コールセンターの人材コストを200万以上削減 音声感情解析システム『Deep SEA』
コールセンターにおいては、オペレーターをはじめとするヒューマン・リソースこそが、事業のキー・ファクターである。しかし、オペレーターやSVなどスタッフの離職率が高く、新たな人員補充はコスト面を圧迫し、また、そもそも人材採用自体が難しい状況であるため、人員補充そのものがままならないという苦境を生むことになる。
そうした背景の中、各コールセンターともスタッフの離職防止に尽力することになるが、なかなか思うような成果が上がらない、というコールセンターも少なくない。
CENTRIC株式会社(以下、CENTRIC)は、こうしたコールセンターの離職問題を解決するための画期的なサービスとして、このほど音声感情解析システム『Deep SEA』をリリースした。音声解析の活用でCS(顧客満足)にも効果を発揮し得る『Deep SEA』とはどんなサービスなのか、その詳細を該社 営業本部 本部長代理 高尾 嘉大氏に伺った。
スタッフの離職率の高さが経営を圧迫しがちな、コールセンターの実態
「コールセンター白書2018」のオペレーター全体の離職率に関する調査結果によれば、オペレーターの30%以上が1年以内に離職してしまうコールセンターの割合が、全体の5割に近い44%超もあるということだ。これを新人オペレーターに絞って見てみると、実に6割以上のコールセンターで新人オペレーターの30%が離職してしまうという、厳しい実態が浮き彫りになっている。
高尾氏は、次のように言う。
「この離職率の高さは、他の業界と比べても圧倒的だと思います。そして問題は、離職者がいれば、その分を補充するための採用が必要になるわけですが、昨今の市場環境では思うように採用できないという採用難の問題がひとつ。そして、コストです。1人のオペレーターを採用し、現場に投入するまでには、一般的なコストで見れば、採用時に30万円ほどの経費がかかっており、採用後の教育・研修などのコストが約110万円かかります。その人材が離職するということになると、有給休暇の消化で30万円、業務の引継ぎ費用で30万円、さらに加えて補充のための採用費用も必要になります。合計すると、おおむね230万円ともいわれる損失になるわけです。離職率が高いことが、いかに経営を圧迫する重大問題であるかがわかると思います。」
高尾氏が言うように、コールセンターにとっては、人材の流出は大きな問題であろう。コスト計算できる損失が230万円だとしても、個人に蓄積した暗黙知などのナレッジが継承されずに失われることもあり、それはコスト換算しにくい損失であり、そうしたものを含めると、より大きな損失が発生していることもあり得るのだ。
「各コールセンターとも、離職を防ぐための様々な施策を展開しています。賃金体系を見直したり、福利厚生を充実させたりといったことです。また、コールセンター白書によれば、過半数を超えるコールセンターが対策として取り組んでいるのが、“既存スタッフのモチベーション管理”です。ストレスを溜めがちな業務であるため、モチベーションの維持といった、マインド面のケアは不可欠な対策であることは間違いがありません。具体的な施策として、SVなどの上長が定期的に面談するなどのフォローアップをするのですが、実効性が上がっていないようです。なぜなら、表面的に会話しても、相手の本当の心情はなかなかわからないからです。」と高尾氏は、モチベーション管理などの従業員フォローアップの難しさを指摘する。
最新の感情解析システムで、コールセンタースタッフの感情変化を把握し、離職防止に貢献する『Deep SEA』
そもそも、採用時には「このコールセンターで働きたい」という気持ちで来ているわけだが、業務に携わる中で、いろいろと気持ちが変化していって、ある感情が限界を超えた時に「辞めよう」と意思決定するのが、一般的だろう。
そこに着目し、“ある感情が限界を超える”前に、スタッフをケアすることで、離職を防止しようというのが、『Deep SEA』の真骨頂となる。
「『Deep SEA』は、音声感情解析を活用した新しいサービスです。音声感情解析のコア技術は、イスラエルのNemesysco社が開発したもので、精度の高い感情解析が可能です。世界的に評価され、活用されていますが、日本においてコールセンターにこの仕組みを導入したのは、当社が初めてです。開発にあたっては、マッキンゼーアンドカンパニーに勤務後、株式会社リンクアンドモチベーション(東証一部上場)にて、ブランドマネジメント事業部執行役などを歴任した茂木氏も監修に加わり、当社が熊本に開設したコールセンター(サービスサイエンスラボ)で実際に導入すると同時に、現場で使えるサービスに高めるために、音声感情解析結果の検証をNemesyscoと共同で進めていました。つまり、この度、『Deep SEA』というサービスとして、この技術を活用するにあたっては、コールセンターの現場で実践的に活用するとともに、研究・検証にもじっくりと取り組み、万全を期してサービス・リリースに至ったのです。」と高尾氏は、『Deep SEA』に自信を覗かせる。
『Deep SEA』の仕組みは次のようなものである。
「まず、コールセンター・オペレーターの過去の応対音声データ・サンプルをCENTRICが預かり、『Deep SEA』のエンジンで解析します。『Deep SEA』は、人の会話を音としてとらえ、ストレス・喜び・怒り・悲しみなど19項目の感情パラメータについてスコア化します。そして、どのパラメーターがどの程度のスコアになると離職に結び付くかを、過去の離職者のデータと比較することで明確化するのです。
その解析結果は、レポートとしてコールセンター様にご報告しますので、それに基づいて、離職危険度が高まっているオペレーターに対して、事前にケアすることで離職を防止できるのです。」と高尾氏は説明する。
『Deep SEA』は、1回だけの解析を依頼することもできるが、毎月、継続的に感情解析を実施する『Deep SEA Round』というサービスもある。
膨大な感情解析の教師データを背景に、将来的にはCSのレベルアップも可能になる
すでに説明した通り、『Deep SEA』ではイスラエルのNemesysco社が開発した音声感情解析システムをコア技術として活用しているが、このシステム自体が膨大な感情解析のための教師データに基づいており、かつCENTRICが独自の検証を重ねることで、日本のコールセンターに適した、より精度の高い分析が可能になっている。
またCENTRICでは、解析結果に基づいた独自の研修プログラムを開発中で、今秋には研修プログラムもリリースされる予定だという。
「単に、離職傾向が高い人は誰か、というアウトプットだけでなく、離職傾向が高い人に対して、何をしてあげるべきか、という視点の研修プログラムがあれば、よりコールセンターの離職防止に役立てていただけるものと考えています。ぜひ、研修プログラムにもご期待いただきたいと思います。」と高尾氏。
さらにいえば、音声データに基づいて、情動を分析できるシステムという特性を生かせば、顧客からの電話の音声を解析することで、顧客が真に求めているものは何かを分析し、より適切な応対ができるように、ペレーションの質的向上に役立てていくことも可能である。
「『Deep SEA』は、まずはオペレータースタッフの離職防止に役立てることによって、ES(従業員満足)の向上に役立てていただきたいと思います。冒頭でもお話した通り、スタッフの離職によって被る不利益は膨大です。まずはそこを解消してください。そして、その次のステップとして、CS(顧客満足)の向上に活用していただくのがよいのではないかと思っています。」と高尾氏は言う。
多くのコールセンターが抱える、スタッフの離職防止に科学的にアプローチし、成果を上げ得る『Deep SEA』。それだけでも、うれしいサービスであるが、さらにCS(顧客満足)の向上にも有効となれば、なおさら、導入を前向きに検討する価値のあるサービスだといえよう。