日本のアパレルECが海外より普及しない理由とは?

西村 勇哉

20929_thumbnail_virtusize_thumbnail.jpg Virtusize株式会社 代表取締役 上野 オラウソン・アンドレアス氏

アパレルECにおいて、消費者側はどうしてもサイズがわからないという課題を抱えてしまう。ブランドによってS、M、Lなど表記は同じでも、丈の長さ、裾の長さなど細かいところはかなり変わってくる。国内のアパレルEC化率も約11%とまだまだ低い。

しかし海外ではアパレル用品はECで購入する割合が最も多いという。顕著な例がイギリスだ。日本とEC市場の規模は大差ないが、アパレルのEC化率は20%を超えてくる。海外のアパレルECと日本のアパレルECの違い、そして日本の課題はどこにあるのか。

オンライン試着サービス、国内シェアNo1のVirtusize株式会社 代表取締役の上野 オラウソン・アンドレアス氏にお話を伺った。

日本と欧米 アパレルEC取り巻く環境の違いは

「まず日本と海外ではECの利用方法が全く異なります。より具体的にいうと、アジアと欧米ですね。経営戦略の面でも、各国の法律でも、です。欧米は非常にEC化率が高いですが、返品率も非常に高くなっています。欧米のアパレルECサイトはサイズや、原材料などの表記がほとんどありません。日本人からしたら非常に不思議に感じられる点だと思います。」

値段、サイズ、価格のみの簡易的な情報のみだ(next:https://www.next.co.uk/

確かに日本のECサイトに比べると一目瞭然だ。なぜこのようなサイト作りになっているのだろうか。

「欧米では返品がしやすい文化が根付いています。消費者の権利として法律で決められているのです。しかし、日本にはそれがありません。もちろん返品可能な店舗もありますが、返品可能期間が短い、セール商品は返品不可など制限が少し強くなっています。そのため欧米では返品前提で商品を購入する消費者が多く、店舗もそれを踏まえて商品企画を行なっています。そのためEC化率は高くとも利益率は欧米より、日本の方が高いと言えます。

しかし、サイト運営に時間をかける必要がほとんどない為、その分のリソースを商品開発やブランディング、デザイニングなど本来、事業者が行うべき業務に集中できるのは強みになっていると感じます。」

情報を持っている強みを活かしきれていない日本

日本のアパレルECサイトは様々な情報を持ち合わせている。そこは本来強みになり得るべきなのに、機能していない情報も多いと、アンドレアス氏は指摘する。

「日本のアパレルECサイトの情報の問題点は主に2つあると感じています。1つは、デザインデータです。商品写真はモデルを活用し、おしゃれに見せようといった工夫をしています。しかし、データの分析を行なっているEC企業は多くありません。データを有意義に利用できれば、よりレベルの高いレコメンド機能を活用することが可能になります。

また原材料などの素材データもまだまだ情報不足な点が多いと思います。実際に今のECサイトの素材データを確認し、購買する人は少ないと思います。綿やナイロン、ポリエステル、カシミヤなど様々な素材が使われている中でどの組み合わせだとどのくらい軽くなるか、保温性は高くなるか、着心地はどのようなものになるかイメージできる人は多くありません。もっとわかりやすく、情報提供することが今のアパレルEC店舗に求められていることです。」

確かに綿とポリエステルの割合がどのくらいなのか気にしながら服を着用する人は多くはないだろう。実際にユーザーが必要とする情報はより具体的でわかりやすい情報だ。

「先にも述べたとおり、日本は返品の文化がありません。その為、失敗したくないという思いは非常に強く、求める情報も細かいのですが、そのニーズに対してまだまだ情報整理が追いついていないと言わざるを得ません。」とアンドレアス氏。

しかし、これは逆に日本のアパレルECにとって大きなチャンスだという。

「日本のECサイトはサイズはもちろん、原材料や画像データ、商品の特徴など商品情報をすでに多く持っています。その情報を有効に使うだけで離脱率は大幅に下がると思っています。我々のサービスも情報がないと始まらないサービスなので日本市場とは非常に相性が良いと感じています。その為、スウェーデンの本社を日本に移し、今は事業を展開しています。」

Virtusizeが提供するサービスは、ユーザーがすでに持っている服と、アパレルECサイトの服のサイズを比較することでより具体的にそで丈などがわかるようになっている。最近では財布のサイズを比較するサービスもリリースし、事業の幅を広げている。今後の事業拡張のためにも素材、画像、デザインの情報は欠かせないという。

「誤解されがちなのですが、実店舗を淘汰し、EC化率を上げていくといった考え方は弊社にはありません。ユーザーのニーズには、服は欲しいけど実店舗に行く機会はなかなかない、わざわざ行くのも面倒だ、という考えからECサイトで買いたいというニーズがあると思います。そこで使える情報がないとECでも買わない、そして実店舗にも買いに行かない。結局今ある衣服で回してしまう。そのような潜在顧客がカゴ落ちしているのが現状です。この機会損失を防ぐ為には、弊社が使える情報を整理し、店舗と消費者を上手く繋げることがとても重要だと考えています。」

実際、筆者も冬服を購入したいと考えており、ECでの購入を考えていたがサイズ、質感、防寒性がどの程度のものかイメージしにくく、また実店舗に足を運ぶほどの購入意欲は無かったため、未だ渋っている。このような、今までであればカゴ落ちしてしまうような潜在顧客を購買につなげるという意味では事業者・消費者両方の視点からも、オンライン試着サービスは非常に魅力的なサービスのように思える。

日本のアパレルECが強くなるためにエンジニアが必要だ

最後に、様々なアパレル企業を見てきたオラウソン氏は日本のアパレルECはもっと自社内でもシステムを動かせるようになる必要があると語った。

「海外のサイトに比べると日本のアパレル企業は自社内でECサイトを動かせる人は少ないと感じています。大きな枠組みだけであれば外注でも構わないかもしれませんが、最終的には自社内で動かせるような柔軟性を残す必要があると思います。それが情報の整理にもつながってくると思います。確かにエンジニアの育成は少しハードルのように感じてしまうかもしれませんが、中長期的な目線で事業を行うことを考えているのであれば将来間違いなく大きな財産になります。

今やアパレルECは店舗にとっても重要な事業の1つです。売上の20〜30%がEC流入になりつつあるのであれば立派なコア事業ですよね。そしてその数値はさらに伸びていかなければならないと考えています。イギリスはどんどん働き方、経営戦略も変えていっています。日本もEC事業へ正しい投資を行う必要はあると感じています。」

根本的に文化・法律が異なるため全てを参考にすることはできないが、海外の良いところを取り入れ、日本の強みを活かすことで日本のアパレルECはまだまだ成長できると感じているとオラウソン氏。豊富な情報をいかに正しく、綺麗に見せることができるかが今後の日本アパレルECの行方を占うことになるのかもしれない。

記者プロフィール

西村 勇哉

メディア編集部所属
見た目はヒョロイのに7歳から空手を習っています。
社会人になってもちょこちょこ練習しています。
他にも水泳、サッカー、野球、弓道の経験有り。
伝統産業や地方創生に興味があり、ECのミカタの一員として何かしたいと思っています。
好きなものは乃木坂46(箱推し)。好きな曲は「ひと夏の長さより」

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