ECの人材と育成について 第1回:EC担当者とは?

中島 郁

ECの人材の獲得と育成について、結論から言ってしまうと、獲得は外部人材の募集を実施して、もしよい人が見つかれば採用するといったくらいのレベル感で、ただ、必要なタイミングで必要なレベルの人が見つかる可能性は低いため、結局、内部育成していくことになるということです(これは、ECに限らず、筆者が得意とする新規ビジネス全般に言えることです。DX、デジタルビジネスをはじめ、アナログでの新規ビジネスなどもです)。この連載では、どのスキル、人材がEC業務に向いているか、どう育成していくかを、事業者側視点で書いていきます。連載(全6回)の第1回となる今回のお題は「EC担当者とは?」です。

筆者は長くEC事業者として人材獲得、育成をし、今は事業者側に寄り添った(自身が事業部長としてやっていたことをほぼそのままの)コンサルティングの中で、人材の獲得、育成もハンズオンで支援しています。ここ10年の間に全体ではECに関する人材は少しは増えたと言えますし、トップランキングのEC事業者では、ある程度人材はそろってきていますが、いまだに、圧倒的に数が足りません。

質はというと、ある程度経験をされた担当者のレベルは低くはないのですが、本人たちに自信がなかったり、(担当者がECに詳しくない段階からを知っている)経営層から評価されていなかったりで、結果、目線を高くできないという意味では十分ではありません。経営者の口癖は、「当社にはECに詳しい人間がいない」です。今回の連載で、このあたりを解説していければと思っています。

EC業務とは?

EC業務とは?

最初に、あちこちで書いていますが、ECの業務というのは、全体で一つのファンクション(機能)ではなく、いくつもの機能、業務を合わせて、目標(売上や利益、そして目指す顧客体験)のための包括的なビジネスと考えてください(その際、損益を見る事業かどうかは、会社の組織による都合によるので、あまり考えなくてもよいかもしれません)。

次に知ってほしいことは、ECの物流、ECのマーケティング、ECのシステムなど、「ECの」をつければ、企業内に存在するほぼすべての業務が、ECの業務となってしまうことです。

実際には、EC全体を単なる一つの機能や業務と考えられることも多いのですが、その場合と、本来の包括的なビジネスと考える場合とで、必要な人材のイメージ、育成の方法が全く違います。

少しむずかしくいってしまえば、小売や顧客の行動、ECの仕組みなどの地味で当たり前のベースとなる知識と、それらが何のために行われているのか、そして、どういうことをすればその通りになるかという基本の考え方の上で行われるのに必要ないろいろな業務です。

理解の十分でない経営層などが思うEC業務のイメージは、システムやWebマーケティングくらいです。その発想では、それら一つひとつは機能なだけであり、ECの業務をすべてカバーするものではありませんし、一つの機能だけではEC業務とは言えません。ここで説明しようとしているECをビジネスとして達成するためは、複数の機能または複数の機能を持つ業務となります。

EC担当者とは?

EC担当者とは?

そして、EC担当者とは誰のことでしょうか? 小さめの規模でECを運用している場合は、少人数が役割を分担しているというよりも皆でほぼすべての業務にあたっています。この場合は、この全員が間違いなくEC担当者です。

大きな規模になってくると、全体を見ている責任者は役職がついているので、EC「担当者」とは呼ばれにくくなるかもです。チーム/部門を構成する制作担当者、MD担当者、マーケティング担当者などの人は、他部署、他社からは、EC担当者と見られます。部門内では、ECの制作担当者、ECのMD担当者、ECのマーケティング担当者などという認識でしょう。

それらをひっくるめて、何をEC担当者と呼ぶかは難しいところですが、EC人材不足の中では、どの役割であろうが、ECに関わる業務を担当したことのある人はEC担当者と呼ばれるのでしょう。

ECの業務と組織

ECにはどんな業務があって、どんな組織で行われているのでしょうか? 店舗や他のチャネル、メディアを利用し、より大きな考えで実施されているオムニチャネルが徹底された場合、様々なメディアミックスでの販売の中のECとされている場合を除くと、ざっくりと「ECに関連する業務を一つにまとめた事業部的組織」と「EC独自の機能などを持った部門と、MDなどの事業寄りの部分を各事業部/物流などの機能を既存組織の部門の中に分散して配置した組織」にわかれるのではと思います。これらは何が正解というわけではなく、会社の成り立ち、種類、ECをはじめてからの期間、成長の度合いにより、多様ともいえます。

【図1 全社の中での位置づけ2つ?】

割と多いのが図の2つの形で、その中でどこに所属するとしても、大きくは、下記のような組織で業務がわかれていると思います。

MD、商品情報作成、商品登録、マーケティング、制作、システム、受注処理、出庫処理、物流業務、CS、(事業)企画など。先に記載したようにECの部門内に、複数の機能があるということです。下記の図ほど、担当者が細かく分かれている事業者はほとんどなく大幅な兼務や外部のパートナーなどへの依頼で行っています。この図ではEC組織内に業務の種類が多いということだけを見てください。

【図2 部門組織図】

第2回に続く


著者

中島 郁 (Kaoru Nakashima)

豊富なEC、オムニチャネル、デジタル化の実務経験に加え、アナログを含む成長や新規事業のタネの掘り起こしと実現に強い。ベンチャー⇒外資⇒老舗と通常と逆の経歴で新規事業/新組織を担当。関与は小売、EC、デジタル/リアル、メディア、サービス等。トイザらスでマーケティング部門/EC法人立上げ、ジュピターショップチャンネル役員(EC・マーケティング)、GSIcommerce/eBayEnterprise APAC代表/日本法人社長。三越伊勢丹ではコンサルでの関与後EC役員事業部長に就任、オムニチャネル推進も担う。大規模EC3社の事業責任者経験は珍しい。ベンチャー~大企業の新規事業、戦略、マーケティング、EC、小売、リアル・デジタルを実務視点で支援。Babson College MBA

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