【第二回】未経験者があっという間にプロフェッショナルへ~さくらフォレストが説く[接客の極意]

田上 薫

【第一回】「声」で繋がり、心が繋がる、その秘密。〜さくらフォレストが説く[接客の極意]
http://ecnomikata.com/column/10014/

【第三回】お届けするのは「商品」だけだと思っていませんか?〜さくらフォレストが説く[接客の極意] 
https://www.ecnomikata.com/column/10963/

未経験者があっという間にプロフェッショナルへ

 昔、さくらフォレストでは役職の代わりに樹木になぞらえた独自の役職名を設けていました。統括リーダーはトランク(幹)リーダーはブランチ(枝)そして社員はブロッサム(花)。いつの間にか樹木になぞらえた役職名は消えてしまったのですが、パートさんのことを指す「リーフ(葉)さん」という名前だけが残りました。

 どうして「リーフさん」という言葉だけが残ったのか不思議に思っていたたので、このコラムをきっかけに、私なりに考えてみました。

 おそらく一緒に働いているスタッフについて、一般的な「パートタイムワーカー」という言葉ではしっくりこなかったのが理由ではないでしょうか。「さくらで働くパートタイムの人は違う!」という想いが根底にあるから、そう感じるのだと思います。

 ただ、さくらフォレストの募集要項は常に「未経験者大歓迎」です。新卒採用もリーフさんの採用も、コールセンター未経験者ばかりです。

 それなのに3ヶ月も経たないうちに先輩たちと同じ目線でお客様の応対ができる、プロフェッショナルとして活躍する方ばかりです。研修が大変なのではないかと尋ねられることも多いので、この機会にさくらフォレストのコールセンターの秘密についてお話ししたいと思います。

一番のアイデアマンはお客様

 まずコールセンター部門では1チーム6-8人としています。一人一人が意見を出しやすくチームとして楽しんで「シゴト」ができる人数を求めた結果、自然にこの体制に固まりました。いつも社員・リーフさんの違いなく、チーム単位で情報共有をしたり、意見を出し合っています。

 また、月に一度社内の全体ミーティングをしたり、週一回各チームが集まって売上の現状報告と施策のシェアをしたりしています。小さいチームの中での成功は、こうしたミーティングや毎日の朝礼、世間話レベルでの会話を通して全体に共有されます。

 他チームの成功はみんなで称え、喜びを分かちあい、そして自分の所属するチームへお土産のように持ち帰ります。そうしたコールセンターレベルでの情報交換を頻繁に行い、お客様に最適な同梱物、アフターのタイミング、果ては新商品開発のアイデアに繋げていきます。

 お客様の声を集めるコールセンター、それを支えるのがリーダーや取締役だという組織風土だという「逆ピラミッドの組織作り」を徹底した結果、アイデア不足に陥ることはほとんどありません。アイデアが溢れすぎて、手が足りなくなりそうになることも(笑)

 入社したばかりの新人さんにはよく「誰が社員で誰がリーフさんか分かりません。」と言われます。(笑)会長の岡部の「働いとる時間の長さが違うだけで、やっとることは同じやもんね」という言葉が全体に浸透している証拠かなと思っています。

ママチームの底力

ママチームの底力一番右側の女性が橋本さんです。

 入社して4年になる橋本さんという女性のリーフさんがいます。入社してからずっと、楽しそうに「シゴト」に取り組んでいる姿が印象的で、そんな橋本さんにいつも元気をもらっています。橋本さんは、今年度からチームのリーダーに選ばれました。奥様のリーフさんだけで構成された新しい試みのチームです。

 橋本さん曰く「若いときよりも、今が一番楽しい!仕事も自分の体型も含めて、今が一番!」だそうです。「やりたい事とシゴト」を繋げて、どんどん新しいことにチャレンジするのが橋本さんのやり方です。もとより食に興味があったのをきっかけに「お客様との話にも活かせる!」と食と体調の関係について追及する中で、資格にもチャレンジをしていました。

 一例ではありますがソルトコーディネート、雑穀エキスパート、食生活アドバイザーなど。その結果、お客様との会話も深まり沢山のお客様が橋本さんのファンになっています。

 その影響の輪が広がりチームの代表として昨年、モンドセレクションの受賞式にリスボンまで行きました。その時の写真がこちらです。

 ね?ステキな笑顔でしょう?

 そんな橋本さんが今、取り組んでいるのは、チーム皆で食に関する社内勉強会を開くというものです。忙しい奥様のチームですが「知識を高めてお客様の役に立てるように!」と日々楽しんで取り組んでいます。

 こうやってお客様のためを想いながら「楽しんで」シゴトをしている姿を見ると、身の引き締まる思いです。

1時間以上、電話で話したことがあるのは当たり前?!

 私たちさくらフォレストのコールセンターは全員「電話を受ける・掛ける」という業務の両方をしています。チームごとのローテーションがあるわけではなく、受けるタイミングも掛けるタイミングも個人の自主性に任せています。

 インバウンド、アウトバウンドどちらも通話時間に制限を設けてはいません。「お客様に合ったタイミングで、お客様が求める時間だけ話して良い」というルールは存在します。なので、多い人では1時間以上話すこともあります。なんとさくらフォレスト史上、最長でお電話をしたのは11時間という人もいました。(笑)

 コールセンターを外注している方の中には「困る!」と思う方もいるかもしれません。でも面白いことに各チームの平均通話時間は、約4分です。

 会話内容に関する指示がないため、お客様がお電話口で忙しいなら無理やりに長く話すこともしないからだと思います。その代わり、忙しい方へはメールでのご案内をしています。お客様に合わせた最適な方法を個人が選ぶことができるのも、お客様の応対についての速度を評価して頂ける秘訣です。

通販なのにお客様に会うの??

 通販の特徴は実店舗を持たず、「対面しない」でモノの売り買いが成立することです。でも、私たちは敢えてお客様に会いに行くことをしています。お客様に会うという文化もコールセンターからのアイデアです。

 お電話では商品の話をきっかけに、お体のお悩みや私生活の話題へと、徐々に商品以外の話題が多くなってくる場合があります。そうすると、自然にお客様の方から「会って話したいわね」という声が増えていきました。

 そのお客様は、はじめはとても怖い印象の方だったと聞いています。とても忙しい方だったので、お電話を掛けてもお話はできず、注文のお電話を頂いた際も少しでもお待たせしようものなら怒ってしまう。そんな関係性からはじまったお付き合いだったそうです。そこで、担当していたスタッフは、毎回電話を切る前にお客様を気遣う一言を添えるようにしたそうです。

「今日も頑張ってくださいね」
「体調崩されないようにしてくださいね」

 そんな一言を付け加えるうち、お客様が少しずつ心を開いてくださったのか、担当のスタッフを親しみを込めて「ちゃん付け」で呼んでくださったり、「早く嫁に行かんと」とプライべートの心配をしてくださったり……

 毎年お中元やお歳暮の時期には、直径20センチもあるどら焼きを、コールセンターへ送ってくださっていました。元々、商品について信頼を頂いていたのでお知り合いの方などをご紹介頂き、沢山のご縁も頂きました。

 数年前、そのお客様のお知り合いの方から訃報の知らせを受けました。今でも、どら焼きを見るたびに、お客様の顔が浮かびます。

 今では会報誌のお客様インタビューで訪問したり、生産者とお客様をつなぐイベントを開催したりと、会う回数やきっかけも増えてきました。

 「今度、お客様と会うんだよ!」という話題も、色んなところで自然に聞かれるようになってきました。

 今まではお客様から求められた時に会う、という「VIPなお客様への特別なサービス」として「会う」という方法をとっていました。現在は、お客様との関係性をより深めるためのサービスとして「会う」という方法をとることが多くなってきました。

 「会う」という通販を超えたサービスが当たり前になってきている証拠かなと思います。

次回は・・・

 一般的には非効率と思われがち。でも実は効果的な「ちょっとしたコト」を紹介していきます。

 今回もお読みいただきありがとうございました。


著者

田上 薫 (Tagami Kaoru)

1988年宮崎県生まれ、鹿児島県育ち。短期大学を卒業後、株式会社ココシスさくらフォレスト事業部(現在:さくらフォレスト株式会社)へ入社。これまでコールセンター部門として、主にクライアント2社に携わり、延べ7万人以上のお客様とお話しをしている。今年からはコールセンターという基礎に、CRMセンターとしても枠組みを広げていっている。

さくらフォレストHP http://sakuraforest.co.jp/
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