第3回 日本通販CRM協会定例セミナー

ECのミカタ編集部

第3回定例セミナー開催

 一般社団法人 日本通販CRM協会による「第3回 日本通販CRM協会定例セミナー」が9月11日、渋谷マークシティ内にあるサイバーエージェント セミナールームで開催された。今回3回目の開催となる定例セミナーは3部構成の拡大版として行われた。

日本通販CRM協会は日本で唯一の通販に特化したCRM専門協会だ。2015年1月の発足以来、EC・通販業界のCRM活動の発展と普及活動を行い、消費者がより快適な通販を行える社会、そして通販事業者が独自の強みで成長できる業界へ発展するよう、貢献している。

■1部「CRMとLTV ~事業者が理解すべきLTV概念にもとづくCRMとは?~」
株式会社 ディノス・セシール 相談役 上田 昌孝氏

■2部「機能性表示健食とサイコCRM理論でLTV10万円」
株式会社 薬事法ドットコム 創始者 林田 学氏

■3部「デジタル時代のCRMのこれから」
株式会社サイバーエージェント eCRM ソリューション局 稲益 仁氏

第1部「CRMとLTV ~事業者が理解すべきLTV概念にもとづくCRMとは?~」

第1部「CRMとLTV ~事業者が理解すべきLTV概念にもとづくCRMとは?~」

 第1部では株式会社ディノスセシール相談役であり、ダイレクトマーケティングにおいて30年以上の経歴を持つ上田昌孝氏が登壇した。上田氏はまず始めに、通販の歴史について語った。1872年に全米農民共済組合のカタログが発行され、農民の支持を得たというのがスタートで、以後農家の家には「聖書」と「カタログ」があったというほど、通販は重要な役割を担ったという。日本ではとうもろこしの種子や、判子などの通販が早く、1800年代には登場していた。歴史を振り返ったあとは、現在のダイレクト・マーケティングの各チャネルの特徴について説明をした。「近年、インターネットへのシフトが謡われるダイレクト・マーケティングであるが、ネットへシフトすることはありえない」と上田氏。様々なチャネルがあり、それぞれユーザーの「購入するという基本的な考え方」や「行動パターン」、「ユーザーの気持ち」はそれぞれ違うため、それに合わせなければならないのだ。

テストマーケティングを繰り返すことで、自分の商品にあったCRMを見つけていくことが重要で、次に効率よく広い海の中で集団をうまくみつけるための技術的手法や考え方を開拓する。他業種の顧客リストとのアライアンスなどで新しいチャネルへと切り開くことが必要となる。

インターネットへのシフトが謳われているCRMであるが、インターネットはあくまでダイレクトマーケティングのチャネルの一つでしかないという。そのために、「インターネットへのシフト」を鵜呑みにするのではなく、自分の販売する商品に合ったCRMの方法をテストマーケティングを繰り返す中で見つけていかなければならないのだ。

第2部「機能性表示健食とサイコCRM理論でLTV10万円」

第2部「機能性表示健食とサイコCRM理論でLTV10万円」

 第2部では大学教授、弁護士を経て、現在株式会社薬事法ドットコムの社主を務める林田学氏が登壇した。林田氏は日本で唯一のELM(エビデンス・リーガル・マーケティング)のコンサルを行っている。

まず、自らの紹介の中で、CRM協会の特別顧問を務める、やずやグループ未来館社長の西野氏に、2012年に紹介された会社について語った。新規事業として美容液を販売したが、なかなか売れない。美容液が高価であり、知名度の低いブランドであったがために売れなかったのだ。そこで林田氏は「うんちくをつけるしかない」と考え、ELMの考え方を元に「医学雑誌に掲載された第1位の美容液」というコピーを付けると、商品の売上はあがったという。

次に、機能性表示健食はハードルは低いが、手続きに時間が掛かってしまうという現状だと林田氏は述べる。しかし、機能性表示健康食品の規制改定は、薬事法の壁を取り払い、これまで不可能であった施策も行うことができるようになったのだという。

機能性表示健康食品を販売したいが、どこまで書いて良いのかわからない、売上が伸び悩んでいる、というショップは機能性表示健康食品の規制改定についてしっかりと学ぶことが大切なのである。

第3部「デジタル時代のCRMのこれから」

第3部「デジタル時代のCRMのこれから」

 第3部では今年の6月に顧客のLTV最大化をミッションとした専門組織「eCRMソリューション局」を設立し、局長に就任した稲益仁氏が登壇し、これからの時代にどのようなCRMを行っていくべきなのかを語った。

昨年、ネットの広告費が1兆円を超えたが、1兆円を超えているメディアはテレビとネットだけである。ネット広告の中でも環境変化があり、最近ではリスティングやSEMなどの運用型広告(入札型)に予算が集中しているという。ネットに広告費がシフトしているなかでも運用型広告(入札型)にシフトしているということで、入札価格がかかってしまう。そして最近では大幅に入札価格があがっているため、一人ひとりの誘導にかかる単価も上がってきており、結果としてCPOが高くなる。そうすると広告投資回収期間が長くなるために、ユーザーを放さないためにCRMが大切になってくるのだ。

デジタルCRMの分野においては、CRMはEメールのみ、という企業がほとんどであるのが現状だ。しかし、Eメールの開封率は下がっており、10%前後だという。サイバーエージェントが考えるこれからのデジタルCRMとして、マルチデバイス時代に応じて様々な手段で配信することで、メッセージ到達率を上げることが重要だという。今後注目したいものは1つ目にショートメッセージ、2つ目にLINE、3つ目にブラウジングだそうだ。

最後に、稲益氏はメール開封率を上げるための方法を参加者にレクチャーし、第3回の定例セミナーは終了した。


様々なCRMを企画してきた実業家の上田氏をはじめ、日本で唯一ELMのコンサルティングを行う林田氏、「eCRMソリューション局」局長の稲益氏など、CRMを知り尽くした講師陣による丁寧な講演が行われ、終了後には質問が多数出るなど、講演内容に多くの参加者が引き込まれた。自らの企業を取り巻く環境を考え、それに合わせてCRMを通して、顧客とどんな接し方ができるのか。それぞれの参加者にとって課題を投げかけ、変化のきっかけを与える貴重な講演であった。

最後に、第4回定例セミナーの講師が発表された。日時は以下の通り。

日時:2015年10月9日(金)
※毎月第2金曜日
第1部:16:00 株式会社えがお 
          専務取締役 高橋貞光氏
第2部:17:00 公益財団法人 日本通販販売協会 
          理事 柿尾正之氏
第3部:18:00 株式会社ブランジスタ 
          取締役 木村泰宗氏
申し込みページ
URL:https://opossum.jp/form/?AA8rdbC**oYHP5PguawP_xUeA157fC3YVo26JnlAF3I-


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