味覚にあった商品をAIが提案、購買に新たな可能性を!

ECのミカタ編集部

 毎年、大丸東京店にて開催される、ワインを試飲して、購入できる名物催事「世界の酒とチーズフェスティバル」が、今年も10月12日より開催される。そして今年は、大丸東京店とカラフル・ボード株式会社(以下、カラフルボード)が連携し、感性を学習するパーソナル人工知能「SENSY」を活用した食の人工知能プロジェクトの一環として、人工知能がワインをレコメンドする「AIソムリエ」の提供をするそうだ。今回は、人工知能が購買にもたらすであろう可能性についても考えていく。

一人一人に最適な商品を

 「世界の酒とチーズフェスティバル」は、1975年に始まった日本で最も歴史あるワインフェアだ。高価なワインを試飲してから購入できるという革新的なスタイルで、40年経った今でも来場者数1万人という大勢の人で賑わう名物催事になっているという。そして、今回は過去最多の世界26カ国、1000種類以上25000本以上のワインが集結し、試飲できるワインが約200種となっていて、品揃えも試飲数も日本最大級の規模となっているのだ。

 また、世界の名だたるワイン界の巨匠によるサイン販売会や「ワインを音で分析する」などのユニークな関連イベントも充実している。しかし、ここで問題になってくるのは、どれだけイベントや品揃えが充実していたとしても、その中からお客様が本当に自分にあったワインを選び出せるかということなのではないだろうか。そこで、数あるユニークなイベント・企画の中でも注目度が高いのが、「AIソムリエ」なのである。

 「AIソムリエ」は、試飲したワインに対してどう感じたかをアプリケーションにインプットすることで人工知能が作成され、用意されている1000種類以上のワインの中から、一人ひとりの味覚に合わせて、オススメのワインをセレクトする。

 従来まで、味覚は、定量的に測定することが困難なこと、同じ食品によって味の感じ方が異なること、「おいしい」の定義が人それぞれ異なること等から、アプローチが大変困難であったそうだ。そこで、「SENSY」の持つ「パーソナル感性分析」のアプローチを味覚に応用することで、レビューから味覚をデジタル化して捉え、味覚の予測と提案を可能にしたという。

▲「AIソムリエ」デモ

 上画像が、「AIソムリエ」の利用例だ。まず、気になるワインを検索し、試飲試飲をする。次に、試飲したワインのレビューを入力する。すると、記入したレビューを元に、ユーザーの人工知能を作成し、オススメのワインをセレクトしてくれるという仕組みだ。

 レビューは、「甘味」「酸味」「余韻」「苦味」「渋み」の5項目と好みかどうかの入力、また、フリーテキストでのコメント記入が可能となっているそうだ。そして、各項目を分析することで、オススメのワインが絞られる。もちろん、試飲とレビューをすればするほど、人工知能も学習をしていくので、より好みに近いワインをセレクトしてもらえる可能性が上がり、豊富な品揃えの中から、最適なワインを選ぶことができるようになるのだ。

人工知能がもたらすこと・人間の大切さ

 今回導入される「AIソムリエ」だが、その元となる「SENSY」はファッション向けの人工知能であり、2015年9月より、伊勢丹新宿本店のファッションフロアにおいて、すでに提供されている。また、今回のワインと同様に、8月には日本酒の提案を行う「AI利き酒師」の提供がなされるなど、積極的にAIを活用する企業も増えている。

 その中でも、「AI利き酒師」は、30種の日本酒の中からオススメをセレクトするというもので、今回の「AIソムリエ」との異なる点としては、レビューにその時の食べたいものを入力することで、食べ合わせによる分析ができるなど、様々な対応が可能になっているのである。もちろん、食べ合わせなどの機能を活かすことで、お酒と一緒に食べ物のレコメンドができる。このように、AIは購買に関して様々な可能性を秘めているのだ。

 また、人工知能といえば、その高品質な性能を活かすことで、業務削減や人件費削減が主に注目されがちだが、今回取り上げた活用方法のように、AIならではの機能に注目すべきなのである。このような背景を考えると、今後はただ接客などの対応するためのAIではなく、「ならでは」の機能を持ったAIが求められ、業務や人件費削減以外でのAI活用が注目されることになってくるだろう。

 また、いくらAIが発達したといっても、レビューに基づく好みの傾向しか現状では把握することができない。そのような時には、やはり人間の経験に基づく判断が必要になるので、AIに頼るというよりは、人間がAIを活用しながら、お客様に最適なモノを提案していくことが大切になる。AIは分析に基づいた最適解しか出せないが、人間の発想は意外性を提供できる。そのような人間にしかできないことを考えていく必要があるのであるだ。

 そしてAIの発達は、もちろんECにも深く関わる可能性がある。例えば、今回は会場でワインを試飲しながら、AIが商品をセレクトするという流れだったが、これが、パソコンやスマートフォンに自分の好みの食べ物を記録するといったものになり、ワインに限らず幅広い商品のレコメンドにつながるという展開も考えられるのだ。このようにAIの活用により、商品のミスマッチを防ぐことができれば、ECにおける商品購入のメリットがより大きくなり、消費者もECでの商品購入を検討する機会が増えるかもしれない。生活を豊かにしながら、ECにも新たな可能性をもたらすであろう、AIの今後のさらなる活躍を期待したい。


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