【第2回】スマホサイトで売上を上げる3つのポイント
水上 浩一です。
前回は「スマホサイトで売上を上げる3つのポイント」として「アクセス数」をいかに上げるか?という内容を説明しました。
今回はスマホサイトで「転換率(CVR)」と「客単価」を上げる施策について検討していきたいと思います。
■転換率(CVR)を上げる
モールではサーチからの流入が多いのであまり重視されていないトップページですが、自社ECサイトにおいてはトップページは非常に重要です。
特にスマホサイトにおいては、SEOの観点からもトップページは重要視されていますが、実は転換率(CVR)の観点からも非常に重要です。
以前の記事で「元々大きな売上だったファッションジャンルのショップさんが、11月12月と連続で月商ギネスを更新され昨年対比142%という数字をたたき出すことに成功しました。」
という内容を書かせていただきましたが、この成果を上げた要因が実はスマホのトップページと下層ページの改修が大きな成果を上げました。
アドバイスした内容は大きく3つあります。
1)商品を選定するまでのタップ数をできるだけ少なくする
2)商品ページの情報量の調整
3)かご落ち対策(特に決済方法)
それぞれ説明させていただきます。
1)商品を選定するまでのタップ数をできるだけ少なくする
ECにおけるスマホサイトはタップ数が多くなればなるほど転換率が落ちます。
まあこれは当然の話でPCサイトにおいても1クリック増える毎に50%のユーザーが離脱する、というのは常識となっています。たとえば100人のユーザーが来訪した場合、3クリックさせると、100→50→25→12(ほぼ10)となんと1/10になってしまいます。
これはスマホにおいても顕著な現象となっております。
ではどうしたらよいか?と言いますと、できるだけタップ数を増やさないようにしながら商品を選んでもらう必要があります。
これは極論を申し上げますと「トップページで購入する商品を決められるようにする」ぐらい動線を明確にすることが重要だということです。
EC実践会では「集客商品」「本命商品」という言葉を使いますが、ようは初めてのユーザーに何を販売したらよいか?リピートユーザーにはどの商品をオススメするのか?を明確にする、ということです。
この「集客商品」「本命商品」のバナーをできるだけスマホトップの上部に設置するようにします。
その他、選びやすいような購買シーン等の動線を確保します。
2)商品ページの情報量の調整
スマホサイトにおける商品ページの情報量についても注意が必要です。
PCページや紙媒体ではどうしても紙面が大きいので多くの情報を詰め込みがちです。水上は以前グラフィックデザインをやっていたのでチラシやパンフレット、パッケージ等の制作を多く行っていましたが、その制作現場で、実は情報量は少なくした方が商品の良さを相手に伝えやすい、ということに気がつきました。
EC実践会ではPICASSOの法則というライティングフレームワークをお伝えしていますが、このフレームワークも実際には非常にシンプルな文章が書き上がるようになっています。
スマホページでは特にこのシンプルさが非常に重要になります。実際にPCベースの情報量をそのままスマホページに落とし込んだところ反応が鈍かったので、かなり間引いてスリム化したところ転換率が向上した、という事例もあります。
情報サイトはともかく、販売サイトにおいて、過度なテキスト量はあまり読みたくないですよね?転換率は、大体PCサイトの半分ぐらいが平均のようです。
たとえばPCサイトが転換率1.5%だとしたら、スマホサイトは0.8%ぐらいになります。しかしEC実践会の事例では0.8%だったスマホサイトの転換率が3.4%までアップした事例がありますが、そのときのPCサイトの転換率は3.2%。つまりスマホサイトの方が転換率が高くなったのです。
このようにスマホサイトの転換率はページの改修によって上げることができます。
3)かご落ち対策(特に決済方法)
スマホは文字入力が面倒です。ですからどうしてもPCサイトよりも転換率が低くなりがちです。
先ほどはスマホページの改修で転換率を上げることができる、という事例を紹介しましたが、実はもう一つ重要な視点があります。
それは決済方法です。
決済時に氏名、住所、電話番号等の入力が多くなればなるほど、いわゆる「かご落ち」率は高くなりますが、スマホサイトではどうしても入力に手間がかかるため、PCサイトよりも入力の負荷によるかご落ちが多くなる傾向があります。
これを回避する方法があります。
たとえば「Amazon Pay」の導入がその一つです。これによって住所等の個人情報の入力をすることなく最短3タップで購入が完了してしまいます。
実際にAmazon Payの導入で転換率が3倍になった事例もあります。
EC実践会では導入店舗さんの成果事例がまだ無いので転換率に貢献するかは未知数ですが、Apple Payも今後は注目したいところです。
世界的なシェア率でいうとAndroidが71%とダントツですが、日本国内だけで見てみるとiOSが68%と非常に高いシェア率となっています。つまりスマホユーザーの68%がApple Payを利用することが出来るわけで、決済方法としては注目したいところです。
■客単価を上げる
ネットショップにおいて、PCサイトとスマホサイトで比較すると、やはりスマホサイトの方が客単価は低い傾向があります。
これはおそらくスマホサイトは画面が小さいのでレコメンデーションやその他の動線への誘導が限定的になってしまうため、単品購入がPCに比べて多くなる傾向があり、結果的に客単価の低下を招いているのだと思います。
スマホサイトで客単価を上げる施策としては、このスマホ特有の「動線誘導が限定的になってしまう」という部分をおさえておく必要があります。
まず考えられる施策としては「セット販売」をおすすめする、という方法があります。スマホサイトでは画面が小さく、おすすめ商品への誘導が難しいので、それだったら最初からおすすめ商品とのセット販売をしたらどうか?という考え方です。
たとえばパーティードレスショップの場合、ドレス単品で販売するのではなく、アクセサリーや靴、バッグ等、モデルさんの着用アイテムをセットで販売してしまう、という方法が考えられます。実際にこの方法で売上を伸ばしているショップさんもいらっしゃいます。
あとはスマホサイトに限った話ではありませんが、「松竹梅価格設定」を行うことで単価の高い商品へ誘導することも可能です。これは行動経済学においては「極端の回避性」と呼ばれています。
たとえば3,000円のワインと7,000円のワインがレストランにあったとすると、大抵のユーザーは安い方を選んでしまう傾向があるそうです。
しかしここに5,000円のワインをリストに追加すると、5,000円のワインが一番出るようになるそうです。「7,000円のワインほど上質なワインはいらないけど、3,000円のワインよりは上質なワインを楽しみたいな」という心理が働くからだそうで、これを極端の回避性と呼ぶそうです。
ではこのレストランで7,000円のワインをたくさん販売したいとしたらどうしたらよいでしょうか?
その場合は10,000円の高級ワインをリストに追加して、たとえば
・4,980円
・6,980円
・9,800円
という松竹梅価格設定を行います。
これでおそらく6,980円のワインがたくさん販売できると思います。
実際に長野のリンゴ(サンふじ)を生産・販売している「小西園」さんは、これまでサンふじは2種類のグレードがありました。
サンふじ 特秀 5キロ 3,348円
サンふじ 秀 5キロ 2,700円
で販売していたのですが、この価格設定ですと2プライスになっているので、高い方と安い方、という選択になってしまい、結果的に秀の安い方が多く売れていました。
そこで「リンゴの中でも農園の場所によって日照の具合とか土地の具合(ワインではテロワールといいます)でものすごい美味しいリンゴってないのですか?」と伺ったら
「あ、ありますあります!おそらく選りすぐりの3%ぐらいのリンゴは他のリンゴとは全く違います」とのこと。そこでその選りすぐりの3%を「サンふじプレミアム」として販売することになりました。
これでグレードは3種類、
サンふじ プレミアム 5キロ 4,536円
サンふじ 特秀 5キロ 3,348円
サンふじ 秀 5キロ 2,700円
と松竹梅価格設定になりました。
結果は、まずリリースした瞬間にプレミアムから完売していったのです。
そしてそのあとに売れたのが「特秀」でした。おそらく「プレミアムほど良い品質のものはいらないけど、秀よりも良いものを食べたいな(もしくは贈りたいな)」という極端の回避性が働いたものと予測します。
このように客単価も工夫次第で上げることができます。