住所を知らない時代【利用率3倍のソーシャルギフト】がけん引する「ギフタイゼーション」戦略

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ECのミカタ編集部

株式会社ギフトモール オンラインギフト総研 所長 小川安英氏

インターネット通販がデパートを抜き、ついにギフト購入チャネルの首位へと躍り出た。なかでも、相手の住所を知らなくてもSNSやメールで贈れるソーシャルギフトの利用率は、直近6年で約3倍に急拡大している。

縮小が続く日本の消費市場において、なぜギフトECだけが静かに、しかし確実に成長を続けているのか。

「住所がわからない時代」の到来と、既存のあらゆる商品をギフト化して利益を生み出す「ギフタイゼーション(ギフト化)」の有効性について、株式会社ギフトモール オンラインギフト総研 所長の小川安英氏が、大規模な消費者調査データを交えて解説する。

●本記事は2026年3月開催「ECのミカタ カンファレンス」で行われた、株式会社ギフトモール オンラインギフト総研 所長 小川安英氏のセッションをレポートしたものです

インターネット通販がデパートを抜いた! ギフト購入チャネルの地殻変動

ギフト購入先といえば、デパートや百貨店の店頭というのが2020年時点での常識だった。ところが、コロナ禍が明けた2024年、かつて2位だったインターネット通販(ECサイト)が1位に逆転した。

小川氏が示した矢野経済研究所のデータによると、2019年から2026年にかけて、インターネット通販は約2兆円から3兆3000億円へ成長。さらに「ソーシャルギフト」の市場規模は、1580億円から8000億円へと爆発的な拡大を見せている(矢野経済研究所調べ)。

小川氏はこの変化について、「コロナ禍が落ち着き、人流が元に戻った状態になっても1位がECサイトのまま定着した。この先、再び順位が逆転することはなかなかないだろう」と分析する。

約12兆円のギフト市場のうち、個人・消費者のギフトが8〜9兆円、法人・ビジネス向けが3兆円弱を占める。特に法人市場は年率3〜5%で堅調に成長しているという。

「人口が減少していく日本社会において、毎年3%伸びていく市場は非常に稀有であり、狙い目です」(小川氏)。

年賀状はピーク比6分の1へ。「住所がわからない時代」がソーシャルギフトを加速させる

ソーシャルギフトが急拡大する背景には、知り合いの住所を知らない時代になってきているという事実がある。その一つの表れとして年賀状離れという社会変化がある。

年賀はがきの発行枚数は2003年のピーク時に44億6000万枚だったが、2026年正月には7億9000万枚まで減り続け、ピーク時の6分の1、1人あたり換算で40枚から8枚弱へと縮小した。毎年3億枚ずつ減り続けており、このまま推移すると2030年ごろにはほぼゼロに近づく計算だ。

小川氏はこの変化が意味するものを、ギフトの観点から整理する。 年1回以上やり取りがある知り合いのうち、相手の「住所を知っている割合」は平均で約4割。50代で52%、20代で30%、10代では26%にとどまる。

「住所を知らなくても『ギフトを贈りたい』という気持ちがなくなるわけではない。事実、住所を聞かなくても贈れるソーシャルギフトの必要性が高まっています。これまで『便利だから使う』だったものが、今後は『必要だから使う』時代に入ってきます(小川氏)

画像提供:オンラインギフト総研(カンファレンス登壇資料より ※以下同じく)

贈り手がギフトを購入し、受け取りURLをSNSやメールで贈る。受け手は自分で住所を入力して配送先を指定する。このシンプルな仕組みが、現代の人間関係の距離感にピタリとはまっているのだ。

6年で利用率3倍! 本格化するソーシャルギフト

ソーシャルギフトの利用率は、6年前の調査開始時点の約7%から18.4%まで拡大。特に20代・30代では4人に1人がすでに利用しており、半数近くが「使ってみたい」と回答している。 「Giftmall(ギフトモール)」内の直近1年のデータでも、ソーシャルギフトの売上は2〜2.3倍、注文数は2.7倍へと急伸。「いよいよ本格的なソーシャルギフト時代に突入した」(小川氏)。

ソーシャルギフトと相性が良い商材として小川氏が挙げるのは、「重い・大きい・かさばる商品(家具、飲料など)」「冷凍・冷蔵・チルド系」、そして「遠方の知人へのギフトや出産祝い」など、手渡しが難しいシーンだ。 実際の売れ筋は食品やスイーツ、ベビー用品に加え、高単価の美容機器(ヘアブラシなど)やマタニティ商品も伸びており、単価5000円〜2万円の商材が活発に取引されているという。

さらに小川氏は、法人ギフト市場のポテンシャルにも言及した。 法人ギフトの発注責任者・経営者300社へのヒアリングでは、1点あたりの予算は3000〜5000円が最多。年間予算が1000万円以上と回答した企業も10%存在し、一方でスポット対応の小規模事業者も多数いる。

用途はお中元・お歳暮や販促・景品が主軸だが、近年目立って増えているのが「従業員向けギフト」の需要だ。採用難や離職防止(従業員満足度の向上)への対応として、誕生日プレゼントや周年記念品、福利厚生向けのカタログギフトへの関心が高まっている。

「多様な利用シーンに対して、EC事業者がどう対応していくか。例えば、まとめて100個や500個といった大口注文に対応できる体制が組めるかどうかが、法人需要を取り込むポイントになります」(小川氏)

商品に価値を乗せる「ギフタイゼーション」3つのテクニック

講演で小川氏が提示したのが「ギフタイゼーション(ギフト化)」という概念だ。ギフトでなかったものをギフトにする、という同社のビジョンを体現するキーワードである。

具体的なテクニックは以下の3つを掛け合わせる。

1. 個別化(名入れ・パーソナライズ)
2. 包む(ラッピング・メッセージカード・熨斗)
3. 分ける(小分け・アソート)

実例として、木箱に刻印できるお祝い専用ビール、手書きの似顔絵入り真空タンブラー、引っ越し挨拶として人気の2合入り名入れお米などが紹介された。いずれも“中身”そのものは通常の商品だが、「個別化×包む×分ける」の掛け合わせにより、ギフトとしての高い付加価値と新たな需要を生み出している。

「小さな工夫でギフト市場への参入は可能です。自宅用として売るよりも高い価値を乗せることができます」(小川氏)。

小川氏のメッセージは明快だ。伸びる市場《ソーシャルギフト、法人ギフト》で戦わない手はない。既存の商品にギフトとしての文脈と演出を加える「ギフタイゼーション」こそが、縮小市場の日本においてEC事業者が今すぐ乗るべき成長戦略である。

小川 安英
株式会社ギフトモール オンラインギフト総研 所長
株式会社リクルート(現リクルートホールディングス)にて『リクナビ』『じゃらん』の商品企画マネジャー、リクルートホールディングス FinTech推進室 室長、リクルートマーケティングパートナーズ 取締役、リクルートファイナンスパートナーズ 代表取締役などを歴任。2020年4月、ギフト領域におけるイノベーションを目指し株式会社ギフトモールに参画。2020年12月にオンラインギフト総研を発足、同所所長として年2回の独自調査を実施し、ソーシャルギフトの最新動向を発信し続けている。