6割超が「カスタマーサクセス」の意味を誤解?ODKソリューションズが調査結果を公開 

ECのミカタ編集部

カスタマーサクセスオートメーションツール『pottosⓇ』を提供し、カスタマーサクセスの認知度向上及び営業のDXを推進している株式会社ODKソリューションズは、カスタマーサクセス担当者に対して「カスタマーサクセス」実態調査を実施し、その結果を公表した。ここではその概要についてポイントを絞って見ていく。

他の概念と混同している人が多数か

他の概念と混同している人が多数か

カスタマーサクセスの概念について質問したところ、一番回答が多かったのは「顧客との接点を増加させ、顧客と自社の商品・サービスに対する相互理解を促進させるもの(43.5%)」という結果になった。複数回答可能であるにもかかわらず、回答率が半数を超える選択肢はなく、カスタマーサクセスの概念の理解にばらつきがあることがうかがえる。

また回答のうち「顧客からの問い合わせやクレームに対して速やかに対応すること(24.5%)」は「カスタマーサポート」に当てはまる概念であり、「顧客情報や履歴情報を集約し、一人ひとりの顧客に対して適切な対応を行えるよう顧客情報を管理すること(18.0%)」は、カスタマーサクセスを実現する上で必要となる取組みの一つだが、概念としては「CRM(顧客管理)」に近いため、正確にはカスタマーサクセスの概念ではない選択肢だった。しかし、それぞれ20%近く回答しており、担当者であっても他の概念と混同している状況が明らかになったとしている。

【解説】

「カスタマーサクセス」と「カスタマーサポート」は特に混乱を招きやすい概念だ。それはカスタマーサクセスに明確な定義がないことも要因の一つだが、カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違いは業務単位での切分けは難しく、どちらも顧客のフォローを担っているからだ。しかし、以下の図の通り目的や姿勢の部分で大きな違いがある。

カスタマーサポートは、「顧客に発生した問題を解決する活動」であり、カスタマーセンターのような受動的な問い合わせ対応業務を想像するのがわかりやすい。一方でカスタマーサクセスは、「商品やサービスを通して顧客の目的を達成させ、サービスの継続利用や利益の最大化を促す活動」だ。

そのため、カスタマーサクセスの業務や活動では顧客のコンサルティングを含め、今よりも良い提案をしていくことが重要となる。「カスタマーサクセス」は利益を生み出すものである一方、「カスタマーサポート」は利益を生み出さないと一般的には考えられている。

目的と顧客の「目指すべき状態」を比較すると、自社の取組みが「カスタマーサクセス」なのか「カスタマーサポート」なのかを考える目安になるだろう。いずれも大切な概念であることに変わりなく、どのような状態である顧客であっても漏れなくフォローすることでサービスの解約防止につながる。

概念が誤っていたり、共通の概念がないことは以下のような問題があり、担当者としても危機感を覚えているとしている。

①企業の利益向上につながる重要な概念なのに、正しく理解されずカスタマーサクセスが広まらない。

②カスタマーサポートをしている企業がカスタマーサクセスの取組みを実施していると勘違いし利益をとりのがしてしまう。

③カスタマーサクセスの概念や取組みのゴールがぶれることでこれから取組みを始める人が何から始めたらいいのか混乱してしまっている。

海外ではカスタマーサクセスの概念は重要視されており、すでに取組みが広がっていますが、日本での浸透はまだまだ遅れているとも言えそうだ。

カスタマーサクセスの対象は基本的に「既存顧客」

カスタマーサクセスの対象は基本的に「既存顧客」

カスタマーサクセスの対象となる顧客に関して質問したところ、「すべての顧客(41.5%)」が一番多い結果となった。続いて多かった回答は、「既存顧客(37.0%)」となった。カスタマーサクセスの対象顧客は基本的には「既存顧客」となるため、「すべての顧客(41.5%)」と、「見込み顧客(21.5%)」をあわせた6割以上がカスタマーサクセスにおける認識に齟齬がある結果となった。

また、回答者が取扱っているサービスのターゲット属性別(SaaS/非SaaS、BtoB/BtoC)に確認すると「既存顧客」と回答した割合が最も多かったのが、「SaaS BtoB」だった一方で「見込み顧客」と回答した割合が最も多かったのが「SaaS BtoC」、そして「すべての顧客」と回答した割合が最も多かったのが「非SaaS BtoC」となった。

【解説】

基本的には、カスタマーサクセスは契約後の活動をフォローするものであり対象は「既存顧客」だ。継続利用を促し、顧客の利益の最大化を促すのも、既に利用されている商品・サービスがあることが前提になっている。

ただし、カスタマーサクセスツールの中には、複数の機能を備えていることがあり、一部見込み顧客向けの機能が含まれているので混乱を招いている可能性や、導入前の顧客向けの支援(FAQの設置等)が、導入後の顧客の利益の最大化になると考えているカスタマーサクセス担当者がいるため、結果が分かれているのだと推測できそうだ。

一方で、顧客の状態別に対象者が誰だと考えるか質問したところ、「すべての顧客(47.0%)」という回答が約半数、残りを「不満を抱く前の顧客(29.0%)」と「不満を抱いている顧客(24.0%)」で2等分する結果となった。

また、回答者の所属部署別に結果を見ると、営業部は「不満を抱く前の顧客」が32.0%、「不満を抱いている顧客」が28.0%、「すべての顧客」が40.0%と、ばらつきが目立ったのに対し、カスタマーサポート部では、「不満を抱く前の顧客」が17.0%、「不満を抱いている顧客」が20.0%、「すべての顧客」が63.0%と、「すべての顧客」を選択した方が多く、全体の割合と比較すると、カスタマーサクセスへの誤解が少ない結果となった。

先述のようにカスタマーサクセスの活動対象は「すべての顧客」だ。カスタマーサクセスは “顧客が不満を抱く前に支援する”という能動的な印象から、「不満を抱く前の顧客」を回答している人が一定程度みられる。

一方で、「不満を抱いている顧客」は、カスタマーサポートが対応すると思いがちなだが、「不満を抱いている顧客」のうち、カスタマーサポートにクレームを含めた問い合わせを行うユーザはごく一部です。こういった「不満は持っているが表面化していない顧客」を見つけて、支援することもカスタマーサクセスの活動範囲となる。

「FAQ・チュートリアルの設置」がトップ

「FAQ・チュートリアルの設置」がトップ

カスタマーサクセスに当てはまると思う業務について質問したところ、「顧客のためのFAQやチュートリアルの設置(59.5%)」と「顧客からの問い合わせ対応(52.0%)」が半数を超え、それ以外は20~30%程度とばらつきがあった。

【解説】

「FAQやチュートリアルの設置」や「顧客からの問い合わせ対応」等、カスタマーサポートの活動範囲とも重なる業務が上位となっている点については、「カスタマーサポートとカスタマーサクセスが混同されている」だけではなく、「カスタマーサクセス部門がカスタマーサポート業務も実施している」ケースが、特に立ち上げ段階の組織に散見されるため、このような回答になっていると推測できそうだ。

一方、「FAQやチュートリアルの設置」については、顧客の活用を支援する取組みであるため、カスタマーサクセスの認識として誤っているわけではない。しかしながら、際立って「FAQやチュートリアルの設置」の回答が多く、その他のカスタマーサクセスで必要な業務の回答数が少ないことから、「カスタマーサクセスの活動を点(業務レベル)で認識されている」ことが、この結果から読み取れる。

一方で、実践しているカスタマーサクセス業務は「顧客からの問い合わせ対応」 前問の「カスタマーサクセスに当てはまると思う業務」では「顧客のためのFAQやチュートリアルの設置」が59.5%と最も回答数が多かったのに対し、実際に取組まれているのは4割弱という結果になった。

重要度を増すカスタマーサクセス

昨今、サービスや商品を「所有する」のではなく、「定期的に料金を支払い利用する」サブスクリプション型のサービスが拡大している。このような中、顧客を継続的にサポートし、サービスの継続利用の促進や、顧客の利益の最大化を図る取組みとして「カスタマーサクセス」の重要性が認識されつつある。

その上で、今回の調査では「カスタマーサクセス」の概念が担当者に正しく認知されていないこと、担当者によって「カスタマーサクセス」のイメージが異なることが明らかになった。ECにおけるカスタマーサクセスをまさに成功させるためにも正しい共通理解をもつことが必要となってきそうだ。

ECのミカタ通信22号はこちらから


記者プロフィール

ECのミカタ編集部

ECのミカタ編集部。
素敵なJ-POP流れるオフィスにタイピング音をひたすら響かせる。
日々、EC業界に貢献すべく勉強と努力を惜しまないアツいライターや記者が集う場所。

ECのミカタ編集部 の執筆記事