三木谷さんは語らなかった舞台裏。楽天「R-Nations」で見た店舗の交流はECを温かく成長を促す

石郷“145”マナブ

 先日、東京で開かれた「楽天新春カンファレンス」。ここで三木谷さんは語らなかったけど、素直に良いなと思えるやりとりを舞台裏に見た。それが「R-Nations」にまつわる話であり、話を聞かせてくれたイーザッカマニアストアーズの浅野かおりさんと特殊作業服・作業用品のプロユニ高橋さおりさんの言葉である。

 「R-Nations」は2016年から行われており、店舗と楽天、店舗同士などの“つながり”を強くし、経験豊富な店舗から新しい店舗へノウハウなどを直伝する場で、それを見て“寺子屋”のように思えた。この中で、イーザッカマニアストアーズの浅野かおりさんは言うなれば先生であり、プロユニ高橋さおりさんは生徒である。

 さぞかし卓越したテクニックを伝えていたのだろうかと思われがちだが、イーザッカマニアストアーズ浅野さんは意外なほど、ネット通販ならではのテクニックの話には言及しなかった。そこが良い。

 「テクニックも大事なんですけど、それってどこでも学べるんです。どこいっても勉強会はやっているし、テクニック自体が問題なのではなくて、テクニックを使って集まった時に、お客様との向き合う環境がどうなのかと言うのがなければお客様はついてきてくれない」とイーザッカマニアストアーズ浅野さん。

 そこで語られたのは、商売としての本質だった。

想いはあるけど、できないことは沢山ある。

 プロユニ高橋さんにとってはイーザッカマニアストアーズ浅野さんとの出逢いなくして、その気づきは得られなかったと話しているし、黙々と業務をする中で、温もりのようなものをそこに感じて救われた一人のようだ。

「想いはあるんですけど、一担当者として会社のお金を使えるところは限りがあります。マンパワーでやるには限界があるとか、皆、いろんな全部のいろんな店舗が同じ悩みを持っていると思うんですけど、一人でやっていると心が折れたりもします」と高橋さん。

 そこで交わされていたのは、それと何気ない些細な質問の連続だったようだが、だからこそ、自分たちの歩幅や身の丈に合わせて、少しずつ自分たちを変える自信を備えていったようなのだ。高橋さんは「やりたいことは色々ありました。ただそれを具現化するのにどう時間を割いていったらどうだろうと小さな問題ばかりでした」と話した。

 それも大事な現場の声だ。そして、商売としての本質として話されていた内容が僕にとっては興味深かった。浅野さんはすごくシンプルに「作業着を扱うショップだから、買う人は男性のが多いですよね。それも年配の人だろう。でも、スマホで見たらすごく字が小さかったりするんです」と話していて、本当に何気無いことだけど、商売に当たり前で大事な、自分たちのお客様を想像できているかということを説いているのだ。

まさに寺子屋

まさに寺子屋左が特殊作業服・作業用品のプロユニ高橋さおりさん。右がイーザッカマニアストアーズの浅野かおりさん。

 浅野さんはこう続ける。「皆に売りたいという気持ちはあるかもしれない。けれど、それがピンポイントでできているのかという話で、そこまでのイマジネーションがあったかというと、まだまだ足りてなかった」と。

 例えば、38歳の男性がいてズボンが破けたというとしたら奥さんが買う可能性もあるとして、奥さんが買う時に旦那から指定されたものについてわかりやすくサイトに記載されていなければならなかったし、かといって、本業の人がわかりづらいサイトにしてしまったら、それは本末転倒なのだ。

 具体的なお客さんをもっと具体的にイメージができていたら、どんな風にサイトのデザインにすればいいかとかどんなフォントを使えばいいのかとかという風に自分の発想は広がりを見せてくる。高橋さんも「確かに言われてみて、そういう意見があったかと思い、すぐに改善しました」と当時を振り返る。

 しかも、イーザッカマニアストアーズ浅野さんは「あなたは若いのでわからないけど、結構、老眼って見えないんよ〜」という具合にユーモアたっぷりに、温もりのある教えで、僕が冒頭“寺子屋”のようだと書いたのは、そんな所以からである。

服ならではのお客様の悩みに店舗が気がつけるか

 その他、服ならではのサイズの問題一つでも「L寄りのMの人はLを買ったらいいのか、Mを買ったらいいのかといったことまでも考えてみる」という本質的なことも高橋さんは浅野さんから教わった。

 イーザッカマニアストアーズ浅野さんは「自分の服をメジャーで計ってこれくらいかな、という人はそれほどいない。ならば、すごいざっくりだけど、このくらいの身長で体重このくらいの人がサイズ着る事ができるサイジングですと言われれば、『俺、この胸板あついから、このサイズきついかな』という具合に考えて、Lかなと思うんですよね」と話すそ

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記者プロフィール

石郷“145”マナブ

キャラクター業界の業界紙の元記者でSweetモデル矢野未希子さんのジュエリーを企画したり、少々変わった経歴。企画や営業を経験した後、ECのミカタで自分の原点である記者へ。トマトが苦手。カラオケオーディションで一次通過した事は数少ない小さな自慢。

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