4月1日施行の景表法新制度、背景の機能性表示食品

ECのミカタ編集部

「機能性表示食品」制度が始まります!(消費者庁)より

景表法の取り締まりが厳しくなっている

 2016年4月1日(金)、景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)の課徴金制度が施行された。この施行により、景品表示法に抵触した商品やサービスに対して、その売上の3%相当の支払を求められることになる(売上金額5000万円以上など条件あり)。実はこれ、EC業界にも大きく影響する可能性が高いのだ。

 まず、景品表示法について、少し説明させていただく。景品表示法とは、商品・サービスの品質、内容、価格等を偽って表示を行うこと(不当表示)を規制するとともに、過大な景品類(不当景品類)の提供を制限するものだ。特に前者の規制は、実はEC事業者にとって必須の知識と言っても良い。不当表示には、大きく分けて3つの種類がある。それが「優良誤認表示」「有利誤認表示」「その他、誤認されるおそれのある表示」だ。

 「優良誤認」とは、商品やサービスについて、事実に相違して競争事業者のものより著しく優良であると、一般消費者に誤認される表示だ。商品やサービスについて何らかの効果・効能を謳う場合に、その合理的根拠がない場合も優良誤認にあたる。最近で言うと、ココナッツオイルに関する商品や、黒酢に関する商品などが、優良誤認にあたるとして指摘を受けている。

 「有利誤認」とは、価格を著しく安く見せかけるなど、取引条件を著しく有利に見せかける表示だ。二重価格などがこれに当たる。「その他、誤認されるおそれのある表示」については、「優良誤認」「有利誤認」いずれにも当てはまらないが、消費者にとって不利になる表示について定められている。

 これまで、景品表示法上で誤認表示に当たるとされた場合、最も重い処分は、該当する表示の停止、再発防止策等を求める消費者庁や都道府県からの措置命令だった。これらの処分は、消費者にネガティブイメージを与え、返金要求などにもつながるため、処分を受けた企業にダメージを与えるものであったが、ここにさらに課徴金というダメージが加わる形となる。

 消費者庁はここ数年、特にインターネット上での誤認表示の取り締まりに力を入れている印象だ。インターネット上では、誤認表示の検索が容易である上、その背景として、2015年4月1日に施行された食品表示法で新たに定められた「機能性表示食品」制度がある。最近TVCMやその他広告でもよく目にするようになった「機能性表示食品」について、その他の機能性が表示できる食品とともに、次にまとめてみた。

機能性が表示されている食品

 機能性が表示できる食品には、以前よりある「特定保健用食品(トクホ)」「栄養機能食品」、そして新たに加わった「機能性表示食品」がある。それぞれの詳細は以下の通り(「機能性表示食品」制度が始まります!(消費者庁)より)。

●特定保健用食品(トクホ)
健康の維持増進に役立つことが科学的根拠に基づいて認められている食品。表示されている効果や安全性については国が審査を行い、食品ごとに消費者庁長官が許可している。

●栄養機能食品
一日に必要な栄養成分(ビタミン、ミネラルなど)が不足しがちな場合、その補給・補完のために利用できる食品。すでに科学的根拠が確認された栄養成分を一定の基準量含む食品であれば、特に届出などをしなくても、国が定めた表現によって機能性を表示することができる。

●機能性表示食品
事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示した食品。販売前に安全性及び機能性の根拠に関する情報などが消費者庁長官へ届け出られたもの。ただし、特定保健用食品とは異なり、消費者庁長官の個別の許可を受けたものではない。

 ポイントは、特定保健用食品と栄養機能食品はその機能性を国が保証するものであるのに対し、機能性表示食品は、あくまで国に届出をしているだけで、その機能性を保証するのは一企業ということだ。この制度は、アメリカの制度を手本に作られている。

 特定保健用食品は許可を得るのに多大なコストと時間がかかる。栄養機能食品は、表現できる機能性が限られており、訴求力に欠ける。そしてそれ以外の食品、あるいはいわゆる健康食品で、効果効能を謳うことはこれまではほぼできなかった。だが、機能性を持つ食品、健康食品の市場は年々拡大しており、この拡大を促し、経済効果をもたらす目的もあり作られたのが、機能性表示食品の制度なのだ。

 機能性表示食品の制度によって、食品の機能性の表現の幅が広がる一方、機能性表示に乗っていない食品や健康食品に対する、景品表示法の取り締まりは厳しくなりつつある。今まではグレーゾーンだったものが、指摘を受けるケースも増えているのだ。

 こういった流れを受け、EC事業者には、今まで以上に表示に関する規制についての知識が求められている。各省庁のサイトでもガイドライン等が公表されているし、法律事務所やリーガルコンサルを行うサービスなどもある。自分は大丈夫と思わずに、今一度の見直しをおすすめする。


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