過激なYouTube広告は行政処分対象!弁護士事務所を突撃取材。
新型コロナウィルスの影響により、自宅で過ごす時間が増えたことによりYouTubeなどの動画を鑑賞する時間が増えています。YouTubeを見たことがある方なら動画視聴前の動画広告を見たことがあるのではないでしょうか。しかし、最近になって商品の効果や効能などを明らかに逸脱しているような広告も多く配信されているように感じています。
そこで今回は、弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所 弁護士 成眞海(せい しんかい)氏に過剰な表現を使った広告の危険性についてお伺いしました。
法律観点で見るYoutube動画広告の危険性
小林:こんにちはECのミカタの小林と申します。本日はYouTube広告の中でも、最近増えてきた美容健康関連商品の動画広告についてお話を聞ければと思います。
成氏:確かに、YouTubeの動画広告では、漫画ストーリーでサプリメントや健康食品の効果効能を伝える広告が増えてきましたね。
小林:YouTubeの広告にも種類がいくつかありますが、このOOOを飲み続けると痩せやすい体系になる。とか、OOOを使い続ければ体毛が生えなくなる。といった、従来のECサイトやランディングページでは規制されている過剰な表現を使っていると感じるのはインストリーム広告(以下、YouTube広告)と呼ばれるスキップ可能な動画広告です。
実際そういったYouTube広告は問題にならないのでしょうか?
成氏:私が見てきて中では、そういったYouTube広告の内容は、その多くが法律に違反していると考えられます。
YouTube広告であろうが広告には変わりないので、他の広告と同じように薬機法や景品表示法、特定商取引法といった法律に違反していないかが問題になります。
薬機法は医薬品や化粧品、薬用化粧品などについて定められた法律です。薬機法では、健康食品が医薬品のような効能効果を広告したり、化粧品や薬用化粧品が、本来認められているもの以外の効能効果を広告したりすることを禁止しています。この規制は、広告である限り、広告の主体が誰であるかに関係なく適用されます。
一方で、難しいのが景品表示法や特定商取引法です。これらの法律は、商品を販売している事業者を規制するものです。そのため、YouTubeの動画広告の主体が誰なのかということが問題になります。
販売事業者が自らYouTubeの動画広告を作成して流していれば、もちろん規制の対象になりますが、アフィリエイターのような第三者が広告の主体であれば、規制の対象にならないということになります。
もっとも、アフィリエイターのような第三者が広告を流している場合であっても、広告内容の作成に販売事業者自身が関わっているというような場合には、販売事業者が景品表示法や特定商取引法上の責任を負う可能性は十分にあります。
その上で、景品表示法や特定商取引法では、優良誤認表示や有利誤認表示というものが禁止されています。
有利誤認表示とは、商品・サービスの価格や販売条件について実際より有利であると偽ることです。たとえば、本当は限定ではないのに「限定〇〇個販売」「限定〇〇時間販売」と表示することなどが当てはまります。
優良誤認表示は、商品・サービスの品質や規格について実際より優れていると偽ることです。たとえば、実際は効果がないのに「飲むだけで痩せる」などと表示することで、優良誤認の判断は宣伝内容に合理的な根拠となる証拠があるかが重要になります。
小林:なるほど。そういった事でしたら動画の内容は、ほとんど優良誤認表示や有利誤認表示に当てはまりそうですね。
どうしてNGなのか 有利誤認表示の模範例
小林:YouTube広告のコンバージョンポイントとして、半額や500円で初回お試し購入という事が多いと思いますが、実はその価格は定期購入のみで消費者が勘違いしたまま定期締約するケースが多くあると聞きます。
成氏:おっしゃる通りで、定期購入に関してはトラブルが多く、平成28年に特商法が改正され平成29年に施行されていて、簡潔に説明すると「最終の購入画面で定期購入の具体的内容を記載する義務」が加わりました。
改正前までは初回500円であれば、最終の購入画面に500円の初回購入金額のみ表示しているということが多くありました。しかしそれでは、消費者が定期購入しているのか分からないので、改正後は、どれくらいの頻度で商品が届くのか、最終購入画面で初回の500円、2回目はOOO円、購入しなければならない回数が決まっているのであれば全部でOOO円といったように、定期購入の具体的内容を記載が義務付けられるようになりました。
こちらに順守しているのであれば問題ありませんが、初回分の金額のみ表示し定期購入を確定させるやり方は、現在では行政処分対象になります。
小林:なるほど。返金保証を謳っている動画効果はいかがでしょうか?
成氏:返金制度の仕組み自体は問題ありませんよ。ただ、一般的に返金保証には何らかの条件があるはずなので、その条件を伝えず、まるで無条件で返金ができるという誤認を誘発させれば有利誤認表示という扱いになりますね。
小林:動画の最後に、この動画を見ている人だけとか、この金額で販売するのは残りOO時間といった訴求もYouTube広告で見ましたが、いかがでしょうか?
成氏:本当に時間の制限をつけて販売している場合、要はきちんとしたタイムセールであれば問題ないです。
しかし、何回アクセスしても同じページがでて、アクセスする度に時間のカウントが最初からになる様なランニングページは実際時間の限定が無いので優良誤認表示に当てはまります。
他にもケースバイケースになりますが、週や1ヶ月に1度行っている定期的なセールであるにも関わらず「今だけ」や「この期間限定」だけという訴求をしていると有利誤認表示の扱いになったりします。
小林:他にも、こういった違反例はありますか?
成氏:最近の事例として「1日たったOO円」と、あたかも商品の1日当たりの購入価格が十数円であるかのように表示していた広告に対して、措置命令が出されたものがあります。
これは初回購入価格を基に計算された値で、2回目以降は1日当たりの価格が全く異なるので、有利誤認表示と判断されたのです。
行政処分を受けた場合の措置
小林:そもそも、なぜこういった広告が流れるのでしょうか?
成氏:先程お話した内容と重なりますが、アフェリエイトの様な第三者による広告であれば広告主の認識なく配信している可能性があります。ASP(アフィリエイトサービスプロバイダー)もある程度管理をしていると思いますが、管理しきれず薬機法や景品表示法に違反する広告が配信されてしまうのかも知れません。
現状はYouTubeの動画広告から行政処分を受けた事例はありませんが、販売事業者が関与しているようなことがあれば、今後行政処分が出される可能性もあると思います。
小林:過去にも行政処分を受けて莫大な金額を払うことになったEC事業者もいますが、行政処分を受けて支払いが命じられる金額はどの様に計算されているのでしょうか?
成氏:それは、景品表示法に基づく課徴金という制度によって計算されています。景品表示法に違反する優良誤認表示あるいは有利誤認表示が消費者庁の調査によって認められた場合、措置命令という行政処分を受けることになります。その行政処分を受けると優良誤認表示あるいは有利誤認表示を行っていた期間の売上額の3%が課徴金となります。この金額が行政処分を受けて命じられる支払い金額になります。
なので、そういった形で売り上げた金額が多いほど納付する課徴金の金額は大きくなります。
正しい広告のあり方
小林:結局、EC事業者がYouTube広告で正しい訴求を行うにはどうすれば良いのしょうか?
成氏:とてもシンプルな話で、消費者に対して誤解させる内容を発信しなければ良いだけです。
細かい話としては、化粧品に分類される商品であれば、医薬品や医薬部外品で認められる効果・効能を記載しない。健康食品であってもその効果を逸脱した内容を記載しないなど、きちんと自社の商品に許されている表記内容を理解していれば起こりえない話だと思っています。
新型コロナウィルスの影響もあり、利用者が増えている業界だからこそ、消費者が安心してECを利用でき、事業者も堂々と商売ができるよう良き相談相手として私たちも頑張っていければと思います。