ヤマトHD傘下のSSTと富士通が共同輸配送システムを稼働 「SST便」も2月スタート
ヤマトホールディングス株式会社(以下、ヤマト運輸)傘下のSustainable Shared Transport株式会社(以下、SST)と、富士通株式会社(以下、富士通)が共同記者会見を行い、2025年2月1日から荷主企業、物流事業者向けの共同輸配送システムの稼働を開始することを発表した。また、SSTが同日よりオープンプラットフォームを活用した共同輸配送サービス「SST便」の提供をスタートさせることも合わせて発表された。
オープンプラットフォームを活用した共同輸配送サービス「SST便」
2024年5月に設立されたSSTは、標準パレット輸送と標準化された商流・物流情報の連携によるオープンプラットフォームの提供準備を進めてきた。2月1日からスタートする「SST便」は、幹線輸送をベースに共同輸配送システム上で荷主企業と物流事業者をマッチングする、オープンプラットフォームを活用した共同輸配送サービスとなる。同社と共同でサプライチェーンに関わるデータ連携基盤を構築した富士通は、荷主企業としても「SST便」を活用。また、富士通は2月1日にSSTに5000万円を出資する。
最適な輸配送計画の作成
本システムは富士通のオファリング「Fujitsu Unified Logistics」によるデータ基盤を活用しており、荷主企業の出荷計画や梱包の状態(荷姿)、荷物量などの情報と、物流事業者の運行計画をもとに、最適な輸配送計画を作成する。
荷主企業はパートナーを自身で探すことなく共同輸配送に取り組めるだけでなく、同一区間でも複数の時間帯・複数の輸送手段の中から標準パレットスペース単位で最適な輸送方法を選択可能となる。一方、物流事業者は復路の空車走行の減少などによる積載率や稼働率の向上、ドライバーの負担軽減や処遇改善を図ることができようになる。
また、本プラットフォームは内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第二期 スマート物流サービス」プロジェクトにより策定された「物流情報標準ガイドライン」に準拠しているため、業種・企業間で定義の異なるデータの連携が容易に。発表によれば、これにより「荷主企業や物流事業者は運送手段やドライバー配置計画など輸配送に関する意思決定を迅速化できるとともに、物流効率化に向けた企業間の協力を促進する」という。
ブロックチェーンによる安全なデータ連携の実現
このプラットフォームは、富士通の保有するブロックチェーンなどの技術やサイバーセキュリティの知見を活用することで、外部からの閲覧を防止し、データの安全性を確保。さらに、データ変更のログを取ることにより第三者からの改ざんに対して検知・対応・復旧を可能としている。
宮城県から福岡県間にて1日16便の幹線輸送
SSTでは幹線輸送について、宮城県から福岡県間において1日16便の運行(※1)で、標準パレットスペース単位で利用できる「定時運行」「中継輸送」「混載」による幹線輸送を提供。また、地域の物流事業者と連携し、利用荷主企業の要望に応じた「域内配送」を合わせて提供するとした。
※1:2025年2月時点の情報、提供区間は順次拡大の予定
マルチモーダルの推進で路線拡大を目指す
SSTでは今後、対象地域やダイヤの拡充に加えて、トラック輸送だけでなく鉄道や船舶なども含めたマルチモーダルを推進し、2026年3月末を目途に80線便まで路線を拡大することで、共同輸配送を加速させるとしている。
企業間の垣根を越えた物流効率化に向けてSSTを設立したヤマトグループと、物流課題の解決を重要なテーマとして位置づける富士通。物流業界全体が大きな変革を迫られる中でスタートを切る「SST便」の、今後の展開を引き続き注視していきたい。