【総括】ヤフー小澤隆生氏の発言に見るこの会社の未来/Y!ショッピング ベストストア大賞結果

石郷“145”マナブ

 集客だけすればそれで良かった時代はもう終わりである。先日、ヤフーが開催する「Yahoo!ショッピング ベストストアアワード」でのラスト「戦略共有会」小澤隆生氏の話を通じて思ったことである。この内容はこの記事の後半で書くことにするが、まずはその前に、「Yahoo!ショッピング ベストストアアワード」について触れたいと思う。

 ヤフーが開催するこのショッピング大賞は年一回、優秀なストアに対して表彰される場であり、ある意味、去年を牽引してきたストアを通して時代を知る場である。「Yahoo!ショッピング」に出店している全ストアを対象に、一年間(2017年1月〜)の取扱高、成長率、顧客評価などの視点から総合的に評価し、年間ベストストアとして138店舗を発表したのだ。

 今年は新人賞、特別賞、部門賞、ならびに総合賞5ストアと「Yahoo!ショッピング大賞」を選出した。総合グランプリは、昨年に引き続き「Joshin web」を運営する上新電機が選ばれたほか、Yahoo!ショッピング全体の成長を牽引し、eコマースのさらなる発展に寄与した店舗を表彰する「Yahoo!ショッピング大賞」には「コジマYahoo!店」を運営するコジマが受賞した。

 栄光の総合賞は、下記の通りである。
1位;Joshin web
2位:コジマYahoo!店
3位:家電と住設のイークローバー
4位:カメラのキタムラ
5位:総合通販PREMOA

コジマYahoo!店では、昨年同様に「5のつく日」で売り上げのヤマ場を作りつつ、家電では特に力を発揮しやすいポイント還元の部分をアピールし、softbank会員に向けた動きなどYahoo!全体の盛り上がりと連動する形で、着実に売上に繋げてきた。Yahoo!ショッピングが取り組んだ施策が、特にこのジャンルでは追い風を作り出してきたように思う。

 今年成長したストアに送られる新人賞は下記の通り。

1位:ヤマダ電機 Yahoo!店
2位:ひかりTVショッピング
3位:Super Sports XEBIO Yahoo!店

昨年ヤフーはECにどんな活況をもたらしたのか?

昨年ヤフーはECにどんな活況をもたらしたのか?

 そして、それらの表彰の後、4月より常務になる、執行役員小澤隆生氏による戦略共有会が開かれた。まず開口一番、彼が強調したのはヤフーの成長であり、その伸びを作っているのは何かという点であった。Yahoo!プレミアム会員による取扱高比率は75%を占めていることを強調し、プレミアム会員においてお客様の購入回数や客単価を上昇させていることを説明し、それをフックに次の話をしたのだ。

 それがsoftbank。一昨年までYahoo!とsoftbankは全くそれぞれ別々に動いていたが、徐々に両社の相乗効果を狙うように、昨年2月に「ポイント10倍のキャンペーン」を実施し、6月には「Yahoo!プレミアム」特典の使い放題開始したのである。

 Yahoo!ショッピングを取り巻く環境は、更に成長を加速化させることになる。softbank会員を優遇したことにより、softbank会員のYahoo!ショッピングの月別注文者数の推移は1年間で3倍超に拡大し、取扱高推移は一年間で4倍強に拡大していることがわかったのだ。

2018年もYahoo!が勢いを持続させ続ける理由

2018年もYahoo!が勢いを持続させ続ける理由

 そして、2018年に入ってもその勢いは止まらないとしている。なぜなら、このsoftbankはまだまだ伸びしろがあるからとしていてその理由はこうだ。まずsoftbank会員のうちYahoo!ショッピングを利用していない人の数はまだ2/3存在し、この分の人たちが使うようになる事で大きくまだまだ伸びていく可能性を秘めている。

 加えて、softbank会員のYahoo!ショッピングの年間客単価を見てみると、まだYahoo!ショッピングを使いこなしているとは言えず、これまで牽引してきた「Yahoo!プレミアム会員」の方が2.5倍高いことから、現実的に考えてもこの分はsoftbank会員においても伸びると考えれると言うわけである。

 最初はストア数でトップに立ち最初こそは流通総額を増やす為全方位的に大きなCMなどを打ち活気をもたらした。その後はYahoo!プレミアム会員への特典を強化することで、そこに向けての施策を強化して、その恩恵を実感するユーザーが生まれ、その流通総額は既存会員をベースに推移し、安定的な収益をもたらすようになった。今や会員制のショッピングモールになりつつあると言って良い。

softbankの会員を強力に活用して、自らの力に変える

softbankの会員を強力に活用して、自らの力に変える

 この実績を持ってsoftbankという圧倒的な会員組織にそのノウハウを持ち込み、そこに見合ったメリットを与えて、同様な伸びを目指そうと言うのである。だからこそ、2018年は更に伸び代があると言うのであり、これはグループ会社に携帯キャリアを持つ強みをフルに使おうというのだからこれは確かに強いと言える。

 小澤氏自身、softbankグループの孫正義会長の声を取り上げ、投資は惜しみなく行え、と言っていると説明していたのは、まさに、こういうポイント還元などが当然Yahoo!なりsoftbankからの持ち出しになるけど期限を設定せずにポイント還元し続けるという事とも合い通じるところになる。

 その上で全国各地にある「softbankショップ」のスタッフもまた契約更新などのお客様に、Yahoo!ショッピングの特典で、お得にお買い物できる事を説明しており、まだ認知が及ばなかった層にも地道にアピールしているなどしていることも、VTR(ここでは60代のお客様への説明のVTR)で紹介された。softbankの契約者数が4000万人、Yahoo!プレミアム会員1869万人と、グループ一体となってECを盛り上げていこうという気概を感じるのである。

そしてヤフー自体が考えるビッグデータとの融合でECも活性化する

そしてヤフー自体が考えるビッグデータとの融合でECも活性化する

 まさに、Yahoo!ショッピングのようなショッピングモールもまた、ロイヤルカスタマーの育成に力点をおく時代にきたのである。ロイヤルカスタマーの構想が重視されるのには、非会員と会員との年間客単価の部分でも大きく左右される訳で、両者には実に3倍以上の差があり、そのことも分かるのだ。

 そこで思うのである。softbankグループの孫正義会長の言葉を。積極的な「投資」をしろと言ったその訳にはそれを回収できるだけの見込みをこのロイヤルカスタマー醸成の中に見ており、それはsoftbankもYahoo!も実感しているからなのだ。また、これは僕はデータの力によってその勢いは増すものと見ている。

 小澤氏はやはり「ずっと使いずらかったYahoo!ショッピングをUI、UXを続々と向上させることでCVRが伸長中だ」としてお客様の興味関心に直結するところでショッピングを可能にし、「データ利活用によるレコメンド」の話に言及したのだ。

 Yahoo!ショッピングで赤ん坊のグッズを買っているユーザーが、検索の場面で「スタットレスタイヤ」と売っていたとして、仮に、自動車メーカーのベビーカーをどうですかと提案したら、その購入確率が上がるのではないか、という訳である。最も関心事が現れるのが検索であり、この強みを生かしていくことで、今よりも更にお客様の客単価を上げていくことができるという訳なのである。お客様によって全くショッピングのページが違って見える、そういう時代も近いのかもしれない。

何度も買いたいと思うほどの使いやすさは重要

なんども使うためには使いやすさは外せない。今では商品の価値というよりは安いものなどだけで上位に来てしまうランキングを根本的に改良し、既存顧客の満足度に合わせた質の高いランキングにする他、検索の精度も高くしていく。

 さらにお客様に購入していただく施策も新規獲得というよりは既存顧客をあともう一回購入させる為にSTORE'S R∞の活用であったり、好みに合わせたストアクーポンの発行など、長期的な視野に立ったコンバージョンを意識した流れになっているように思う。

 そしてそのコンバージョンを引き寄せる為のリピート施策をメールなどで徹底していくことを、ヤフー自体が推奨し、また店への愛着度を増すために、これまでにはありそうでなかった個々のお店ごとにスタンプカードの仕組みを新たに作って、一つのお店で買えば買うほどお得になるように仕向けていく。

 冒頭に話した通り、ショッピングモールは集客力を持っているが、その集客がOne to Oneのコミュニケーションのように相手の個性を認識して、店の個性を高め、お客様にファンをもたらして、継続的に購入を促していくことが重んじられるようになっていきそうだ。その店とお客様との関係性は、まさにヤフーがグループ全体で意識しているロイヤルカスタマーの醸成とピタリと合致して、お互いに価値をもたらすというわけである。

 店にとっては安定した継続顧客を生み、ヤフーにとっては一つのIDから人間像を浮かび上がらせ、様々な価値をもたらすデータカンパニーになっていくメリットは、お互いの歯車を力強く加速させることだろう。お互いがそのプラスの作用を生み出し続けた先には、ヤフーがこれまでできなかった一人一人の個性に合わせた提案を実現させ、それはショッピングのあり方すらも変える可能性を持っている。

 その新しいショッピングの時代はすぐそこまで近づいている。ネット通販におけるショッピングモールの役割はこれまでとは違っていき、店にもたらす価値も変わってくる中で、店が何を思い、どんな行動を仕掛けていくのかが今問われているはずだ。


記者プロフィール

石郷“145”マナブ

キャラクター業界の業界紙の元記者でSweetモデル矢野未希子さんのジュエリーを企画したり、少々変わった経歴。企画や営業を経験した後、ECのミカタで自分の原点である記者へ。トマトが苦手。カラオケオーディションで一次通過した事は数少ない小さな自慢。

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