マーケティングファネルとは?意味、注目の理由から最新のモデルを徹底解説

ECのミカタ編集部

マーケティングファネルとは?意味、注目の理由から最新のモデルを徹底解説

マーケティングファネルは、顧客の消費行動を可視化することによって、行動や心理を分析するフレームワークです。顧客行動をシンプルなモデルに落とし込めるため、おおまかに全体像を把握できる点が強みです。一方、BtoCビジネスにおいては従来型のモデルではカバーできないほど、顧客の行動や心理が多様化しています。そのため、複数のファネルを使い分けたりする必要があるでしょう。

マーケティングファネルとは

マーケティングファネルとは、消費者が購買に至るまでの流れを図式化したものです。ファネルには「漏斗」という意味があり、マーケティングファネルの図が上から下に向かってしぼんでいく様子を「漏斗」に見立てています。
マーケティングファネルでは、顧客が商品やサービスを認知して興味をもち、比較や検討を経て購入に至ります。

AIDMAモデルがもとになっている


マーケティングファネルは、もともとAIDMAモデルから生まれています。AIDMAとは、消費者の購買行動プロセスを示した代表モデルです。AIDMAは各プロセスの頭文字をとったもので、それぞれのプロセスは以下のとおりです。
● Attention(注意)
● Interest(関心)
● Desire(欲求)
● Memory(記憶)
● Action(行動)

なお、AIDMAモデルから派生した購買プロセスモデルにはいくつかのパターンがあり、AMTULやAISAS、DECAXなどがあります。AIDMAモデルと派生モデルの大きな違いは、購入後のプロセスに対する意識です。
AIDMAは、Action(商品の購入)を最終段階においているのに対し、派生モデルは固定利用や情報共有までを見据えています。派生モデルが生まれた要因は、マーケティングの多様化によって、購入後のアフターサービスまでを含めた施策の重要性に着目する企業が増えたためです。

マーケティングファネルの重要性


ビジネスにおいて、顧客の購買プロセスごとに最適化したマーケティング施策を実行することが重要です。たとえば、認知段階の顧客に対して商品知識を前提とした訴求をしたり、ロイヤリティ段階の顧客に対してサービスの概要を訴求したりしても、販促にはつながりません。

マーケティングファネルの種類とテンプレート

マーケティングファネルには、さまざまな種類のファネルがあります。まずはもっともメジャーな3つのファネルをテンプレートとしておさえておくとよいでしょう。
以下では、マーケティングファネルについて解説します。

パーチェスファネル


パーチェスファネルとは、もっとも基本的なマーケティングファネルです。認知に始まり、興味・関心をもち、比較・検討して購入に至るプロセスに注目しており、AIDMAモデルもパーチェスファネルの一つです。
一般的にパーチェスファネルは、購入前の各プロセスにおける顧客数、離脱のポイントを探るために用いられます。たとえば、100人の人々が認知して、うち70人が興味・関心をもち、20人が比較・検討に進み10人が購入したとします。
この場合、離脱のポイントは、興味・関心から比較・検討に至るフェーズです。つまり、興味・関心フェーズの見込み顧客に対して、ボトルネックを解消したり、一歩踏み込んだ訴求をしたりすることが求められます。

インフルエンスファネル


インフルエンスファネルとは、購入後の行動に着目したマーケティングファネルです。インフルエンスファネルにおいては、継続、紹介、発信の順にセグメントするケースが一般的です。インフルエンスファネルが生まれた背景には、SNSの台頭によって個人の発信力が強くなったことが大きく関係しています。
いまや、商品の購入を判断するうえで、SNSやECサイトの口コミを参考にすることは、消費者にとって当たり前です。そのため、既存顧客に情報を発信してもらうことは非常に重要です。そこでインフルエンスファネルでは、購入後の顧客が知人に紹介したり、SNSで共有したりする段階を検証しています。
なお、インフルエンスファネルにおいては、一人の顧客が次なる見込み顧客を生んでいく様子を見立てて、下のフェーズに進むにつれて幅広になる図で示します。

ダブルファネル


ダブルファネルとは、パーチェスファネルとインフルエンスファネルを組み合わせたモデルです。認知から購入までは漏斗型のパーチェスファネル、購入から発信までは逆漏斗型のパーチェスファネルとなっており、砂時計型のファネルが完成します。
ダブルファネルでは、見込み顧客の獲得から購入、さらには購入後の情報発信に至るまでを図式化することによって、一貫したマーケティングを実施できます。ダブルファネルの強みは、新規顧客の獲得、リピーターの育成を両輪で進めるため、相乗効果が期待できる点です。

たとえば、AIDMAモデルから発展したAISASモデルは、インフルエンスファネルの代表例です。AISASモデルでは、以下のように顧客のフェーズをファネル化します。
● Attention(注目)
● Interest(関心)
● Search(検索)
● Action(行動)
● Share(共有)

また、AISASモデルは、デジタルマーケティングの考え方をもとにAIDMAモデルから派生したものです。そのため、「行動」の前には「検索」、「行動」の後には「共有」のフェーズが設けられています。

マーケティングファネルの活用方法

マーケティングファネルを理解していても、実際にどう活用すべきかがわかっていなければ、ほとんど意味をなしません。ファネルの考え方の基本をおさえたうえで、実務において活用していくことが重要です。
以下では、マーケティングファネルの活用法について解説します。

フェーズごとの施策の最適化


マーケティングファネルを用いた分析では、顧客のフェーズごとに施策を最適化できる点が特徴です。顧客が購入に至るプロセスをセグメント化して分析することで、それぞれのフェーズの顧客に対してどのようにアプローチすべきかを検討できます。
たとえば、ECサイトの場合は広告からランディングページへの遷移を「認知」、ランディングページから商品ページへの遷移を「興味・関心」と捉えられます。ランディングページは離脱率が低いものの、商品ページは離脱率が高い場合、興味・関心フェーズの顧客へのアプローチが適切でないと考えるべきです。

ナーチャリングの段階の把握


ファネル分析では、見込み顧客を獲得してから購入、その後の継続や発信に至る過程を可視化できます。フェーズごとの顧客数を分析できれば、ナーチャリングにおけるレベルの把握に役立ちます。具体的には、見込み顧客のうち何割程度が購入に進んでいるか、既存顧客のうちロイヤルカスタマーの割合はどれくらいかなどを検証可能です。
ナーチャリングの段階を把握できると、マーケティング施策を検討するうえで、どの施策に注力すべきかを判断する基準になります。予算や人員を割く際には、どの段階にいる顧客が多いかをもとに検討するとよいでしょう。

マーケティングファネルはもう古い?

マーケティングの世界においては、マーケティングファネルはもう古いという考え方もあります。背景には、消費行動の多様化、新たなファネルの誕生などの要因があり、実務にあたっては考え方をアップデートしていかなければいけません。
以下では、マーケティングファネルに対する考え方について解説します。

消費行動は多様化している


マーケティングファネルは、顧客の購買行動を直線的に可視化したモデルです。しかし、実際に一人ひとりの顧客の行動を分析すると、必ずしも直線的な消費行動をとるとは限りません。とくに近年では、チャネルの多様化にともなって、顧客の行動や心理にもさまざまなパターンが生まれています。そのため、画一的なモデルによって顧客行動を分析すること自体がナンセンスだと考えるアナリストもいます。
また、顧客側だけでなく、商品・サービスの提供者側においてもサブスクリプションをはじめ、新たな販売モデルが生まれており、購入を基準とするファネルではカバーしきれません。

新しいファネルモデルが注目されている


インフルエンスファネルやダブルファネルでも対応しきれない部分については、さらに新しいファネルモデルが注目されています。従来型のファネルモデルは、基本的に直線的なモデルであったのに対し、新世代のファネルはループや分岐を加えて、多様な購買モデルの分析を可能にしています。

ルーピングファネル


ルーピングファネルとは、認知から購入、その後の発信までを円形に示したマーケティングファネルです。スタートからゴールまでの一本道ではなく、途中のフェーズにもループが組み込まれており、検討フェーズにとどまる様子や特定のフェーズを飛ばして購入に至る様子もカバーしています。ルーピングファネルは、多様な購買モデルを的確に図式化しており、より精緻な分析に役立つでしょう。

マイクロモーメンツファネル


マイクロモ―メンツファネルとは、即時的な欲求にもとづく購入プロセスを図式化したマーケティングファネルです。「今すぐに欲しい」や「今すぐに行きたい」のような欲求をもとにした消費活動には、興味・関心や比較・検討などのフェーズが存在せず、動機と行動が直線的に結ばれた図が完成します。一方、行動に至った動機にはさまざまなシチュエーションが考えられます。そのため、動機と行動が直線的に結ばれており、かつ動機の部分は複数のパターンに分岐している点がマイクロモーメンツファネルの特徴です。

BtoBでは従来のファネルモデルも有効


前述のとおり、従来のファネルモデルはあまり現実的でないとの意見も多くあります。しかし、これは主にBtoCにおける話です。BtoBビジネスにおいては、従来型のファネルモデルどおりのプロセスをたどる顧客がほとんどです。そのため、BtoBビジネスを展開する企業にとっては、従来型のマーケティングファネルもおおいに役立つでしょう。


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