特定商取引法とは。通信販売における行政規制や民事ルール、法改正のポイント

ECのミカタ編集部

特定商取引法とは。通信販売における行政規制や民事ルール、法改正のポイント

特定商取引法とは、事業者に向け一定の規制を定め、消費者の利益を守ることを目的とした法律だ。ECサイトでの取引もこれに該当するため、事業を運営する上で法律の内容をきちんと理解しておく必要がある。今回は、特定商取引法の概要や行政規制の内容、民事ルールなどについて消費者庁の資料をもとに紹介する。最後に、2022年の法改正のポイントと対応方法も解説するため、事業を展開していく上で参考にしてほしい。

目次

●特定商取引法とは、消費者の利益を守ることを目的とした法律
●通信販売に対する行政規制と罰則
●通信販売の民事ルール
●通信販売に対する特定商取引法の改正ポイントと対応方法
●まとめ

特定商取引法とは、消費者の利益を守ることを目的とした法律

まずは、特定商取引法の概要や特定商取引法の対象となる取引を確認していこう。

概要


特定商取引法とは、特定の取引きを対象に、事業者による違法や悪質な勧誘行為等を防止し、消費者の利益を守るためのルールを定めている法律だ。トラブルが生じやすい取引が対象で、事業者が守るべきルールやクーリング・オフ制度など、消費者を守るルールを定めている。

特定商取引法の対象となる取引


特定商取引法の対象となる取引類型は以下の7つだ。

・訪問販売
・通信販売
・電話勧誘販売
・連鎖販売取引
・特定継続的役務提供
・業務提供誘引販売取引
・訪問購入

ECサイトなどの事業は、上記では「通信販売」に当てはまる。通信販売は、事業者が新聞や雑誌、インターネット等で広告し、郵便や電話、インターネットの通信手段により申込みを受ける取引を対象としている。なお、電話で勧誘し申込みを受け取る取引は、「電話勧誘販売」 に当てはまる。

(参考:消費者庁『特定商取引法ガイド』

通信販売に対する行政規制と罰則

通信販売を行う事業者は、特定商取引法の内容を把握し、きちんと守ることが大切だ。行政規制の内容を自社のサイトページやコンテンツに反映していくために1つずつ確認していこう。

行政規制


特定商取引法では、各取引類型に応じてそれぞれ行政規制が設けられているが、通信販売に対する行政規制は以下の9つとなる。

1、広告の表示
広告の表示とは、特定商取引法において広告に表示するべき内容を定めたもののこと。通信販売は、事業者と対面しての取引とは異なり消費者が直接商品の内容を判断することが困難なため、後々トラブルが生じないように、明確で分かりやすい内容の広告やサイト内の商品ページを表示することを定めている。

広告への記載内容は、「販売価格」や「代金の支払い時期や方法」「商品の引渡時期」「事業者の氏名(名称)、住所、電話番号」など、15の項目を定めている。

一方で、広告の形態は多様で、広告のスペースが限られているために、15の項目を全て表示するのが困難なケースもあるだろう。そのため、特定商取引法では、消費者から求められた場合に、書面において「延滞なく」提供することを広告に表示し、かつ「延滞なく」提供する対策を講じている場合については、一部を省略できるとしている。

2、誇大広告の禁止
誇大広告の禁止とは、実際の商品より大袈裟な効果を記載するなど、事実を誤認させるような広告を禁止していることだ。誇大広告や事実と相違があるような内容の広告は、消費者トラブルが生じやすいため、「著しく事実と相違する表示」や「実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示」は使用できない。

3、未承諾者に対する電子メールによる広告の禁止
未承諾者に対する電子メールによる広告の禁止とは、消費者が予め承諾していない限り、事業者が電子メール広告を送信することを、原則禁止することだ。なお、注文確認や発送確認、メルマガなどに付随した広告は一部除外される。

4、未承諾者に対するファクシミリ広告の提供禁止
未承諾者に対するファクシミリ広告の提供禁止も、先ほどの内容と同様で、消費者が予め承諾していない限り、事業者がFAXによる広告を送信することを原則禁止としている。なお、電子メールのように、注文確認や発送通知などに付随した広告は一部除外対象だ。

5、特定申し込みを受ける際の表示
特定申し込みを受ける際の表示とは、定期販売型のサービスを提供する際に、分量や販売価格など6つの項目を「通信販売の申込書面」や「ECサイトの注文確認画面」で明記することを定めている。また、この規制では契約の申込みを誤認させるような表示や、記載事項を誤認させるような表示も禁止している。

6、前払式販売の承諾等の通知
前払式販売の承諾等の通知とは、消費者が商品の受け取りを行う前に、代金の全額または一部を支払う「前払式」の場合に、商品の引き渡しまでに1週間程度がかかるときは、必要事項を記載した書面を消費者に渡さなければならないというものだ。

記載内容は、「申込みの承諾の有無」「受領した金額」、「承諾する場合には商品の取引時期」などだ。

7、解除妨害のための不実告知の禁止
解除妨害のための不実告知の禁止とは、通信販売の定期販売型のサービスなどの契約申込みに対して、撤回や解除を妨げるために、撤回・解除に関する事項や契約の締結の内容について、事実と異なる内容を告げることを禁止したものだ。

8、契約解除に伴う債務不履行の禁止
契約解除に伴う債務不履行の禁止とは、通信販売において売買契約の申込みのキャンセルが行えることから、契約当事者双方に原状回復義務が課された場合において、事業者は代金返還の拒否や遅延を禁止することだ。

9、顧客の意に反して契約の申込みをさせようとする行為の禁止
顧客の意に反して契約の申込みをさせようとする行為の禁止とは、顧客の意思に反して契約させようとする表示を禁止しているという内容だ。例えば、「ボタンを押すと有料の申込みになるにも関わらず、消費者に分かりづらい表示になっている」や「消費者が申込みの内容を簡単に確認できない」などの行為は禁止だ。

特にこの内容は厳しく規制がされており、申込み段階における表示についてのガイドラインが策定されているため、確認しておくことが大切だ。

なお、ここまで紹介した各項目は概要となるため、詳しい内容については消費者庁が開示する特定商取引ガイドの「通信販売に対する規制」を確認しよう。

行政処分・罰則


上記で紹介した行政規制に違反した場合、事業者側は業務改善の指示や業務停止命令、役員等の勤務禁止命令などの行政処分の対象となる。一部は、罰則の対象にもなるため、きちんとした対応が重要だ。

(参考:消費者庁『特定商取引法ガイド』

(参考:消費者庁『通信販売の申込み段階における表示についてのガイドライン』

通信販売の民事ルール

事業を運営していく際には、行政規制だけでなく消費者を守るルールを理解しておくことも大切だ。通信販売における民事ルールを確認していこう。

契約の申込みの撤回または契約の解除


契約の申込みの撤回または契約の解除とは、消費者が売買契約の申込みや締結を行った場合でも、その契約に係る商品の引渡しを受けた日から数えて8日以内であれば、契約申込みの撤回や解除ができ、送料を負担すれば返品が可能となるものだ。

しかし、事業者が広告で予め、この契約申込み撤回や解除について特約を表示していた場合は、特約の内容が優先される。

契約の申込みの意思表示の取り消し


契約の申込みの意思表示の取り消しとは、通信販売の定期販売型サービスに申込みを行う際に、表示された記載内容を消費者が誤認したまま申込みの意思表示をした場合においては、その意思表示を取り消すことができるという内容だ。

事業者の行為の差止請求


事業者の行為の差止請求とは、事業者が不特定かつ多数の者に誇大広告などを行った、または行うおそれがあるときは、適格消費者団体は、事業者に対し行為の停止もしくは予防、そのほかの必要な措置をとることを請求できるという内容だ。


通信販売に対する特定商取引法の改正ポイントと対応方法

最後に、通信販売に対する特定商取引法の改正ポイントと、それに伴う対応方法を紹介する。

改正の背景や内容


近年、通信販売において定期的に商品が手元に届く定期販売型のサービス(いわゆるサブスクリプションサービス)が拡大傾向にある。しかし、ECサイトによっては定期販売型であるにも関わらず、そのことを明確に開示していないケースや、解約の際に高額な解約金を請求するなど、詐欺的な定期購入契約が増加傾向にある。今回の法改正では、こういったサービスにおいて消費者が不利益となる取引を防止するために、規制強化を実施している。

このような経緯から、2021年6月16日に「消費者被害の防止及びその回復の促進を図るための特定商取引に関する法律等の一部を改正する法律」が公布され、2022年6月1日より施行されている。

詳しい内容の追加は、上記の行政規制で紹介した「5、特定申し込みを受ける際の表示」「7、解除妨害のための不実告知の禁止」、民事ルールにおいては「契約の申込みの意思表示の取り消し」が当てはまる。

今回の法改正では、強制処分の強化も定められている。立入検査権限が拡充され、業務停止・禁止命令の対象になる役員等の範囲が拡大している。

(参考:消費者庁『令和3年特定商取引法・預託法の改正について』

対応方法


ECサイトで定期販売型のサービスを運営する場合、規制強化に対応するため、サイトの調整が不可欠と言える。

具体的には、注文確定前の最終確認画面に必要項目が明記されるように調整を実施しよう。必要事項は以下の6つだ。

・分量
・販売価格(送料についても表示)
・代金の支払時期および支払方法
・商品の引渡時期
・申込みの期間に定めがある場合、その旨およびその内容
・契約の申込みの撤回や解除に関する事項(売買契約に係る返品特約がある場合はその内容も含む)

記載する際、消費者に誤認させる可能性がある表示は禁止されているため、「文字が小さい」「色が薄くて見えにくい」といった明記は控えたい。ECサイトの内容を調整する際は、誰が見ても分かりやすい明記を心がけることが重要だ。

関連記事:【連載企画 ニュースのヨミカタ】全EC事業者が対象 特定商取引法改正で対応すべきこと

まとめ

「特定商取引法」とは、消費者の利益を守ることを目的とした法律であり、ECサイトの運営においても例外ではない。通信販売は消費者と直接顔を見合わせた取引ではないからこそ、消費者に信頼してもらえるように法律をもとにした広告表示や取引が重要だ。今回紹介した内容を参考に、消費者目線の分かりやすいECサイトの運営を努めていこう。


記者プロフィール

ECのミカタ編集部

ECのミカタ編集部。
素敵なJ-POP流れるオフィスにタイピング音をひたすら響かせる。
日々、EC業界に貢献すべく勉強と努力を惜しまないアツいライターや記者が集う場所。

ECのミカタ編集部 の執筆記事