ECの未来も左右する?電子書籍市場の最新動向を明らかにする調査を実施【インプレス調べ】

ECのミカタ編集部

インプレスグループでIT関連メディア事業を展開する株式会社インプレス(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:小川 亨)のシンクタンク部門であるインプレス総合研究所は、電子書籍市場の動向を調査し、電子書籍に関する調査結果を実施し、その結果を公表した。

インプレス総合研究所が、電子書籍に関する最新動向調査を実施した。今回の調査では、「出版社」「電子書籍ストア」「取次事業者」「通信事業者」「ポータルサイト」「コンテンツプロバイダー」「インターネット広告事業者」等の主要な電子書籍関連事業者へのヒアリング調査、ユーザーへのアンケート等を分析したものになっているそうだ。なお、本調査報告書は電子書籍ビジネス黎明期の2003年に第1号目を発行し、今年で16年目を迎えるという。以下、その興味深い内容を見ていこう。

2017年度の電子書籍全体の市場規模は?

2017年度の電子書籍全体の市場規模は?電子書籍・電子雑誌の市場規模予測

2017年度の電子書籍市場規模(※1)は2,241億円と推計され、2016年度の1,976億円から265億円(13.4%)増加している結果となった。電子雑誌市場規模(※2)は315億円(対前年比4.3%増)と推計され、電子書籍と電子雑誌を合わせた電子出版市場は2556億円だった。2018年度以降の日本の電子出版市場は今後もゆるやかな拡大基調で、2022年度には2017年度の1.4倍の3,500億円程度になると予測されるという。

※1 電子書籍の市場規模の定義:電子書籍を「書籍に近似した著作権管理のされたデジタルコンテンツ」とし、配信された電子書籍(電子書籍、電子コミック等)の日本国内のユーザーにおける購入金額の合計を市場規模と定義。購入金額には、個々単位の販売に加え、月額課金モデル、月額定額制の読み放題、マンガアプリの課金を含む。ただし、電子雑誌、電子新聞や、教科書、企業向け情報提供、ゲーム性の高いもの、学術ジャーナルは含まない。また、ユーザーの電子書籍コンテンツのダウンロード時の通信料やデバイスにかかわる費用、オーサリングなど制作にかかわる費用、配信サイトにおける広告も含まない。

※2 電子雑誌の市場規模の定義:電子雑誌を、紙の雑誌を電子化したものやデジタルオリジナルの商業出版物で逐次刊行物として発行されるものとし、日本国内のユーザーにおける電子雑誌の購入金額の合計を市場規模と定義。購入金額には、個々単位の販売に加え、定期購読、月額課金モデル、月額定額制の読み放題を含む。ただし、学術ジャーナル、企業向け情報提供、ゲーム性の高いものは含まない。また、ユーザーの電子雑誌コンテンツのダウンロード時の通信料やデバイスにかかわる費用、オーサリングなど制作にかかわる費用、配信サイトにおける広告、コンテンツ中の広告も含まない。

2017年度の電子コミック市場規模は?

2017年度の電子コミック市場規模は?電子書籍市場規模のジャンル別内訳

2017年度の電子書籍市場規模のうち、コミックが前年度から228億円増加の1,845億円(市場シェア82.3%)、文字もの等(文芸・実用書・写真集等)が同37億円増加の396億円(同17.7%)となった。

有料電子書籍の利用率は?

有料電子書籍の利用率は?電子書籍利用率の推移

性年代別電子書籍利用率

モバイル(スマートフォン・タブレット)ユーザーに対して、電子書籍の利用率を調査したところ、有料の電子書籍利用率は17.7%となり、昨年から横ばいとなった。一方で、「無料の電子書籍のみを利用している」は23.3%となり、昨年からは0.5ポイント増加している。

有料電子書籍の利用率が高いのは男性30代の22.9%、女性30代の22.6%、男性20代の21.7%、男性40代の20.2%であり、男女とも30代の利用率が最も高い。最も低いのは女性60代以上の7.9%、次いで女性10代の9.6%で、高齢者ほどデジタルコンテンツ全般に詳しくないことと、自由に使えるお金が限られている若年層での利用率が低いという結果となった。

なお、利用率はほぼ横ばいとなったが、ベースとなるスマートフォンユーザーは増加していることからスマートフォンでの電子書籍ユーザーは引き続き拡大していることになるという。

2017年度の無料マンガアプリ広告市場はどのくらい?

2017年度の無料マンガアプリ広告市場はどのくらい?無料マンガアプリ広告市場規模

無料マンガアプリ/サービスの利用頻度

同社によれば、無料でマンガを読めるアプリやサービスの利用が拡大しているという。無料マンガアプリの利用率は前年比0.8ポイント増の28.4%、2017年度の無料マンガアプリ広告市場規模は100億円となった。また、2018年度は1.2倍の120億円程度に達すると予測している。

無料マンガアプリの利用頻度は、「1日に1回以上」が36.1%、「週に1回以上」利用するユーザーは合計で69.1%と高い結果となっており、利用頻度は昨年度調査よりも高まっているそうだ。

利用している無料マンガアプリやサービス名(複数回答、上位10位まで)

また、利用している無料マンガアプリやサービス名は、「LINEマンガ 無料連載」(26.9%)、「少年ジャンプ+」(19.7%)、「comico」(17.9%)、「ピッコマ」(13.8%)、「マンガワン」(13.6%)、「pixivコミック」(12.5%)の順となっている。

拡大が続く電子書籍市場

調査結果にあるように、2017年度の電子書籍の市場規模は、電子雑誌などを合わせると2,500億円を突破し、2022年には、3,500億円規模になる見込みだ。とかく、書籍の電子化の面で遅れを指摘されてきた日本市場だが、ここへ来てようやく一般にも浸透してきている様子が垣間見える。

また市場を牽引しているのは、マンガとコミックであるのは明白で、同市場の実に8割を占めていることにも目を引かれる。同時に、こうした電子書籍はECプラットフォームやSNSサービスなど、有力な各チャンネルが独自の規格で提供をしており、それぞれのエコシステムを強化するための手段となっているという側面も持つ。

その意味でも、今後の電子書籍市場の動向が、EC市場にも少なからぬ影響を与えていくのは必至で、利用者がどういった電子書籍アプリやサービスを選択していくのかが、エコシステムの行方を占う上でも大きな手掛かりとなっていきそうだ。

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