ユーザーの購買行動を利用する「ゲーミフィケーション」とは?

日常的にインターネットを使う人なら、ネット通販を一度は利用したことがあるだろう。自宅にいながらじっくり、またはちょっとした隙間時間に欲しいものだけを手軽に購入したりと、自分の好きな時間・好きなスタイルで購入できるのが、ネット通販の大きな魅力である。だが、そのような手軽さゆえ「ついつい買ってしまう」という衝動買いを繰り返してしまう人も多いのではないだろうか。

ネット通販利用経験者は9割。衝動買いでストレス発散

経済産業省の調査「消費者の購買に関するニーズの動向調査」によると、回答者の9割がネット通販経験者で、3ヶ月の利用回数は平均5.7回。利用金額は51,300円という結果が出た。顧客満足度はネット通販が1位、カタログ・テレビ通販が2位となった。

調査ではネット通販の利用率は男女ともに40代が最多。時間帯は午後9時〜午後11時がもっとも多く、次いで午後11時〜深夜1時。仕事や家事・育児から解放され、ようやくひとりの時間が過ごせる時間帯に、様々な不安やストレスを「衝動買い」によって消化しているのだろうか。

ネット通販にハマる理由は?

ネット通販での衝動買いという傾向は、年代・性別を問わず共通している。若い女性の場合、会社での対人関係や恋愛に悩み、「自分自身への投資」としての衝動買いを繰り返すケースも少なくない。このような、あくまでも「衝動的な買い物」に関して言えば、得てして後悔や失敗がつきまとう可能性も考えられなくはない。

また、いつでも、どこでも手軽に買えるネット通販だからこそ、失敗をバネにして「今度こそは」とゲーム感覚で購入を繰り返すパターンも考えられる。買い物は、ストレスや不安を解消する意外にも、欲しいものが好ましい条件で手に入れられたときの喜びが、ネット通販に「ハマる」要因なのかもしれない。

ゲーム感覚で商品を購入「LINE MALLチャンスプライス」

このような消費者の購買行動を利用したサービスに「LINE MALL(LINEモール)」の「LINE MALLチャンスプライス」がある。LINE MALLはLINE株式会社が運営する仮想モールで、出品者がスマホを使って商品撮影から販売まで簡単に行えるサービス。購入者もスマホで商品のチェック、購入を気軽に行うことができ、スマホを利用して売り買いが簡単にできるように徹底的に工夫されているところが特徴だ。

同サービス内で3月末から開始しているLINE MALLチャンスプライスは、ユーザーが自由に値付けを行い、入札価格が他のユーザーと一致せず、且つ最安値を提示した場合にのみ購入可能となるキャンペーンである。オークションなどに比べハードルが低く、ユーザーが気軽に参加できる上にゲーム性も高い。おまけに、破格で商品を購入できる可能性が十分にあることも人気を博した理由となったようだ。

最低落札価格の予想は戦略性よりもゲーム性が勝り、ユーザーがまたトライしたくなる構造がうまく出来上がっている。また、この手の企画は結果が不透明であったりする場合が多いのだが、チャンスプライスの場合、ユーザー自身と同じ価格にエントリーした他のユーザーの人数や過去の当選価格がわかる仕様になっており、イベント自体の透明性を高めることで信頼性をあげている。最安値価格は考えても簡単に当てられないからこそ、何度でもトライしたくなるのだ。

顧客の再来訪に繋げる「楽天市場」の仕組みとは

リテンション(既存顧客の再来訪)を高めるゲーミフィケーション(プレイヤーを楽しませ、没頭させるためのゲームで使われている要素をゲーム以外の領域に活用するという概念)を活用したサービスと言えば、他にも楽天株式会社が運営する日本国内最大級のインターネットショッピングモール「楽天市場」がある。

楽天市場は「会員ランク」「楽天スーパーポイント」「期間限定の各種キャンペーン」「くじ」といった要素により、ユーザーの購買行動を促進している。楽天のリテンションは、まず「買い物をする前にキャンペーンに応募する」ことでサイト訪問のキッカケを作り、ユーザーは「商品を購入する」。商品を購入すると、報酬として「ポイントが付与」され、さらに「キャンペーンに参加した分のポイントが付与されて、得をした」という感情がユーザーに生まれる。そこに+αで「使わないとなくなってしまうポイント」や「購入しないと下がってしまうランク」など、マイナスの要因により再来訪を促す仕組みも作り込まれている。

Amazonの強みは「当日配送」ユーザーの心理をつく

一方、Amazonのゲーミフィケーション要素は「当日配送」だろう。購入画面には「○月○日○曜日にお届けするには、今から○分以内に注文を確定してください」と表示される。時間が進むにつれ、いつの間にか中身そっちのけで当日中に商品が届くことを優先する心理になる。気がついたときには、購入ボタンをクリックしているのだ。

このようなユーザーの心理に作用するゲーミフィケーション要素を盛り込んだECサイトは、ユーザーに「実際に財布からお金を出している感覚」を与えにくい。LINE MALLのチャンスプライスや楽天市場の会員ランク・楽天スーパーポイント、Amazonの当日配送などのように、ユーザーの心理をつくようなサイトづくりが、今後は売上を伸ばす点で重要な課題となっていくのかもしれない。