今からでも間に合う!中国越境ECで成功する5つのポイント

吉田 康祐

中国EC市場の急成長を背景に、大きな成長を遂げた越境EC。中でも日本製品は安心・安全・高品質を売りに、多くの中国人消費者から購入されるようになりました。中国における越境ECはどの様に参入すれば良いのか?成功のポイントはどこにあるのか?について、紐解いていきたいと思います。

中国越境ECにおける選択肢とは?

中国越境ECには参入モデルがいくつか存在します。参入モデルをご説明する前に、中国EC市場と中国越境EC市場の違いについて簡単にご説明しておきます。

よく誤解されがちですので、注意が必要です。中国EC市場の中に越境EC市場が存在する、と考えていただくとわかりやすいかもしれません。

具体的には、中国消費者向けにECを活用して商品を販売したい場合、外国法人(中国法人ではない)としてECを活用する場合が、越境ECに該当します。越境ECを行う上で、下記の図にありますようにいくつかモデルが存在しますので、そのモデルについてご説明していきます。

代表的な中国越境ECのモデルは3つ

代表的な中国越境ECのモデルは3つ

越境ECを活用して商品を販売する際に、中国の特定のモールに自社の旗艦店を出店するモデルと、中国の特定のモールに出店中の店舗に商品の販売を委託するモデルに大きく分かれます。

つまり、自ら「出店」するか?出店はせず、商品を「出品」するか?の違いです。

出店する場合は、

1)販売する商品を日本の倉庫から国際配送を活用し中国消費者まで届ける=越境EC直送モデル
2)販売する商品を事前に中国の倉庫に置き、中国国内配送を活用して中国消費者まで届ける=越境EC特別区活用モデル

の2つに分かれます。

もう1つが中国の特定モールに出店中の店舗に商品の販売を委託する(出品)モデルです。このモデルの場合には、多くのケースにおいて配送は販売委託先の国内の指定倉庫に商品を配送する事で解決します。

以上のように、越境ECには3つのモデルが存在します。

成功のポイント(KSF)はどこにあるのか?

成功のポイント(KSF)はどこにあるのか?

今まで越境ECの参入モデルについて説明してきましたが、次に成功のポイントはどこにあるのか?について説明していきたいと思います。

越境ECビジネスにおけるKSFをシンプルに分解すると、5つに分けられます。

①どこのモールに出店(または出品)するのか?
②どの商品を販売するのか?
③いくらで商品を販売するのか?
④どの様に販売するのか?
⑤どの様に消費者に商品を届けるのか?また消費者対応をどう行っていくのか?

それぞれ解説していきます。

まずはじめに、①どこのモールに出店(または出品)するのか?についてです。

まずは前述のモデル(進出方法)を決定し、出店モデルの場合は、どこのモールに出店するのか?を決める必要があります。内容はシンプルですが、最も重要な意思決定です。それぞれモールに特色がありますが、中国では特にモール側とのパートナーシップが重要です。複数のモールで比較すると、各モールの特色が掴めます。

次に、②どの商品を販売するのか?についてです。

中国で販売可能な商品なのか?などの確認を経て、越境EC向けに在庫確保出来るのか?も加味して商品選定する必要があります。日本で販売している商品が必ずしも中国で販売可能とは限りませんので、ご注意ください。

次に、③いくらで商品を販売するのか?についてです。

商品価格を決める場合には、出店者側の利益及びパートナー企業(例:店舗を運営する企業)の利益も考える必要があるため、コスト構造を明確にした上で決定する必要があります。特に日本での小売価格を下回らないなど、偽物対策、安売り対策も視野に入れたルール構築が必要です。

そして次は、④どの様に販売するのか?についてです。

中国は確かに市場は魅力的ですが、同時に市場には競合も多く存在します。出店もしくは出品しただけでは不十分であり、売上げ確保には一定量の広告出稿は必須となります。販売促進計画と併せて全体のプロモーション戦略構築が必要です。

最後に、⑤どの様に消費者に商品を届けるのか?また消費者対応をどう行っていくのか?についてです。

店舗設計及びチャットセンターの構築、また自社倉庫を活用するのか?中国側の倉庫を活用するのか?商品配送は日本からの直送か?中国国内からの配送か?などを決定していく必要があります。中国では消費者対応にチャットが用いられますので、消費者からの問い合わせにどう対応していくのか?は特に重要です。

上記5つを決定した後に、最終的にどういうスキームで越境ECに取り組んでいくのか、が決まります。

尚、過去の例から、出品モデルよりも出店モデルの方が準備期間は長くなる傾向にありますが、検討段階から実際に販売開始まで多くのケースで半年程度掛かっています。上記5つに付随して契約書締結なども関わってきますので、ある程度の時間は掛かってしまう、とご認識ください。


中国ビジネスに立ちはだかる大きな壁

中国ビジネスに立ちはだかる大きな壁

越境ECについて、ここまでご説明してきました。越境ECを始める=中国ビジネスを始める事と定義した場合、非常に重要な事があります。

本気で中国をやるのか?どうか、という事です。

もちろん越境ECを始めるという事は本気で会社として取り組むという事でもあるのですが、私が申し上げたいのは中国の商習慣に合わせる事ができるかどうか?という事です。

多くの場合、中国ビジネスにおいても日本式の考え方でビジネスを行おうとしてしまいます。

例えば、事業計画を策定する事に多くの時間を割き、事前にリスク事項は全て洗い出し、詳細なシミュレーションを策定し、綿密な計画を立てる事に注力します。当然それなりの時間が掛かります。仮に計画策定まで3ヶ月掛かってしまった場合、3ヶ月前に調査した市場などの外部環境は3ヶ月後どう変化しているでしょうか?

日本でも特に変化の激しい業界や市場であれば変化していると思いますが、中国は想像を遥かに上回るスピードで変化しています。

中国企業は、まずやってみる、という考え方で提案してきます。リスクを潰さないと言っている訳ではなく、計画を策定しないと言っている訳でもなく、必要最低限の、意思決定に必要な重要な要素を洗い出し、あとはいかに迅速に開始できるか?にフォーカスすべき、という事です。いくら時間を掛けても、時間を掛けすぎると逆にそれは機会損失にもなりかねません。

中国ビジネスで成功するには、中国の商習慣に対応する事が非常に重要です。

最後に

越境ECについて、シンプルに解説させて頂きました。急速に拡大する中国EC市場ににおいて、今大きなチャンスが存在しています。また訪日中国人旅行者も増加し、中国へ帰国後に日本製品を再購入する場としても越境ECは注目されています。本コンテンツが皆様の何かのお役に立てていれば幸いです。


著者

吉田 康祐 (Kosuke Yoshida)

2004年に株式会社オプトに入社、営業時代に社内MVP受賞、その後営業責任者、メディア責任者を務め、2010年より執行役員に就任、マーケティング事業管掌。2015年4月よりホールディング化に伴い株式会社オプトホールディング執行役員就任。現在は中国事業責任者として、香港オプト董事長、深圳オプト董事長を務める。またデジタルハリウッド大学大学院で客員教授を務め、インターネットマーケティングの普及にも力を入れている。将来の夢は、「45歳で引退して中国に移住し、日中友好の架け橋となる」事。