2016年上半期、知っておきたいEC業界ワード7選(ECのミカタ編集長選出)

福島 れい

 7月、暑い季節がやってきました。2016年も半分が過ぎたところで、2016年上半期のEC業界を「主要キーワード」を軸に振り返ってみようと思います。

 先日、人気ニュースまとめ(https://goo.gl/nmv97v)としてお伝えしたように、ECのミカタでは楽天市場やAmazon、Yahoo!ショッピングなどモールの話題が人気を集めています。これらのモールに出店する店舗さんにとって、重要なニュースであることは言うまでもありません。それと同時に目を向けておきたいのが、最新トレンドです。数年前にトレンドとして挙がったものが、今となっては当たり前というものも多いのです。

 それでは早速、ECのミカタ編集長が選んだ、2016年上半期の注目ワード7選をご紹介します。

2016年上半期、注目ワードと言えば・・・?(編集長 石郷より)

注目ワード1:「AI」
・・・ 今年の3月、グーグルが開発する囲碁のAI「AlphaGo」が世界レベルのプロ碁士との戦いで4勝1敗で、圧勝したのは記憶に新しいです。AIはそのくらい今や有能。グーグルもその成り行きを着目していることからすれば、更なる進化していくでしょう。まさに、神秘的な世界なように思いますが、時代はすぐそこまで来ています。どうしても、人命にかかわる場面での活用では、まだまだ不安も残りますが、それこそECのような、プラスの価値を引き出すための材料として使われる分には、そうしたAIの活用は、非常に向いていて、むしろその中で、真価が発揮されるように思います。

 店舗なりが集めてきた数あるデータに基づき、お客様の好みのタイミングを把握し、好奇心を刺激するおもてなしも可能となれば、ものの売り方が変わります。KARTE、Ve、ZenClerk、FLIPDESKなど、お客様への応対の仕方が、リアルとなんら変わらなくなってきている印象があります。また、今まで、ネットなどで培ってきた一つ一つのデータが今まさに、こういった形で発揮される時が来ていると思います。

注目ワード2: 「接客手段」
・・・お客様と店舗をつなぐものが、ライトになって、一対一に近いコミュニケーションができるようになってきています。それもまた、今までネットではできなかったことですが、例えば、「チャモ」のようなチャットで、本当にささいな質問ができて、さくっと短いコメントで帰ってくると、いざものを買おうというときに、便利なんですよね。LINEのビジネスコネクトでも、堅苦しくなく、メッセージを発することができて、しかも、特定のお客様に対して、1対1でのやりとりも可能になるというわけです。お客様と店舗をつなぐものが、リアルに近いくらいの感覚になってきています。

 ちょっと面白かったのが、以前、僕がてるくにでんきさんと話をしていたときに、なんだか、それってネットの最初の頃に戻った感じねと話していたことがあります。以前はお客様も少なかったので、わりと細かなこともいちいち電話やメールを使っていたそうで、その回数を考えれば、ほぼ一緒にいるのではないかと錯覚するくらいだったと言います。しかも、自ら、販売する照明器具をお客様が見てみたいということで、ショールームまで用意してみてもらっていたという。キッカケはネットだが、そのやり取りの中心はほぼ、人対人のアナログ。おまけにショールームまで来てもらっているのだから、ほぼリアルと変わらないおもてなしをしていたと振り返っているのを見て、ものの売り買いの接客って根本は何も変わらないのかなって思いました。

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注目ワード3: 「モールのセールラッシュ」
・・・伝統的なのは、楽天のスーパーSALEで3ヶ月に一回くらいのペースでやっていたのですが、今年の3月には、そのスーパーSALEに加えて、ヤフーが年度末セール、AmazonがSpring Time Saleをそれと全く同じ日にやってきたことで、どこのモールも見てもセール一色だった時がありました。セールの効果って、やはり無視できないもので、このセール戦線に本格的に名乗りを上げてきたのが、ヤフーで昨年の「いい買い物の日」で、ショッピングで昨年同日比7倍の売れ行きと、ヤフオク!で平日最高取引高において、単日32億円を記録したことなどを契機に、その後のセールでも力の入りようは、かなりのものとなりました。どのモールでもかなりテレビCMを絡めた大掛かりなものをやるのは、かなりおなじみになった印象です。そして、まもなく、来週7/12は、Amazonが本、アメリカ、イギリス、スペイン、イタリア、ドイツ、フランス、カナダ、ベルギー、オーストリアの計10ヵ国で同時開催する「プライムデー」を開催するので、また賑々しくなるでしょう。

注目ワード4: 「ヤフー」
・・・ヤフーはここ最近、Eコマースに力を入れています。今までは広告などの印象が強いのですが、それだけではない事業を求めているのが、今の宮坂社長であり、その背景には、少なからずアリババが「独身の日」で1兆7000億円を達成したなどの情報が、関連会社だけに、入ってきていることもあげあられる。彼ら曰く、他のモールを食い合うという発想ではなく、日本におけるEC化率はもっと伸びるだろうとの考えから、今まで開拓しきれなかった層をどれだけ、自分たちのモールに引き込めるかを主眼に置いています。4月末に発表された、Eコマース国内流通総額は通期で初の1.5兆円を突破し、ショッピング商品数は2億に増加、国内最大の品揃えとなりました。

 実際、ショッピングの伸びというのは、どうなのかというと、2015年第一四半期比においては、その伸びが23.1%だったものの、その後、第二四半期比では、30.2%増、第三四半期比では、48.3%増と加速を続け、第四四半期比では、61.8%増です。このようなことは、ヤフーショッピングの歴史を見ても、10年くらいはなかった伸びだと宮坂社長は話していたのが、とても印象的でした。また、昨年にアスクルを子会社化したというのもYahoo!自体の価値を大きく向上させているように思われ、現に、ヤフー自体の売り上げに数字として、大きく貢献しています。しかし、先ごろ、僕が記事に書きましたが、やはりアスクルで培った流通力など長けている部分を、LOHACOなどの、サービスの質の部分でうまく消化していて、消費者たちの心をつかんでいることで、ヤフーが提供するECの幅とファンが広がっている印象もあります。

注目ワード5: 「再配達問題」
・・・ 再配達の問題は深刻であり、そこで印象的だったのは、ヤマト運輸です。フランスで郵便事業における実績をもつネオポスト傘下のネオポストシッピングと連携して、オープン型宅配ロッカーネットワークを構築し運用するための合弁会社「Packcity Japan株式会社(以下、Packcity Japan)」を設立しました。これにより、ヤマト運輸の荷物のみならず、ロッカーの列単位で、佐川急便や日本郵便など他社の”再配達”の荷物をも受け取ることができるオープン型ロッカー「PUDO station(Pick Up & Drop Off station)」の展開をし、今後、公共交通機関やコンビニ、スーパーマーケットや駐車場などへの設置を想定し、2022年までに約5000箇所以上への導入を目指すとしています。

 他にも、ヤマトは駅と組んで、ロッカーを設置することを発表していたりと、いろいろな部分で、再配達が生まれないようにするための企業努力があちらこちらに見られます。また、ヤフーの協力のもと、アスクルが運営する「LOHACO」は、8月から時間指定を、一部地域限定で、1時間からできるようにする、などの動きもあります。配送にまつわるお客様の利便性を向上させ、それにより、再配達を防ごうとする各社の動きは、今後もEC業界と無縁ではなく、注目です。

注目ワード6: 「フリマアプリの環境整備」
・・・ フリマアプリがさらに勢いを増していることで、出品者がより使いやすい環境が整いつつあります。例えば、ヤマトのらくらくメルカリ便の進化などにそれは見られ、サービスの一環で集荷に来てくれるなどすれば、今までより一層、フリマを使う機会は増えるでしょう。

メルカリ・ラクマ・フリルの相違点をこちらでまとめています。

注目ワード7: 「不正に対するネット業界の意識〜ネットでの商取引におけるお客様との信頼関係」
・・・ 最近、ネットも一般の小売と変わらないくらいの環境であり、リアル同様に、不正取引が増加しそうな気配です。それゆえ、かっこなどの不正対応の主張なども、非常に店の間でも関心が高いようです。

 売れればいいということだけで今までやっていたわけではないですが、今こそ、ネットでの商取引におけるお客様との信頼関係が問われているのだと思います。楽天がレビューへの傾聴施策をして、一つ一つのサービスをしっかり、お客様の納得のいくレベルにしていこうというのも、その流れに近いのではないかと思います。

不正取引に関するかっこのコラムはこちらからご覧ください。

2016年下半期は・・・?

 上記で紹介したキーワードは引き続き、EC業界の要となってくることでしょう。また、下半期が始まって早速、Amazonプライムデーが7月12日に開催されることが発表される等、各社が盛り上がりを見せています。

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記者プロフィール

福島 れい

ECのミカタ編集部に所属するバドミントンと和服、旅好きの記者、通称れーちゃん。ミニ特集「アパレルECの未来(https://goo.gl/uFvr2C)」等、これからEC業界がどんな風に発展していくのか。に注目しながら執筆しています。2017年の執筆テーマは、”私にしか書けない記事をタイムリーに”。

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