楽天市場のAI機能、出店店舗の半数が毎月活用 問い合わせ対応時間70%削減の事例も紹介

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桑原 恵美子

楽天グループ株式会社(以下、楽天)は2026年1月に「楽天市場」スマートフォンアプリへのエージェント型AIツール「Rakuten AI」の搭載を発表。AIコンシェルジュからの質問に答えながら対話を進めることで商品提案の精度が高くなり、ユーザーは楽天市場における約5億点の商品群から条件や目的に合った商品を見つけることが可能となった。

そこから約半年を経て、7月7日に開催された「『楽天市場』におけるAI活用に関する説明会」では、楽天グループ全体のAI活用概況に加えて、出店店舗向けAI機能(Rakuten AI for RMS)の利用状況、さらにそのAI機能を運営業務の効率化に活かしている実例が紹介された。

「Rakuten AI」がユーザーに提供する4つの顧客体験

「Rakuten AI」は、楽天が提供するエージェント型AIツール。同ツールを楽天市場に搭載することで、AIコンシェルジュがユーザーとの対話を通じてニーズを理解し、最適な商品選びのサポートと商品との新しい出会いを創出するという。利用者は楽天市場のスマートフォンアプリから「Rakuten AI」にアクセスし、希望予算や活用シーンなどをテキストや音声、画像を用いて入力するだけで使える。

楽天市場のAIコンシェルジュは、ユーザーとの対話を通じてニーズを理解し商品選びをサポート
※参考記事:楽天、「Rakuten AI」を「楽天市場」のスマートフォンアプリに搭載

説明会に登壇した楽天グループ株式会社 執行役員の髙間真里氏によると、楽天グループではすでに、楽天エコシステムユーザー向けに11のサービスでAIエージェントをリリースしており、さらに直近で8つのサービスに導入予定。さらに導入計画中のAIエージェントが50サービス以上あるという。

「AIがユーザー様のご質問の意図をより深く分析することで、従来型のサーチに比べ購入決定に至るまで時間が40%短縮でき、平均注文金額も上がっています」(髙間氏)

楽天グループ株式会社 執行役員 市場編成部 ジェネラルマネージャー 髙間真里氏

髙間氏によると、AI活用で楽天市場が目指す顧客体験は、大きく4つ。1つ目は、より精度の高いサーチ経由の商品との出会い。次に、AIコンシェルジュによる、まるで実店舗で接客を受けているかのような対話型の接客体験。3つ目は情報を定期的に配信するフィードを利用したディスカバリーショッピング(指名買いで検索するのではなく、サイト内のコンテンツやAIの提案を通じて「思いがけない商品」や「自分好みの商品」を発見する購買体験)。そして4つ目が、5万店を超えるショップの専門性を活かした買い物体験の提供だ。

2025年12月からスタートした「楽天市場 AIコンシェルジュ」では、オフラインでの接客体験をオンラインで提供することをコンセプトに、対話型のショッピング体験の実現を目指す。また、2025年11月にスタートした「ディスカバリーレコメンデーション」は、大型ショッピングモールを歩きながらショッピングしているかのような、多彩な商品との偶発的な出会いや発見の提供を目指している

約5万店の楽天市場出店ショップの約半数が毎月AIを活用

一方、楽天は出店店舗向けにもさまざまなAI機能を提供している。店舗側として、その活用メリットはどのあたりにあるのか。説明会では楽天グループ株式会社の山川祐介氏が、楽天市場の店舗運営システム「RMS(Rakuten Merchant Server)」に搭載されているAI機能(Rakuten AI for RMS)の活用について解説した。

山川氏によると、RMSには膨大な機能があり、店舗によってカスタマイズできるように設計されているが、その反面、マニュアルも膨大になり「(見つけたい情報の)探しにくさ」が課題となっていた。これに対してAIが質問に回答する仕組みを導入することで、AIに親和性のない人でも必要な情報に迅速にアクセスできる環境を整えているという。

例えば商品管理用の「R-Storefront」では、商品説明文作成や商品画像加工などをAIがサポートする。また、ユーザーからの問い合わせを管理する「R-Messe」では、回答文の作成支援AIや回答校正AIを提供。さらに、レビューへの返信作成支援にもAIが活用されており、店舗運営に関わるさまざまな業務の効率化が進められているという。

こうしたAI機能の提供により、現在では楽天市場に出店する約5万店のうち半数が何らかの形で毎月AIを活用している状況にある。さらに楽天では、オフラインイベントや各地域でのセミナー、オンライン講座「楽天AI大学」などを通じて、店舗へのAI活用の浸透を後押ししている。出店事業者同士が学び合う場の提供も含めて、活用促進に取り組んでいる点も特徴だ。

店舗向けに提供されているAI機能と、利用店舗数の推移(2024年12月から2026年5月)

楽天グループ株式会社 コマース&マーケティングテクノロジー統括部 ジェネラルマネージャー 山川祐介氏

AIを活用し問い合わせ対応時間を約70%削減、登録商品数は10倍に

説明会には、楽天市場の店舗運営にAIを活用している株式会社百福 専務の木澤典子氏も登壇し、問い合わせ対応時間削減をはじめとする効果と実感を語った。

百福では夫婦2人と少数のスタッフでショップ(楽天市場出店店舗「プチギフトmomo-fuku」)を運営。木澤氏がAI導入による効率化をまっさきに実感したのは、顧客からの問い合わせ対応だったという。

「当社はギフトショップですので、配送条件や地域ごとの作法などに関して細かな問い合わせをいただくことが多くあります。それらに対して以前は1件ごとに内容を調べる必要があり、1件の対応に10分ほどを要していました。それが今はAIを活用することで、1件あたり1〜3分ほどに短縮されました。その結果、月に約67時間かかっていた問い合わせ対応時間が20時間くらいになり、業務の効率化につながっています」(木澤氏)

「プチギフトmomo-fuku」を運営する株式会社百福 専務の木澤典子氏

さらに、AI導入によるスタッフの心理的負担の軽減と顧客対応の質向上効果も大きかったという。

「これまでスタッフの間で、敬語やマナーの面で顧客に失礼があってはいけないという不安が大きく、返信文の作成に悩むことも多かったのですが、AIが下書きを生成することで、悩む時間が減ったと喜んでいます。ギフトに関する専門知識が求められる場面でも、AIが必要な情報を正確に引き出してくれるので、安心して返信できるようになりました」(木澤氏)

レビューへの返信文作成に関しては、どうしても表現がパターン化しやすいという課題があったが、AIが商品ページの情報も踏まえて豊富な語彙で回答文作成をサポートすることで、そのコメントに特化した返信ができるようになったとのこと。

そうした質の高いコミュニケーションが成立していることや、スタッフが迅速にレスポンスできることが顧客からの信頼向上につながり、好循環が生まれているという。レビューでも「すぐに返信が来たので安心して買い物ができた」といった高評価が寄せられるようになり、それが新規顧客獲得にも好影響をもたらしているそうだ。

百福ではデータ分析にもAI機能を活用。「以前は外部のコンサルタントの方に月に1回、売上の分析などをお願いしていたのですが、今ではRMSの中で好きな時にレポートを確認できるようになりまして、コスト面でも非常に助かっております」(木澤氏)

AIエージェントと会話しながら楽天内のデータを分析する「データ分析エージェント」を搭載しているので、「競合分析」など自由な探索ができる

さらに、百福では商品登録の業務に関して、以前は外注していた時期もあったが、商品説明文作成をAIが高い精度でこなしてくれるため、当初1000アイテムほどだった登録商品数が、現在では1万点を超えているという。

「商品登録に際しましては、商品画像の背景を変更できるAI機能も活用させていただいています。他のAIツールでは、微妙にラベルが変わってしまったり、縦横比が崩れたりといったことが起こるんですね。見た目に映える画像になったとしても、実際の商品と異なるのは販売側としては困ります。その点、楽天のAIツールは現物の特徴を正確に把握するので、安心して利用できます」(木澤氏)。

このように「商品画像が変わらない」という点に注力してチューニングしているのも、ECに特化して設計した楽天市場のAIツールの特徴といえるだろう。業務効率化から顧客満足の向上へと、AI活用のフェーズは拡大しつつある。店舗の個性とテクノロジーの融合により、オンラインショッピングのシーンは今後、大きく変わっていくかもしれない。


記者プロフィール

桑原 恵美子

桑原 恵美子

フリーライター。秋田県生まれ。編集プロダクションで通販化粧品会社のPR誌編集に10年間携わった後、フリーに。「日経トレンディネット」で2009年から2019年の間に約700本の記事を執筆。「日経クロストレンド」「DIME」他多数執筆。

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