中国向け越境ECはD2C時代へ。LaunchCartとBaidu Japanがパートナーシップを締結し、独自ドメインサイトの支援
数年前から、中国への越境EC進出が注目を集めている。しかし、まだ成功事例が少なく、赤字のまま撤退せざるを得ない企業が多いのも現状だ。
そんななか、アジア特化のクラウドECカートシステム「LaunchCart」を提供するスターフィールド株式会社と、中国進出に向けたWebマーケティング支援事業を展開するバイドゥ株式会社がパートナーシップを締結した。
協業することにより、中国への越境ECにおいてどのような影響を与えるのだろうか? そもそも、中国進出が難しい理由とは。
話を伺ったのは、スターフィールド株式会社 代表取締役/CEOの星野翔太氏、セールスチームリーダーの橋本宏基氏、ディレクターの井出和真氏、そしてバイドゥ株式会社 百度事業部 ディレクターの國井雅史氏。中国進出について紐解くと、越境ECもD2C時代に突入し始めていることが見えてきた。
スターフィールドとは
アジアでの越境・現地ECに特化した、クラウドECカートシステム「LaunchCart(ランチカート)」を提供。単品リピート通販と総合通販のどちらも対応可能だ。デザインや言語、通貨、決済、物流など、各国にローカライズされたシステムが標準装備されている。特に中華圏での実績が多く、日本のカートとして中国3大決済に初めて対応した。SMS/MMSの海外送信も可能。中国向け越境ECではサーバが問題になるケースが多いが、同社は香港サーバを標準で選択できる。それにより、グレートファイアウォールや商用ICPライセンス取得の問題を回避できる。
Baidu Japanのサービスについて
日本企業に対し、中国進出に向けたWebマーケティング支援事業を展開。Webマーケティングソリューションは大きく分けて5つ。中国マーケットのトレンドを把握する市場調査、ユーザーデータを管理するDMP、リスティング広告やディスプレイ広告などのさまざまなプロモーション、中国語Webサイトの解析、中国向けサイト診断レポートだ。
黒字化できている企業はごく一部。中国進出におけるモール出店の現状
國井(Baidu Japan):中国越境ECにおいて、現地モールに出店するのはハードルが高いといえます。なぜなら、出店に当たり審査があったり、招待制を取っているモールもあります。もちろん様々なランニングコストも発生します。現地モールへの出店を希望する日本企業のうち、これらの条件をクリアできるのは数パーセントほどでしょう。
モールに出店できたとしても、黒字化できている日本企業は一握りです。出店したら物が売れるわけではありません。中国におけるブランドや製品の認知度が低い場合、広告を出さないとそもそも消費者の目に触れることもありません。モール店舗に誘導するためには、プロモーション費が必要になります。
モールは、ただでさえアカウント開設費や運用費などのランニングコストがかかります。年間のランニングコストは、1,000万円から2,000万円ほど。そのうえ、大きなプロモーション費を確保するとなると、中国越境EC向けに潤沢な予算を確保できる企業でなければなりません。
また、「審査に通過しにくい」「大きなランニングコストがかかる」「認知プロモーションが必要」以外にも、モール出店のハードルはあります。それは「外部流入のトラフィック分析ができない」こと。例えば、ECなどの獲得系プロモーションにおいてリスティング広告は王道的な手法なのですが、モールへ誘導した場合、どのキーワードで商品が売れたのか分析することができず、プロモーションのPDCAを回すことができません。どの媒体からの流入であるかを開示しないモールもあり、プロモーションの運用効率を改善することができず、赤字脱却ができないケースも多いです。
そのため、中国越境ECを始めたいと思っているなら、独自ドメインサイトを作ることをおすすめしています。
橋本(スターフィールド):独自ドメインサイトのメリットは、細かいトラフィック分析が可能であることです。「プロモーションをかけたことによる結果」がわかるため、PDCAを回しながら、プロモーションの効果を最適化できます。
また、プロモーションをかけて独自ドメインサイトに来た顧客は、“自社”の顧客であることもメリットです。モールの場合、プロモーションをかけて誘導しても、モールの看板が付いた状態になってしまい、ブランド認知が半減してしまいます。一方、独自ドメインサイトという本店で購入してもらうことにより、ブランド認知も高められ、リピーター化できる可能性も高くなるのです。
LaunchCartは、すでにモールに出店していて利益が伸びない大企業だけではなく、初めて中国進出する中小企業にも導入いただいています。
「モールに出店しないと、フルフィルメントの負担が大きいのでは?」という声も挙がるでしょう。確かに、独自ドメインサイトの場合、フルフィルメントを自社でやらなければなりません。しかし「LaunchCart」では、受注に関する機能を充実させ、物流システムとも連携が可能です。そのため、比較的手間をかけることなく日々運営することが可能です。
D2Cブランドが注目を浴び、独自ドメインサイトが選ばれるように
星野(スターフィールド):LaunchCartを提供するなかで、中国進出における独自ドメインサイトのニーズが高まっているのを感じますね。爆買いブームがあった2016年頃に「中国に越境ECすれば売れるのではないか」と考えて出店する方が増えたのですが、当時はあまり売れずに撤退するパターンが多くありました。
しかし、ここ1年ほどで再び流れが来ていまして。数年間かけて実証実験をして「中国はいけるかもしれない」と判断した企業が、予算を取って担当者も付け、本腰入れて中国進出していくパターンが増えています。
正直、以前は「独自ドメインサイトで売れるわけがない」と言われてきました。しかし今は、大手化粧品メーカーなどを筆頭に、独自ドメインサイトで中国に進出していく企業が多くなっています。その理由は、独自ドメインサイトは自社の資産になるし、ブランディングもできると気づいたからでしょう。
橋本(スターフィールド):日本ではD2Cブランドが増え、顧客と長期的な関係を築き、ファン化する動きが活発です。
「ブランドの世界観を伝え、CRMを強化し、顧客との関係性を強化したい」といった企業は、独自ドメインサイトとの相性がいい。というよりも、モールだと一度購入した顧客との接点が取れず、“モールのなかの一店舗”と認識されてブランド観も伝えられない。そのため、D2Cブランドが注目される現在において、独自ドメインサイトが選ばれるのは必然的ともいえるでしょう。
例えば、とある美容家電メーカーは、中国に展開している独自ドメインサイトで延長保証を追加しました。新規顧客に購入してもらって終わり、ではなく、継続的に関係を築いてファン化するためです。そうすることで、今後も購入してもらえる可能性が高まります。
國井(Baidu Japan):中国人消費者のニーズが高い日本製品は、化粧品やベビー用品が挙げられます。
日本製品は、クオリティが高いうえに値段が安く、安心安全です。一方、中国は物価が高く、中国製品のほうが値段が高いこともしばしばあります。そのため、化粧品やベビー用品をはじめとした日本製品が選ばれやすいのです。
化粧品やベビー用品が人気を集めるのには、理由があります。中国で消費が盛んでインターネット通販をよく使うのが、1980年代に生まれた世代です。
この世代は、鄧小平が市場経済を導入した世代で、一人っ子政策が始まったタイミングの世代でもあります。親族の期待を一身で背負いお金をたくさん投資されて育った人たちで、前世代とは金銭感覚が異なります。そのうえ、大学生の頃にインターネットが普及し始めたため、インターネットで物を買うことに抵抗がない。こうした今の中国の消費を牽引している世代が、現在のライフステージで求めるものが、化粧品やベビー用品なのです。
このように背景を紐解いていくことで、中国進出するのに相性がいい商材が読み取れます。日本では販売していない中国向け製品を開発し、越境ECにチャレンジする企業もけっこう多いですね。
スターフィールドとBaidu Japanがパートナーシップを締結。何が実現できるのか
星野(スターフィールド):今回、Baidu Japan様とスターフィールドでパートナーシップを組むことになりました。それにより、2社で自社ドメインサイトでの中国越境ECの展開を支援していきます。
中国越境EC進出は、まだ成功事例が少ないのが現状です。そこで、2社がパートナーシップを組むことで知見を増やし、成功パターンを確立させていきたいと思っています。
國井(Baidu Japan):中国越境EC進出を考えている企業に対して、しっかりとお勧めできるECカートシステムを探していたとき、LaunchCartに出会いました。2社が協業すれば「一部の企業しかモールに出店できない。出店しても黒字化が困難」という状況に、活路を見出せるのではないか、と。そこで、私たちからスターフィールド様に声をかけさせて頂きました。
LaunchCartで中国語(簡体字)のテストサイトを作成し、実際に中国本土向けに商品を販売しました。「LaunchCartのシステムがしっかり機能するか」「サイトがスムーズに表示されるか」「決済が問題なくできるか」「リスティング広告の誘導で実際に商品が売れるか」など、中国本土向けにLaunchCartを導入し商品販売するまでの全フローを実証実験をしました。結果、リスティング広告で商品購入までを確認でき、広告パフォーマンスの確認もできました。全体のフィージビリティ確認ができたため、本格的に、スターフィールド様と連携し、独自ドメインでの越境ECの推進をすることに決めました。
井出(スターフィールド):具体的には、サイト制作に関わる部分はスターフィールドが提供し、販売におけるマーケティングの部分はBaidu Japan様がサポートしていく座組を考えています。
サイト制作については、サイトを動かすシステムはもちろん、デザインや翻訳といった見た目のパーツも含み、越境ECサイトという箱をまるっと提供するイメージです。そして、Baidu Japan様では、マーケティング調査やプロモーション設計、サイト解析、送客といったところのサービスを提供していきます。
2社がパートナーシップを組むことで、中国進出に対する参入障壁を下げ、多くの企業の“成功への道”を作り上げていきたいですね。
橋本(スターフィールド):D2Cブランドが注目を集める現在、独自ドメインサイトでの中国進出は、今後もさらに加速していくと思います。その流れのなか、成功パターンを仕組み化して、勝算がある状態でチャレンジしていけるのは、新しい価値になるでしょう。
独自ドメインサイトで、モールではできなかった採算の合うプロモーションをし、利幅を出すことで、中国マーケット内において大きな成長を遂げられるはずです。
國井(Baidu Japan):越境ECなど獲得目的のプロモーションにはリスティング広告が非常に有効です。なぜならユーザーが「この商品が欲しい」と能動的に調べたとき、ニーズにマッチした広告が検索結果に出るため、購入までのタイムラグが短くなり、コンバージョン率が高くなります。バナー広告のターゲティングとは性質が大きく異なります。リスティング広告は古典的な手法と思われるかもしれませんが、裏を返すと多くの企業様が長年採用し続けている手法とも言えます。効果という裏付けがなければ継続しないですね。
私は、中国進出×独自ドメインサイトは、大手企業だけでなく、中小企業もサクセスストーリーを描ける、チャンスがある手法だと思っています。日本には、まだ中国人に知られていない、良い製品がたくさんあります。より多くの企業様が中国向けに王道で販売できる機会を提供していきたいと思っています。
中国進出をしたい企業、または中国進出をしてるけれど伸び悩んでいる企業様には、ぜひ相談していただきたいですね。