【第10回】「想像」と「妄想」がカギ?ロングテールで商機を掴む
タキシード、燕尾服、モーニングコート、フォーマルスーツ・・・
メイドインオオサカの紳士礼服を製造販売するフォーマル専門店ノービアノービオ。1952年に礼服の生地問屋として創業、今は製造から小売(ネットと実店舗)まで手がける、いわゆるSPA企業ですが、小さな小さな町工場です。
バブル最盛期、従業員230人 年商65億円、紳士礼服メーカーとして業界2位。バブル崩壊後、従業員20人、負債45億円、在庫は倉庫に14億円分。
年商65億から負債45億円、約100億円のジェットコースターを下りきった頃、服の「フの字」も知らない素人だった僕は楽天市場店のスタッフとして、この会社にやってきました。
順調に伸びていた頃、相次ぐ大手の参入で再び窮地に。首の皮一枚すらちぎれそうなとき、次々と訪れた出会いと気付きと・・・たくさんの先達に出会い、学び、SNSを使ってV字回復。
SNSは次々にピンチをチャンスに変えてくれました。
子供の頃から大好きだった僕の「ヒーロー」に自社のタキシードを着てもらえ、「僕より僕のことを知ってる日本一のファン」と抱きしめてもらえた・・・。
SNSをやってたら、売上が伸びて子供の頃から大好きだった方に約30年越しで対面が実現、これまでの想いを伝えることができ、夢がかなった瞬間。
スタッフ数人の小さなECサイトのごくごく平凡な僕に起こったウソみたいなお話。
これから記させて頂くことは特筆すべき秀でたスキルなど何もない普通の僕がやってきた、「今日から誰にでもできるお話」です。
このお話を通じ、皆さんのお店のコンバージョン率+0.1%~に少しでもお役に立つことができればと、経験した全てをお伝えしていきたいと思います。
【バックナンバーはこちら】
→https://ecnomikata.com/column/20041/
改めて多くの皆様とのご縁に感謝です。
去る7月21日に東京でJ-FEC(一般財団法人日本電子商取引事業振興財団)さんのセミナーに、7月25日は大阪でカラーミーショップ(GMOペパボ)さんとのセミナーに登壇させて頂いたのですが、その場でも多くの方々にこのコラムをお読み頂いていると声をかけて頂きました。
中には、「本物の僕に会えた!」と感激してくださる方、
「ずっと読んでて会いたかった」と言ってくださる方、
あるいは、1回目のコラム、
【第1回】お客さんの電話に泣いた日、何かが変わった
https://ecnomikata.com/column/17874/
を読み「自分もネットショップで同じような体験がありました」と言って頂いたりと、たくさんの方々とコラムをきっかけにご縁を頂きました。本当にご縁の広がりを感じずにはおれません。
7月20日にはECのミカタさんの編集部にもお伺いし、これまでお会いしたことのなかったスタッフさんたちとも親交を温めることができました。
温かいご縁だけで生きております改めて皆さん感謝、感謝です。
それでは10回目もどうぞよろしくお願いします。
「想像」と「妄想」で楽天ランキングを席巻!?
立ち上げたばかり、あるいは売上が少ないサイトでのご相談あるあるは、お客さんをどう増やせばいいか?です。
アクセスデータが貯まってくると、そこから色々と推察できますが、鶏が先か卵が先かで、そもそもアクセスがない!というサイトではどうすればいいのか。これもよく頂くご質問です。
まずは注文が少なくても、お客さんに聞けばいいんですよね。
僕がフォーマルの知識もなく、ノービアノービオに入った頃にお客さんに聞いていた体験は第2回でご紹介していますので、ご参考になれば幸いです
【第2回】売れる!ヒントはお客さんが持っていた
https://ecnomikata.com/column/18062/
それでも、立ち上げたばかりのサイトでは、それも中々。そんなときにおすすめするのが「想像」と「妄想」です。
たとえば、当店でいうと「タキシード」や「燕尾服」は超絶ニッチな目的商材。値引きやポイントで売れるような商品ではありません。
そこで、取り組んだのが「妄想コンテンツ」です。
先述の第2回は、少しずつ注文が入って来るようになってからのことでしたが、それ以前は、商品を徹底的に掘り下げ、同じようなお客さんに来ていただけるようなコンテンツづくりをしていました。
例えば、
【第7回】思い込みやオゴリが商機を逃している
https://ecnomikata.com/column/19010/
で、ご紹介したモーニングコートを例に出してみます。
モーニングコートは昼の正礼装です。
主に結婚式の新郎新婦の父親、入学式・卒業式で校長先生のような立場の方が着られる服です。100人の結婚式や300人の入学式・卒業式でもモーニングを着用しているのは1~2人。そんなニッチもニッチな商品です。
用途の限られた目的商材をどうすれば届けることができるか。どうすれば当店で手にして頂けるのかを考えてこんな答えに行き着きました。
【校長先生が入学式、卒業式で着用する尻尾の長い服、それがモーニングコートです。
結婚式では新郎新婦の父親が着用する服としてもおなじみです。
モーニングコートってレンタルだけじゃないの?売ってるものなの?というお問い合わせもいただきます。ましてやオーダーメイドなんて考えられたこともないかもしれません。
モーニングコートのレンタルの相場は大体1回(◯泊◯日)◯万円。
校長先生なら入学式・卒業式で必ず2回は着用しますし、記念式典などもあるかもしれません。更にお子さんがまだご結婚されていないとなると、着用回数は少なくとも10回近くになることもしばしば。レンタル×10回ですと約◯万円。当店のオーダーメイドなら◯万円で済んでしまいます。着用予定が4回以上ある方は座断然オーダーがお得ですよ!】
こんな書き方ですね。太文字にしたところがSEOを意識したキーワードです。
言わば、最初はレジ台でお店の前を行き交う人を眺めているだけでした。
「ウチの商品はこういう方のお役に立てるのになぁ・・・」というお想いはあるけれど、お店の前には張り紙がない。ビラ配りもしていない。ネットでも実店舗でも同じですね。
お客さんは「欲しい」「買いたい」「必要」のほか、「わからない」「困っている」があって検索をして探しものをしているわけですから、そこに届けていくことのできるコンテンツを用意しておくことですね。
想像と妄想ではこんな経験があります。
今から10年ほど前、ノービアノービオとは別に楽天市場でスイーツショップを出店していたことがありました。(現在は閉店・出店理由は後述の動画をご覧ください)
その時、バームクーヘン何十個を何度もご注文してくださる方がいらっしゃいました。お届け先は農園。
そこで、僕は妄想をしました。
「農園の方がバームクーヘンを大量注文するということは、体験型農園でもされていて、来園者にプレゼントしているのかな?」と。
ということは、記念品、賞品、景品の需要もたくさんあるはずと、そういったコンテンツを作り、時にはパチンコ屋さんから200個の大量注文が入ることもありました。
そのことは、「ゲキハナ」の古屋さんとのトークライブでも触れていますが、なんと生配信中のトークライブにその時のお客さんが降臨!
https://www.youtube.com/watch?v=fWTRzP5FSWA
動画を観ていただくと分かる通り、結果は「スタッフさんの誕生日プレゼント」で、予想はハズレていましたが、この経験がその後に続く景品需要を獲得し、結果的にバームクーヘンの他、マンゴープリンやフルーツチョコで楽天ランキング上位を獲得することができました。
ECモール単独店もキーワードで「想像」と「妄想」
こちらのお店は楽天市場でレディース・フォーマル、セレモニースーツを中心に取り扱うお店。11月の主要キーワード群です。
左がスマホ、右がPC。多くのお店さんが、ここで増えた減った、多い少ないで終わっているケースをお見かけしますが、ここから深掘りしてお客さんの素顔に迫ります。
七五三、入園式、卒園式、入学式、卒業式・・・ママさんがセレモニースーツを着用するシーンが並びますが、よく見ていると違いが浮かび上がります。
七五三、入園式、卒園式、入学式は「ママ」ですが、卒業式になると「母」になり「40代」になります。
入園式などに臨む若いママさんはともすれば20代。しかし、そんなママもお子さんが小学校を卒業する頃には40代を迎えているだろうという仮説を立てて考えていきます。
「もうママという年齢ではないわ」
「20代に買ったこのスーツ今も着られるかしら」
「みんなは40代でどんなフォーマルを着るんだろう」
そんな心理の変化で検索するワードも変わるのでしょうか。
最近では輸入アパレルでミニ・スカートのセレモニースーツもECモールでは散見されますが、そこまで突飛なデザインは多くはありませんね。シックなセレモニースーツならそれほど年齢を問うものは少ないのかなと思います。
それでもお客さんは、年齢や立場で微妙に検索するワードを変えているのですね。
現在は詳細な数字が見て取ることができなくなったキーワードプランナーですが、以前別のレディースアパレルさんのお手伝いをしたときに、「レディースファッション 30代」と「レディースファッション 40代」では後者が前者の倍近い月間検索ボリュームでした。
しかし50代ではまた落ち着き、40代だけが突出して多かったのを覚えています。それだけ、その世代の方が着こなしに迷い悩んでいる証拠ですね。
そこで、
「このスーツは年代問わず着て頂ける、落ち着いたデザイン」
「20代、30代40代、50代まで幅広く支持されているシルエット」
などの文言が商品ページや、入り口となるコンテンツにあれば、お客さんの購入障壁を取り払う助けになりますね。
次に「レインブーツ (レディース)」と「長靴」
弊社の女性スタッフに「長靴って言う?」と聞くと、みんな「レインブーツ」か「レインシューズ」と答えました。
1人が「長靴って言いますけど、子供のものを探すときは長靴かなぁ」と答えると、お子さんのいらっしゃるスタッフは大きく頷きました。このヒアリングを他でもおこなったのですが、長靴は少数派でした。
そこから導き出すと
レディースにおいて長靴はゼロではないが、優先度は低いかもしれないということが考えられます。
最後に「寒冷地仕様」という中々玄人っぽいキーワード。
ダウンベストやダウンコートもラインナップしているお店なので、寒さに強いアイテムかと思いましたが、このお店は楽天市場に出ているお店ですから答えはモールにありますね。
実際に試してみて頂けるとわかりやすいですが、楽天市場の検索窓に「寒冷地仕様」と打ち込んで「標準」の並びを見ると、防水・防寒の作業着や水道、シャワー、トイレなどの凍結に強い対策を施した水回り品が並びます。
レディースアパレルの商品は上位100点ほどの中に数点のみでした。
ここから推察すれば、レディースアパレルショップにおいて「寒冷地仕様」は優先度は低いのかもしれないという考えに行き着きます。
このように想像と実例(モール内検索)を組み合わせれば、自店で取り入れるべきキーワードの取捨選択もできたりします。
このキーワードはウチには必要かな?他に言い換えすれば何と言うだろう?そんなやわらか頭が大切ですね。
昨年2017年の秋冬では「テラコッタ」という赤レンガのような色が流行しました。しかし、すぐさまお客さんの元にその言葉が届くかどうかですね。
「なんか、今年茶色みたいなオレンジみたいな色が流行ってるよね」
「レンガっぽい色だよね」
お客さんがそんな会話をしているとしたら、
「2017年の秋冬のトレンドカラー テラコッタを取り入れたコーデ」のようなタイトルに「今年は茶色?オレンジ?朱色?赤レンガのような色が流行の兆し!その色こそテラコッタです」という本文があれば、そのものズバリを知らずとも検索でたどり着ける可能性は高くなりますよね。
「帽子とキャップ」「カバンとバッグ」同じもの、似ているものでも言葉が変わることは多くありますよね。
ぜひ、皆さんのお店でも、「コレってなんて言うかな?」「他にどういう表現をするだろう?」「どんなお客さんが好むかな」そんな「想像」と「妄想」でコンテンツ、ページづくりをしてみて下さいね。
第10回も最後までお読み頂き、ありがとうございました。
ぜひぜひ今回のご感想・温かいお言葉をよろしくお願いします。
http://www.machicollege.jp/contact
以前、ECのミカタさんでもコラムを連載していた「ゲキハナ」の古屋さんとYouTubeチャンネルも開始しました。ECサイト運営者のヒントになるトークライブを中心にお届けしておりますので、是非チャンネル登録お願いします。
https://www.youtube.com/channel/UCjFq1MzH2g9UPeXxfjpQ3vg
ゲキハナ・古屋さんのコラムはこちら
https://ecnomikata.com/column/10461/
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次回のお話は、よりロングテールの具体例を出していきたいと思います。
次回も宜しくお願いします!
【第11回】me too検索、じゃない検索を獲得できていますか?
→https://ecnomikata.com/column/19825/