ヤマトが中部GWを竣工、目指すビジョンとは?

ECのミカタ編集部

 ヤマトホールディングス株式会社(以下、ヤマト)は、現在ヤマトグループが推進する「バリュー・ネットワーキング」構想の下、スピード輸送ネットワークと付加価値機能を一体化させる総合物流ターミナル「中部ゲートウェイ(以下、中部GW)」を竣工したことを発表した。また、本格稼働開始は、10月1日を予定しているという。

 今回は、中部GWができる背景やメリット、またヤマトが推し進めている「バリュー・ネットワーキング」構想を改めて紹介する。

中部GWができる背景とメリット

 近年、EC市場の拡大や物流のボーダーレス化、先端技術の進化により、「より早く、より高品質に、かつより低コストで」という企業の物流のニーズが一層高まりつつある。しかし、その一方で、少子高齢化による労働力不足などの社会問題も徐々に顕在化してきているのだ。

 そのようなEC市場のニーズや社会的背景に対応するため、ヤマトは2013年に「バリュー・ネットワーキング」構想を発表し、同年に厚木ゲートウェイ、羽田クロノゲートの2つの期間ターミナルを稼働、さらに沖縄国際物流ハブの活用など、ネットワーク構造の改革を推進するとともに、国内有数の産業集積地帯で、日本の地理的中心に位置する中部にゲートウェイターミナルの建設を進めてきたのである。

 中部GWは、新東名高速道路豊田ICに近く、名古屋港まで約30分、中部国際空港セントレアまで約45分とあらゆる輸送モードに対応できる立地に位置している。また、輸送以外のサービスとして、中部GWでは、様々な荷物を1つにまとめる「クロスマージ」、組み立てを行う「キッティング」や「アッセンブル」、日本語ラベル貼り付けなどを行う「ローカライズ」などの付加価値機能を提供している。

 ゆえに、この中部GWが稼働することで、海外の工場から中部国際空港や、名古屋港に一括輸入されたパーツなどを中部GWの付加価値エリアにて、届け先ごとにマージして小口化。さらに羽田クロノゲート・厚木GW・中部GW間での多頻度幹線輸送を利用することで、関東・関西・北陸エリアの店舗や拠点へスムーズな納品が可能になるのだ。

 ECのミカタでは、今年の2月に羽田クロノゲートで取材を行ったので、ヤマトが誇る物流拠点の内部がさらに詳しく気になる方は、ぜひ以下の記事を参考にしていただきたい。

【ヤマトが誇る物流拠点「羽田クロノゲート」に潜入!】

ヤマトが目指す「バリュー・ネットワーキング」構想

 では、今回新たに中部GWができるということで、その背景にある「バリュー・ネットワーキング」構想を改めて紹介する。「バリュー・ネットワーキング」構想は、物流をコストから「価値を生み出す手段」に進化させ、顧客の業種・事業規模を問わない「物流の最適化」を目指すものである。そして、それを実現するため6つのエンジンがあるのだ。

1.止めない物流
 スピード輸送と付加価値機能を一体化した「羽田・厚木・沖縄」に加え「中部」の本格稼働により、ネットワーク内で様々な付加価値をつける止めない物流の実現。

2.クラウド型のネットワーク
 出荷場所・出荷形態・出荷量を問わず、まとめて預かり、最適化しながら複数箇所に届けるクラウド型ネットワークの活用。

3.クロスボーダー・ネットワーク
 国内のネットワークと世界の小口集配ローカルネットワークを、独自の機能と国際フォワーディングで統合マネジメントし、シームレスにリンクするクロスボーダー物流の提供。

4.グローバル・コールドチェーン
 「国際クール宅急便」は、香港、台湾、シンガポール、マレーシアに加え、今後もカバーエリアを拡大し、グローバルに拡がるコールドチェーン化の実現。

5.物流の見える化
 出荷から到着までをシームレスに物流管理することによる、送り手、受け手、輸送に関わる全ての関係者が共有できる「物流の見える化」の実現。

6.+デマンドチェーン視点
 「受け手(調達)」と「送り手(供給)」双方のニーズを満たす、「+デマンド・チェーン視点」による物流の最適化。

 以上の6つのエンジンにより、ヤマトは日本の成長戦略に資する「付加価値の高い物流」提供を目指している。さらに、ヤマトは2017年秋頃に、現在建設中の関西ゲートウェイを稼働させ、東名阪の主要都市間での宅急便の当日配送を実現させたいということだ。

 快適な物流サービスが顧客満足度を高める。ヤマトの高品質な物流を実現させようとするその姿勢と行動力は、今後、ECのサービス向上に寄与することにつながるものと思われる。


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