ZOZOから撤退のオンワード その最新決算の内容はいかに?

ECのミカタ編集部

株式会社オンワードホールディングスは、最新の決算内容(2019年2月期 決算短信)を取りまとめ、その内容を公表した。ここではその概要についてポイントを絞って見て行く。

経営成績概況「選択と集中を推進した」

経営成績概況「選択と集中を推進した」同社資料より(以下、同様)。

オンワードホールディングスは、最新の決算内容(2019年2月期 決算短信)を取りまとめ、その内容を公表した。同期の経営成績の概況について次の通りだ。

アパレル・ファッション業界では、消費者の購買意識の変化に伴う販売チャネルの多様化およびEコマースへのシフトが進むなか、衣料品に対する節約志向は依然として強く、総じて厳しい競争環境が続いたとしている。

それを前提として、同社グループは当連結会計年度を最終年度とする中期経営計画の実行に取り組み、基幹ブランドの商品価値向上や顧客サービスの拡充により安定的な収益の拡大をはかり、Eコマースなどの高い収益性と成長が見込める事業を強化するなど、事業の選択と集中を推進した。

それらの結果、連結売上高は2,406億52百万円(前年同期比1.0%減)、連結営業利益は44億61百万円(前年同期比13.7%減)、連結経常利益は51億61百万円(前年同期比12.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は49億48百万円(前年同期比7.8%減)となった。

なお財政状態とキャッシュフローの状況は以下の通りだ。

セグメント別状況「ECは好調」

セグメント別状況「ECは好調」

セグメント別の状況は、次のとおりだ。

◆【アパレル関連事業(含むEC)】

国内事業は、継続的に資源集中を行っているEコマースの収益がグループ全体で前年同期比25.8%増となり、全体の売上に大きく寄与した。中核事業会社の株式会社オンワード樫山において「自由区」「ICB」「J.PRESS」などのブランドはEコマース売上構成比が増加し、ブランド全体として増収したものの、「23区」「組曲」「五大陸」などのブランドは前年を下回った。

また、国内関係会社ではオンワード商事株式会社やチャコット株式会社、株式会社オンワードグローバルファッションなどが減収となったが、不採算事業・ブランドの撤退や経費抑制により増益となり、国内事業全体においては減収増益とった。

海外事業は、ジル・サンダー事業のクリエイティブ部門の刷新による売上拡大が継続し、北米ではJ.PRESSの新旗艦店を活用したプロモーションの成功およびEコマース売上伸長など収支改善が見られたものの、欧州における一部生産事業の契約内容変更や不採算店舗撤退のための一時費用などの影響があり、海外事業全体としては増収減益となった。結果として、アパレル関連事業全体としては減収減益となった。

◆【ライフスタイル関連事業】

同連結会計年度より「その他の事業」を「ライフスタイル関連事業」としており、主にチャコット株式会社、株式会社クリエイティブヨーコ他数社をライフスタイル関連事業にセグメント区分を変更し、ライフスタイル関連事業の拡大を図って行くとしている。

ライフスタイル関連事業は、なごみ雑貨・ペット関連用品の企画・販売を行う株式会社クリエイティブヨーコ、オーガニックのヘアケア&スキンケアブランド「ザ・プロダクト」の製造・販売を行う株式会社KOKOBUY(ココバイ)などで収益性の改善が見られたが、リゾート事業のグアムへの日本人旅行者の減少などにより、ライフスタイル関連事業全体としては減収減益となった。

次期の見通し「成長性ある分野に注力」

次期の見通し「成長性ある分野に注力」

今後の見通しについては次の通りだ。同社グループは基幹事業の商品価値向上や顧客サービスの拡充により安定的な収益の拡大を図るとともに、成長が見込める分野に向けた新規ビジネスの開発を進めるとしている。

国内事業は、株式会社オンワード樫山を中心に基幹事業の収益率向上を図る一方で、新規事業領域の拡大に取り組んでいき、海外事業は、欧州の生産基盤を活かしたグローバル化とアジアの戦略的な事業拡大を推進することにより、同社グループの成長性を高めて行く方針だ。

昨年はZOZOからの撤退で大いにメディアの注目を集めたオンワード。厳しい経営環境が続いていたが、今期については当初の予想を上回る連結経常利益を達成したことになる。この結果から、社の内外でZOZOからの撤退は英断であったとの見方が出ることも考えられるだろう(撤退そのもは年末年始であっためで、今回の決算への影響は実際には軽微だと思われる)。

いずれにしろアパレル業界全体をみれば、し烈な競争が続く中、リアル店舗での苦戦をECで補う構図は今後も続くことが予想される。その中でトップクラスのファッションECモールであるZOZOについても、各ブランドからの信頼とプラットフォームとしての価値をどう維持し続けていくかは、喫緊の課題であることを、図らずも今回のオンワードの決算内容は示唆しているのかも知れない。

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