2016年EC業界注目の法律トピックTOP3

木川 和広

【連載コラム】これだけはおさえておきたいECの法律問題
アンダーソン・毛利・友常法律事務所 弁護士 木川和広

第2回:消費者庁より怖い?適格消費者団体
http://ecnomikata.com/ecnews/backyard/7170/

第3回:サン・クロレラ判決に見る薬事法と景表法の境界線
http://ecnomikata.com/ecnews/backyard/7358/

明けましておめでとうございます。本年もEC業界の皆様に役立つ法律トピックをお届けしていきたいと思います。2016年はEC業界に深く関係する法改正が目白押しの1年です。新春1回目のこのコラムでは、その中から、私が特に注目している3つのトピックについて、ポイントをご説明いたします。

1、景品表示法の課徴金制度

今年4月1日に、景品表示法の課徴金制度が施行されます。これは、消費者を誤認させる表示や広告に関して、事業者に課される行政上の処分です。具体的には、誤認表示の対象となった商品やサービスの売上の3%相当額の支払が命じられます。もっとも、課徴金の額が150万円に満たない場合、つまり売上金額が5000万円に満たない場合には、課徴金が課されないことになっています。また、事業者が販売した商品やサービスの対価を消費者に返金した場合、課徴金が減額または免除されるという制度が採用されました。

昨年12月、ダスキンが販売していた遮熱フィルムの施工サービスについて、「最大-5.4℃空調効率アップ!」という広告が優良誤認表示に当たるとして措置命令が出されました。その際、ダスキンは、措置命令の対象となった広告を掲載した期間に申し込みをした顧客に対して、返金と取外し施工の措置をとりましたが、これはあくまでもダスキンが自主的にとった措置でした。これまでは、景品表示法上の措置命令が出されても、それはあくまで国と事業者との間の問題であり、誤認表示に基づいて商品やサービスを購入した消費者と事業者との賠償関係は解決されないままになっていました。返金による減免制度の導入により、今後は、事業者が積極的に返金措置を取るようになることも考えられます。

一方、先ほどご説明したように、課徴金の対象となるのは売上5000万円以上の商品やサービスですので、中小規模の事業者にはあまり関係がなく、大企業だけが課徴金制度の影響を受けることが予想されます。そのため、運用の状況によっては、中小規模の事業者にも課徴金制度の適用を拡充するような次の法改正の議論が早々にスタートする可能性もあります。

2、日本版クラスアクション

今年12月までに、日本版クラスアクション制度(集団的消費者被害救済制度)が施行されます。これは、1件1件の被害が少額であるために個々の消費者が泣き寝入りせざるを得なかった消費者被害について、消費者団体が消費者に代わって事業者を訴える制度です。例えば、ダスキンの事例のように景品表示法上の措置命令が出された際に、仮に事業者が任意の返金に応じないとしても、消費者団体が消費者に代わって返金を求める訴訟を提起できるようになります。

日本版クラスアクションの手続は2段階に分かれていて、第一段階では、このコラムにも何度か登場した適格消費者団体のうち消費者庁長官が指定した団体(特定適格消費者団体)が原告となって、共通の原因に基づく事業者の金銭支払義務の有無が審理されます(共通義務確認訴訟)。ダスキンの例でいえば、「最大-5.4℃空調効率アップ!」という広告を見て遮熱フィルムの施工サービスを申し込んだことに関して、ダスキンから購入者に対する賠償義務があるか否かが審理されることになります。第1段階で事業者の金銭支払義務が認められると、次に、個々の消費者から適格消費者団体への届出に基づいて、事業者が支払うべき金額が確定されます(簡易確定手続)。

この制度が導入されると、うっかり商品やサービスの誇大広告を掲載してしまったような場合に、裁判所の判決によって返金を強制され、支払わないと会社財産の差押さえを受けることにもなりかねませんので、B to C事業者にとっては相当インパクトの大きい制度になることは間違いありません。

3、消費者契約法の改正論議

現在、消費者委員会の専門部会で、消費者契約法の改正に向けた議論が行われています。その内容は極めて多岐にわたりますが、経済界からの注目が最も大きいのは、勧誘規制の広告への拡大です。消費者契約法では、商品の勧誘に際して、事実と異なることを告げた場合(不実告知)や消費者に不利益となる事実を告げない場合(不利益事実の不告知)、その勧誘行為によって事実を誤認した消費者は、契約を取り消すことができます。

従来、消費者契約法上の「勧誘」とは「特定」の消費者に向けられた誘因活動を意味するとされており、「不特定多数」の消費者に向けられた「広告」によって消費者が事実を誤認した場合は、消費者契約法による契約の取消しはできないとされていました。しかし、近年、消費者を誤認させるような広告に関するクレームが増加していることを踏まえ、専門部会では、「消費者の意思形成に直接働きかける広告であって、消費者が広告の記載や説明に基づいて契約したことが客観的に明らかなもの」について、消費者契約法の適用を認めるべきだという議論がされています。

広告に消費者契約法が適用されると、例えば、「今だけポイント3倍」という広告を出す際に、ポイントの有効期間やポイント3倍の対象とならない商品をこと細かに明記しなければ、「不利益事実の不告知」として契約が取り消されてしまうようなことが想定されます。そのため、経済界からは、過度に事業者の負担を増大させるものだとして非常に強い反発があり、今後、勧誘規制が広告にも拡大されるかどうかは不透明ですが、仮にこれが現実化すれば、EC業界の広告のあり方にも大きな影響を与えることは確実です。

以上、今年注目の法律トピックをお届けしました。

このほかにも、来年の夏に施行される改正個人情報保護法関連の動きなど、今年はEC業界として目の離せない法律トピックが盛りだくさんですので、このコラムを通じて皆様にお伝えしていきたいと思います。

著者

木川 和広 (Kazuhilo Kikawa)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所スペシャル・カウンセル
国際的な案件も含め、EC関連企業の法律問題を幅広く取り扱う。
(木川弁護士プロフィール)https://www.amt-law.com/professional/profile/KLK

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