withコロナの時代、事業に革新を起こすフリーランス

ECのミカタ編集部

新型コロナウイルスの影響でEC業界にかかわらず社会全体に大きな変化が生じた。会社が倒産した、解雇されたといった声もメディアを通して聞こえてくる。

実際に雇用する側も大きな悩みを持つのではないか。社員が増えれば人件費も上がり、人が増えればオフィス面積も広くする必要が出てくる。しかし、今回の新型コロナウイルスで実感した人も多いのではないか。働き方はどんどん変わらなくてはいけないと。

そんな課題が顕在化した今、フリーランスに業務を依頼する事業者も増えてきている。まだまだしっかりと世に伝わっていないフリーランスについて、ランサーズの担当者に伺った。

今、フリーランスが増えている

フリーランスの人口は、現在、労働人口全体の15〜16%ほどを占めている。そしてランサーズによるフリーランスの定義とは、本業以外にも収入源が複数ある人のことを指すそうだ。その背景として、働く人の価値観の変化と、産業構造の変化があるという。

根岸:「高度経済成長期ごろまでは、ひとつの会社に勤めて、その会社で出世して収入が上がることが幸せとされていました。しかしバブル崩壊以降、大手企業に入りさえすれば安泰ということがなくなり、『自分にあった生き方』を考える人が増えました。インターネットの普及により情報も手に入りやすくなった。そのなかで、画一的な価値観がどんどん多様な価値観に変わっていったのです。

産業寿命が短くなっていることも、フリーランスの増加に影響しています。昔はひとつのビジネスが安定期に入れば、その企業も個人のスキルも少なくとも40~50年はもっていました。しかし今、継続30年以上の企業の倒産率が上がっています。これまで順風満々だった企業が、テクノロジーの進化についていけず倒産することが起こっている。そうすると、個人は会社に依存できないので、自分でどうにかできるようにならなければと考えるようになります。

個人の働き方が変わっていくと、企業も、旧来のようにフルタイムしか受け入れないという姿勢では、人が集まらず会社が立ち行かなくなってしまいます。柔軟な働き方を受け入れる体制がないと持たなくなっているんです。」

さらにここに来て、そういった変化を加速させることになったのが、新型コロナウイルス感染症だ。

根岸:「以前から、デジタルネイティブ世代が組織の意思決定をする立場になったら、オンラインをベースにしたビジネスが当たり前になるだろうと思っていました。今、それが急激に進んでいます。前提がまったく変わって、経営手法を思いきり変えないと企業が続かないという状況が、突然来た感じです。今までは対面をベースにどこをオンラインにするかという話だったのが、オンラインがベースで対面がおまけという形に変えないといけなくなってしまった。働き方や価値観の進化が加速するのではないかと見ています。」

変化に強いスマート経営

今、まさに起きているような大きな変化に対応できる流動的な経営手法として、ランサーズは、「スマート経営」というものを広げていこうとしている。4月には、スマート経営の導入支援サービスを発表した。

スマート経営の基本となるのが、フリーランス人材を活用して企業運営を行うことだ。ランサーズのスマート経営導入支援サービスでは、企業運営の考え方をどう変化させ、実際の運営をどう行うのかというところを支援する。

根岸:「ランサーズ社がスマート経営を推進するのには、3つのポイントがあります。1つ目が、『仲間集めが簡単』なことです。

従来のように、専業・フルタイム・出社などの条件での社内に人材を雇用するとなると、たとえば東京の会社なら、首都圏在住の転職検討中の人から、専業で働いてくれるスキルのある人を探すことになり、人材の幅が狭まります。人材を育成するにしても、教える人が必要ですし、時間もかかります。一方、どこに住んでいても兼業でも構わない、スキルと時間があればフリーランスでオンラインOKというにすれば、人材の幅はぐっと広がり、仲間が見つかる確率が高まります。結果的に事業スピードも上がるはずです。

ポイントの二つ目は、『イノベーションの力が上がる』ことです。

イノベーションというのは、今や経営に必須の要素です。産業寿命が短くなるなかでは、今は軌道に乗っているビジネスも、3年後はどうなるか分かりません。ひとつの事業に頼り切るわけにはいかなくなっていて、新しいことをどんどん増やしていく必要があります。その際、外部の視点があることで発想が豊かになる。特に、フリーランスの人のように、いろいろな経験を持ち、いろいろな価値観で生きている人たちを仲間にすることで、社内からは浮かばないアイデアが出てくることがあります。常に新しいアイデアが生まれる環境を作る要因にもなるのです。

3つ目のポイントは、守りの側面で『リスクコントロールがしやすくなる』ということだ。

人を雇用する固定費はリスクにもなります。特にECは繁忙期と閑散期の波があるので、繁忙期に合わせて人を雇用するとそれ以外の時期には過剰人員になり、閑散期に合わせて人を雇用すると繁忙期の機械損失を生じます。そこにフリーランス人材を活用することで、繁忙期だけ都度プロジェクトチームを立てるということができるようになります。

事業の変動に対してリスクヘッジをしながら進めていけるというのは、経営を守るために大きいことです。結果的に、コストの最適化にもなります。」

フリーランス人材をEC運営にどう活用するのか

ランサーズはEC企業でも広く活用されている。ただ、EC運営といっても、商品開発から制作、マーケティング、受注・出荷など日々の運営まで幅広い業務がある。では、ランサーズにはどのような人材がいて、どうEC運営に携わっているのだろうか。

根岸:「対応している業務の種類は、雇用形態が異なるだけで、社内の人材もフリーランスの人材も変わりません。フリーランスだからできないということはありません。唯一、フリーランスにしないほうが良いのは社長くらいでしょうか(笑)。

フリーランスの特徴としては、企業の雇用では条件が合わないことだと思います。たとえば、十分なスキルと経験を持っているけれども、出産や子育てでフルタイムの出社が難しい方などですね。毎日8時間、渋谷の会社に出社することはできないけれど、在宅で6時間なら毎日働けますとか。

また、ランサーズに登録しているユーザーさんに多いのが、時間や、場所、雇用に縛られずに自分らしく生きたいという方です。そのため、できない仕事はあまりないけれど、時間や場所に制約がかかる仕事はあまりニーズがないと思います」。

さらに、EC企業だけでなく、EC企業を支援するサービスを提供するベンダーが、EC企業のサポートにフリーランス人材を活用する例もあるという。

根岸:「EC支援ツールは多機能化が進んでおり、導入したものの運用しきれないということが増えています。そこで、専門スキルをもったフリーランス人材をEC企業に紹介したり、人材育成することをベンダーさんと一緒に行っています。フリーランス人材であれば、プロジェクト単位でご紹介できるので、トータルのコストを抑えることにもなります。

流れとしては、たとえばバナー制作や広告運用など、やることが決まっていることから発注してみて、良い人材が現れたら上流工程の企画まで発注するという進め方が良いと思います。アウトプットが決まっていない業務は評価がしにくいため、評価しやすい案件から依頼して、徐々に拡大することで、スマート経営をうまくスタートできるはずです」。

EC運営におけるランサーズ活用事例

ECにおけるランサーズの活用として、実際にどのような事例があるのだろうか。

たとえば、あるアパレルブランドでは新規にECサイトを立ち上げ、事業を大きくしていくために、まずは一人アルバイトを雇い、「ランサーズハッカー」としてランサーズでフリーランス人材をハンドリングする役目を与えたという。

根岸:「このアパレルブランドさんでは、ランサーズハッカーがランサーズ経由で人材を調整してディレクションをする形で、最小の雇用で固定費を抑えながら、施策のトライアンドエラーを繰り返し、流動的に施策を行うことで急速に事業を成長させました。今では新宿の一等地にオフィスを構えるほどになっています。

この、ディレクション機能だけ置いて他に人材は雇用しないという形では、経営のリスクヘッジをしながら攻めることができます。リスクコントロール力が高いのでスピーディーなチャレンジがしやすい形といえます」。

また、スタートアップや小規模の事業者だけでなく、大手企業の案件についても、ランサーズで対応可能だ。たとえば、人気ジーンズブランド「EDWIN」から、「JERSEYS」というジャージ素材の新しいコンセプトのデニムの販促にあたり、新しい売り方をしたいとランサーズに相談があったこともあった。

薄井:「弊社からアイデアを出して採用されたのが、JERSEYSをはいた100人のフリーランスの写真を集めたLPの制作です。新しいコンセプトの商品ということで、新しい働き方をしている人たちが、実際に仕事ではいている写真がほしいと考えました。ランサーズを使えば、写真に登場するフリーランスの人たちも、LPの制作も手配できます。

この案件では、クリエイティブの質とスピード感を高く評価していただきました。

LP制作では、最終的にフリーランスのクリエイターがエドウィンに半常駐する形で、制作を支援しました。また、一般的な制作では、打ち合わせと日程調整で制作に着手するまでに時間がかかりますが、ランサーズはリモートが前提なので、ヒアリングシートなどを活用して制作着手までの時間を短縮できます。さらに、100万人以上のフリーランスの登録があるので、複数の人に同時に仕事を依頼することもでき、制作期間を短縮できます」。

このように、フリーランスを活用することで、企業はリスクヘッジをしながらスピーディーにスキルを持っている人材を集めることができる。その際にポイントとなるのが、プロジェクトマネージャーを立て、企業はマネージャーとだけやり取りをすればプロジェクトが進む体制にすることだ。個々のフリーランスとやり取りが発生すると、逆にプロジェクト管理が煩雑になってしまう。

また、フリーランスとして働く人にとっても、ランサーズを利用することで、単独では受けることの難しい大きな案件にも携われるというメリットがある。

根岸:「金額の大きい案件というのは、業務量が多かったり、複数のスキルが必要だったりして、なかなか単独で受けることは難しいものです。ランサーズを活用することで、そういった案件を受けるチャンスがあります。

そしてランサーズを通じてフリーランスを活用したさまざまな事例があるなかで、特に相性が良いのは、新規事業です。

結果は分からないプロジェクトへの挑戦が必要なときに、既存事業から人を回すと既存事業のほうがぐらついてしまうので、フリーランスのチームを組成することはおすすめです。新規事業の安定が見えてきたら、マネージャーは社内に雇って、後はフリーランスチームで継続すると良いのではないかと考えています。」

クオリティの担保と取引トラブルの予防

フリーランスを活用することで企業にも個人にも大きな可能性が開けることが分かってきた。一方で、ランサーズのサービスやフリーランスを利用する際に抱かれがちな懸念点についても、考えてみたい。

まず、ランサーズで発注すると「安くなる」というイメージがあるかもしれない。これはある面で正しいが、一部で批判されることがあるような、フリーランスの労働力を「買い叩いている」わけではないという。

根岸:「スキルへの対価は、企業に発注する場合もランサーズでフリーランスの個人に発注する場合も変わりません。フリーランスだから質が落ちるということもありません。

ただ、企業するより もフリーランスに発注したほうが安くなるのは事実です。なぜなら、企業の運営には、オフィス賃料やスタッフの福利厚生費、諸々の経費が大きくかかり、これらを料金に乗せているためです。フリーランスの場合、経費や福利厚生費はほとんどかからず、料金はほぼスキルへの対価だけで済むので、そういう意味で安くなります」。

また、フリーランスへの発注は個人への発注であるため、取引トラブルが心配だという声を聞くこともある。しかし、取引トラブルを防ぐという点では、対企業でも対個人でも気をつけるべき点は同じだという。ただ、対個人になると、企業間取引では当然行う契約の記録を残すということが疎かになる場合があり、これがトラブルの原因になることがあるそうだ。

根岸:「企業間取引では、業務委託契約や秘密保持契約の書類を交わすところを、対個人ではなぜか省かれて、口頭のみで済まされることがあります。書類までいかなくても、業務内容や料金、納期などを、せめてメッセージなどで文字として、双方が記録しておくことが重要です。そうすれば、掛け違いがあってもそこに立ち返ることができ、それほど大きなトラブルにはなりません」。

誰もが自分らしく働ける社会に向けての貢献

新型コロナウイルスの影響で社会の在り方は否応なしに変化しつつある。そのなかで、フリーランス人材の活用は今後も進んでいきそうだ。

「ランサーズ=フリーランス」というイメージを抱かれがちだが、ランサーズ社としては、ただフリーランス人材を増やせば良いとは考えていない。

根岸:「ランサーズでは、『誰もが自分らしく働ける社会を作る』というビジョンを掲げています。社会には、会社員が向いている人もいれば、フリーランスが向いている人もいて、全員がフリーランスになれば良いとは微塵も思っていません。

ただ、今の社会では、正社員が一番安心という謎の先入観があります。その状態だと、勇気がある人や必要に迫られた人でないとフリーランスを選択できない。そうではなくて、選択肢の一つとして普通にフリーランスを選べる状態を作りたい。また今後、パラレルワークが進み、副業をする人も増えると思います。ランサーズを活用することで、働き方の選択肢を広げることを目指しています」。

そして企業に対しても、フリーランスを活用した「スマート経営」を提案することで、可能性を広げていきたいという。

根岸:「スマート経営を、未来型の経営スタイルではなく普通のものにしていきたいと思っています。新型コロナウイルスの影響を大きく受けている居間、守りと攻めの両立について悩んでいる経営者さんがたくさんいらっしゃいます。スマート経営は、そこに対して一個の光になるのではないかと考えています。今後、ランサーズ流のwithコロナの社会での貢献の仕方として、スマート経営の支援は、より注力していきたいところです」。


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