日本人が知らない!海外デジタルマーケティング最前線 (後編)

CM.com Japan株式会社

東京オリンピックを目前に、益々世界から注目が集まる日本マーケット。これを機に、海外市場への進出を本格的に検討する企業、海外顧客との接点を持ちたいと考える企業に向けて、「海外デジタルマーケティング最前線」と題したセミナーが開かれた。

前編では、ゲストスピーカーとして迎えた CM.com 社の「日本企業がグローバルに目を向けるべき理由」をお伝えしたが、後編では、TAMLOの石野氏より話された「英語のコンテンツマーケティングとローカライゼーション」についてお伝えしたい。

LINEかWhatAppかFacebookかLinkedInか。

LINEかWhatAppかFacebookかLinkedInか。

まずグローバルなデジタルマーケティングを考える上で知っておきたいのは、それぞれの国で主に利用されているウェブサイトやアプリだ。日本と英国でのウェブサイトのアクセスランキングを比較した際、google.comは両国で1位だが、2位以下には興味深い相違点が見られる。

例えば、日本では2位にYahoo! Japanがランクインしているが、英国では14位と順位が大きく異なる。すなわち、英国企業が日本でプロモーションする際にYahoo! Japanは有効なチャネルだと言える。またTwitterに関しては、日本は4位、イギリスでは8位だが、使われ方が異なる。例えば、欧米では実名で利用する人が多いためプロファイリングしやすいが、性別・年齢・属性が不明な匿名性の高い日本ではペルソナを設計するのに工夫が必要となってくる。

次に比較したいのは、メッセージングアプリ。日本では言うまでもなくLINEが主流(日本人口の64%以上が利用)であり、ビジネス利用も増加しているが、メッセージングアプリとしてシェア1位を誇るのは日本だけだ。世界的にみればWhatsAppとFacebook Messengerが2強となる。2004年Facebookに買収されたWhatsAppのユーザーは10億人以上。欧米への旅行や留学、ビジネスの際に登録した経験のある人も多いのではないだろうか。5月にはWhatsAppビジネスもローンチされ、BtoCの利用の高まりにも注目されている。

またメッセージングアプリと同様に広く利用されているのは、携帯電話番号を利用したSMS(ショートメッセージ)だ。モバイルテキストツールとして長い歴史を持ち、前編のCM.com社の事例にも挙げられたように、高い開封率から現在でも多くのプロモーションに活用されている。

そのほかにも日本で使われていないが、海外でよく使われているソーシャルプラットフォームがある。「ビジネス」に特化したLinkedInがそれだ。日本での利用者は240万人にとどまるが、世界では6億人以上のユーザーを持つ。日本ではビジネスシーンでもネットワーキングにFacebookが使われるが、欧米ではまれ。多くがLinkedInでつながる。このように、国が違えば、日頃見られるウェブサイトやコミュニケーションに使われるツールも異なる。それでは、他国に向けてセールスをしたい際、ただプロモーションツールだけに気をつければよいのだろうか。

大切なのは「トランスクリエーション」であると石野氏は話す。「トランスクリエーション」とは、広告やマーケティング業界で使われる用語であり、ただ直訳するのではなく、原文の意図やスタイル、トーン、文脈を維持しながら、ある言語から別の言語へとメッセージを適応変化させることを言う。グローバルマーケティングを考える上で、「言語」「文化」「市場」の3要素を含んだ「トランスクリエーション」が重要となる。例えば、「おいしい生活」といった名コピーを「Delicious life」などとしては何も伝わらない。その言葉に込められた文化的背景やニュアンスまでを大切に汲み取ってこそ、ローカライゼーションは成功するのだ。

どうやって現地のターゲットを知り、理解するのか?

では、海外に向けて市場を開拓したい際、どのように現地の顧客を知り、理解すればよいのだろうか。現地に赴き、街頭に立って調査をしなければならないのだろうか。すべての段階においてその必要はない。まず活用できるのが「ソーシャルリスニング」であると言う。

「ソーシャルリスニング」とは、特定のトピック、ブランド、業界についてソーシャルメディア上で言われていることをモニタリングするプロセスのことで「ソーシャル傾聴」とも言われる。セールスの戦略やプランを練る際に、まずはターゲット選定とニーズの特定が重要だが、その際に「ソーシャルリスニング」が使える。

英国で日本酒をプロモーションするには?

英国で日本酒をプロモーションするには?

具体的に「ソーシャルリスニング」はどのように行うのか?英国において日本酒のマーケットを拡大するために行った実例を石野氏が紹介してくれた。

①プラットフォームとキーワードを決める
今回は「Sake」というキーワードが、Twitter上でどのように発言されているのかを調査する
②データを集める
2017年2月から2019年1月にかけて「Sake」というキーワードの発言は増えている。また「Sushi」や「Sake tasting」というワードとともにつぶやかれていることが多い。さらに料理の写真とともにアップされていたり、酒を使ったカクテルの写真が多く見られる。
③データを分析する

味に関しては「Sweet」や「Sparkling」というキーワードが「Dry」よりも多い。また「Junmai」というワードも多く、純米や大吟醸という種類を理解していることも分かった。さらにどんな絵文字が使われているのか、冷や(Cold)と熱燗(Hot)ではどちらが好まれるのかなどを調査した。

④戦略とプランをたてる

以上のデータ分析により、ターゲットとすべき、英国における日本酒ファンは3タイプに分類できた。

18~24歳のグルメな男性、25~34歳の政治好きな男性、25~34歳の日本好きな女性。ソーシャルリスニングによるデータ分析から分かったことを整理すると以下のようになる。
・英国における「酒」への関心は高まっている
・興味は、料理とのペアリング、日本酒カクテル、蒸留所のローンチ、酒テイスティングのトレンドに促されている
・純米や甘口、スパークリングが他のテイストより好まれる
・多くの英国人は酒はあたたかくして飲むものだと思っている
・英国における日本酒ファンは3タイプに分類できる

そして、プロモーションを行う上では以下のような内容を踏まえると良いことが分かった。
・日本酒カクテルリストを作るなら、秋らしい色のものをメディアにはアップにしたほうが良い
・日本酒愛好家は日本の神話や民話、イベントや大会に興味がある
・酒ブームを後押ししてくれるインフルエンサーがいる

まとめ

2時間にわたりたっぷりと行われた「海外デジタルマーケティング」セミナー。当日は満席であったが、セミナー終了後も質問の列が絶えず活気づいていた。これから海外市場を開拓したい人、すでに挑戦中の人にとって、リアルな経験を持つ、TAMLOとCM.com の話は貴重であったようだ。

2社は今後も、海外マーケティングに関して定期的にセミナーを開いたり情報交換をしていくことを予定しているという。最新情報を楽しみにしたい。


著者

CM.com Japan株式会社 (CM.com Japan K.K.)

1999年オランダで設立し、SMS配信・SIPトランク、コミュニケーションアプリへのメッセージ配信などマルチチャネルメッセージングツールを単一プラットフォームで提供。RCSではGoogleとのオフィシャルメッセージングパートナーとして実装開始。WhatsAppをはじめ、Telegram、Takeaway.com、 ラボバンク、KLMオランダ航空等30,000社以上の顧客にサービスを提供。

https://www.cmtelecom.jp/