表現のOK・NG例をまとめたホワイトペーパー「やさしく解説 これで全部わかる!『新薬機法』」を無料公開している。商品カテゴリーごとに具体的なOK・NG表現を記載しているので、ぜひ参考にしていただきたい。

【新連載ニュースのヨミカタ】これで全部わかる!「新薬機法」丸の内ソレイユ法律事務所監修WP公開

Amazonマケプレプライムのルール変更

Amazonマケプレプライムのルール変更マケプレプライムルール変更について解説するMIKATA株式会社の西村
https://ecnomikata.com/column/30144/

2021年1月、Amazonセラーに向けて、マケプレプライムのルール変更の告知が行われ、7月に変更が施行された。

ルール変更のポイントは①週末出荷の設定、②配送時間指標の目標値達成、③標準サイズ商品の全国配送、の3つだ。

①週末出荷の設定
ルール変更により、マケプレプライムに参加するには土日の出荷が必須となった。Amazonの管理画面の設定の変更自体は簡単に行えるが、委託している物流倉庫が365日対応ではない場合、委託先の変更を余儀なくされるケースも出てきている。

②配送時間指標の目標値達成
出品者がショッピングカートボックスを獲得している状態で、ユーザーが商品詳細ページを閲覧すると、配達予定日を確認することができる。新ルール下では、配達予定日が「1〜2日以内」と表示された割合をAmazonのダッシュボード上で計測し、目標値達成を目指さなければならない。

③標準サイズ商品の全国配送
従来は、マケプレ対象商品の配送地域は事業者自ら設定を行っていたが、今回のルール変更により、海道、沖縄、離島を除いた、本州・四国・九州が一律にプライム対象地域として設定されることに。つまりは、標準サイズの商品は、北海道、沖縄、離島を除く全国をプライム対象にすることが必須となった。

Amazonのルール変更自体は珍しいことではないが、2021年7月のルール変更は、出品事業者の売上や物流体制影響を与える大きな変更だった。これらのルールへの対応が漏れていると、対象商品がマケプレ対象から外れてしまい、検索結果の上位に表示されなくなることで、売上にも影響が出てくる。

当然、今後新たにマケプレプライムに参加する場合も、従来の参加要件に加え、これら3つの要件を満たさなければならない。Amazonがマケプレプライムに求める物流体制を整えるためには、FBAを利用する、365日対応の物流倉庫に委託して自動出荷システムを導入し、土日も出荷を行うといった対策が必要となり、出品事業者には厳しいルール変更となった。

Amazonマケプレプライムのルール変更を解説 7月以降に施行開始予定

後払い

後払いhttps://ecnomikata.com/original_news/32717/より。株式会社キャッチボール取締役社長 端 郁夫 氏

現状、日本のECサイトの決済手段はクレジットカードが主流だが、「後払い決済」の導入を進める企業も少なくない。EC市場の成長に比例する形で後払い市場も伸長しており、2024年には日本の後払い決済サービス市場は1.8 兆円を超えると予測されている。

日本でも8割を超える認知度を誇る後払いだが、日本よりもさらに利用が拡大しているのが、欧米先進国だ。

2020 年から 2024 年にかけて、EC 市場における後払いの利用率は、北米では1.6%から 4.5%に、欧州では 7.4%から 13.6%に拡大するとの試算が出されている(Worldpay 「Global PaymentsReport2021」より)。なかでもヨーロッパでは、2024 年には銀行送金(11.1%)を上回り、クレジットカード(19.0%)やデビットカード(16.1%)に迫る勢いでシェアを拡大すると見られている。

欧米における後払いの 利用者は 20~30 代の若年層が中心で、比較的高価な商品を購入する際に、クレジットカードの代替手段として利用されるケースが目立ってきている。欧米のトレンドが後追いで日本に入ってくることが多い中、来年以降の日本の後払い市場はどうなっていくのだろうか。

BNPLのエキスパートが語る 変化するニーズへの対応により実現する「新しい後払い」のカタチ

2021年9月、PayPalが後払いサービスを提供する株式会社Paidyを3,000億円で買収すると発表した。このことは、今後日本においても後払い市場がさらに拡大するとみられていることを示している。

現状、日本で後払い意向が高いのは、クレジットカードを持たない人の割合が多い若年層と、ECサイトでの商品購入自体に不安があり、商品が手元にない状態で代金を払うことに抵抗感がある高齢者が中心となっている。

後払いを選ばない大多数の層はクレジットカード決済を選んでおり、その背景には「後からコンビニなどに出かけて払うのが面倒」などの理由が存在すると考えられる。一方で、後払いもスマホ決済に対応するのが当たり前になりつつあり、後払いに外出が必須とは限らなくなってきているのが現状だ。

「後払い=コンビニや郵便局などで払う」という一昔前のイメージが払拭され、「スマホ決済でも払える」というイメージが浸透すれば、日本でも後払いの利用者層はさらに拡大していくのではないだろうか。

コロナ禍での市場環境の変化や法改正、新しい支援サービスの登場など、今年もめまぐるしい変化があったEC業界。今年の主要トピックを改めて振り返ることで、来年の好スタートにつなげてほしい。


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