【4月1日スタート】景品表示法の課徴金制度(上)

木川 和広

【連載コラム】これだけはおさえておきたいECの法律問題
アンダーソン・毛利・友常法律事務所 弁護士 木川和広

第9回:正しい利用規約のポイント(上)
http://ecnomikata.com/ecnews/strategy/8002/

第10回:正しい利用規約のポイント(下)
http://ecnomikata.com/ecnews/strategy/8069/

全国的なメニュー偽装問題を受けて2014年11月に成立した景品表示法の課徴金制度が、いよいよ今年4月1日に施行され、実際の運用が開始されます。

これまで、景品表示法上の誤認表示に対する行政処分として最も重いものは、表示の使用停止、再発防止策等を求める消費者庁や都道府県からの措置命令でした。しかし、誤認表示に対する社会的な批判の高まりを受けて、違反者が得た利益を剥奪するための制度として、課徴金制度が導入されることになりました。

このコラムでは3回にわたって、この課徴金制度について、詳しく解説したいと思います。第1回は課徴金の要件、第2回は課徴金を避けるまたは減額するための要件、第3回は課徴金制度に関する消費者庁のガイドラインについて、ご説明します。

課徴金の対象行為

課徴金の対象となる行為は、景品表示法の優良誤認表示と有利誤認表示です。

優良誤認表示とは、一般消費者に、実際の商品やサービスよりも著しく優良だと誤認させるような表示です。具体的には、外国産の牛肉を国産牛肉と表示するような例がこれに当たります。

有利誤認表示とは、一般消費者に、実際の取引条件よりも著しく有利な取引条件だと誤認させるような表示です。開店以来1980円でしか販売したことがないのに、「通常価格1万円のところ、今だけ1980円!」などと表示する二重価格表示が典型例です。

「10日で10キロ痩せる」などと宣伝しているダイエットサプリがありますが、これも優良誤認表示です。ただ、実際に10日で10キロ痩せる効果がないことを行政サイドが立証することは難しいので、行政サイドから事業者に対して、この表示の根拠となる資料の提出を要求することができます。そして、15日以内に根拠資料が提出されない場合には、その表示は優良誤認表示と推定されます。根拠資料の提出を受けてから15日以内に資料を作成することは事実上不可能ですので、事業者としては、予め表示の根拠資料を準備しておくことが必要です。

課徴金の算定方法

課徴金の対象期間は最大3年です。原則として誤認表示をしていた期間が対象期間となりますが、誤認表示をやめた後に商品や役務の取引があった場合、誤認表示をやめた日から6か月後、または誤認表示を撤回することを新聞に掲載するなど誤認のおそれを解消するための措置を採った日のいずれか早い日までが対象期間となります。

課徴金額は、誤認表示の対象となった商品やサービスの売上の3パーセントです。会社全体の売上ではなく、誤認表示の対象となった商品やサービスの売上が基準になります。ダイエットサプリでA/B/Cという3つの商品がある場合、誤認表示をしたAという商品の売上だけが対象となります。

課徴金の額が150万円未満となる場合には、課徴金は賦課されません。つまり、商品やサービスの売上が最大3年分で5000万円未満の場合には、課徴金は賦課されません。

次回は、課徴金を避けるまたは減額するための要件についてご説明します。

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著者

木川 和広 (Kazuhilo Kikawa)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所スペシャル・カウンセル
国際的な案件も含め、EC関連企業の法律問題を幅広く取り扱う。
(木川弁護士プロフィール)https://www.amt-law.com/professional/profile/KLK