ダイハツ不正、物流業界にも大打撃 配送3社、赤帽も影響を免れない?

ECのミカタ編集部

2023年12月20日、軽自動車の販売数トップクラスの自動車メーカー、ダイハツ工業株式会社工業(本社:大阪府池田市、社長:奥平総一郎、以下ダイハツ)が、製造する64車種・3エンジンの認証申請において、174個の不正が発覚したと公表した。同日より、国内外で生産中のすべてのダイハツ開発車種を、一旦出荷停止とすると発表。国土交通省・経済産業省も厳正に対処する旨を発表し、各業界に大きな影響を与えている。もちろん配送が関係するEC業界も例外ではない。

ダイハツ、不正により全工場の操縦や出荷を停止

ダイハツの認証試験における不正発覚は、各所に大きな影を落としている。4月に側面衝突試験の認証申請を発端とする一連の不正行為が発覚。ダイハツはその結果、12月20日に国内外で生産中の全ての車種の出荷を一旦停止すると発表している(※1)。

具体的には、ダイハツ九州(本社:大分県中津市)でエンジンを製造する久留米工場(所在地:福岡県久留米市)の操業を停止。25日には滋賀工場(所在地:滋賀県竜王町)と京都工場(所在地:京都府大山崎町)、ダイハツ九州の各車両組立工場を停止。26日には本社工場(所在地:大阪府池田市)を停止し、国内全工場の操業が完全に止まった状態となっている。

現在約6万台を受注しているが未完成の1万2000台は納車せず、顧客から申し出があればキャンセルを受け付けるという。また残る4万8000台の完成車については、納車するか取り消すか顧客の要望に応じるとしている。

※1 出典元:第三者委員会による調査結果および今後の対応について(ダイハツ工業株式会社)

サプライチェーン企業は8136社、2兆円超えの被害にも

EC事業者としては、配送にどのような影響があるかも気になるところだ。宅配便の配送で使われることも多い軽商用車「ハイゼットカーゴ」「ハイゼットトラック」も出荷停止となっており、さらにスバルへOEM供給する「サンバーバン」「サンバートラック」も出荷を見合わせている状態だ(※2)。こうした車両としての影響もさることながら、サプライチェーンへの打撃も大きい。

株式会社帝国データバンクの調査によれば、ダイハツを頂点とするサプライチェーン企業(売上高の1%以上を依存している企業)は、47都道府県全てに分布しており、推計8136社。これらの企業に派生する売上高合計は推計2兆2110億円に上るとしている。具体的には同社と直接取引のある企業が921社(1兆7791億円)、二次下請けである企業が4945社(3952億円)と続く。

※売上高は推計

※2 出典元:ダイハツ⼯業のサプライチェーン企業は8,136社~派生する売上高は2兆2,110億円(株式会社帝国データバンク)

都道府県別で見ると、愛知県が最も多く2084社(派生する売上高推計5674億円)。次いで同社の本社工場がある大阪府が1043社(2607億円)、東京都562社(2006億円)となった。また業種別で見ると、サプライチェーンで最も多いのは「自動車部分品・付属品製造業」で630社、次いで「金型・同部分品・付属品製造業」の468社など製造業が上位を占めている。他にも、部品等を搬送する「一般貨物自動車運送(408社)」や「労働者派遣業(187社)」が上位にあがっており、EC事業者にも少なからず影響がありそうだ。

※3 出典元:【別紙】今回新たに判明した不正の対象となる車種一覧(ダイハツ工業株式会社)

配送会社だけではない、今後各業界に広がる影響

一般社団法人 全国軽自動車協会連合会(以下、全軽自協)の新車販売調査によれば、2023年11月までの軽四輪車総台数はダイハツが全体の34%とトップだった(※4)。すなわち、調達物流に関わるトラック・倉庫などの物流事業者への影響は避けられそうにない。

また、サンバーを指定車両(※5)として運用する全国赤帽軽自動車運送協同組合連合会も影響を免れないだろう。

また配送会社だけでなく、Amazonでは10月にAmazon Flexで軽自動車による配達を開始したばかり(※6)。物流の2024年問題に対処するため、受け口を広げてモノが運べなくなる事態を防ぐ取組を各社進めている中、ダイハツ車が使えなくなることになれば、「物流の2024年問題」にもさらにマイナスの影響が出ることが考えられる。

今後の方針について、国土交通省によれば、不正行為等の事実確認、基準適合性について技術的な検証結果を踏まえ、道路運送車両法に基づき厳正に対応するとした(※7)。今後生産停止が長期化すると、複層的なサプライチェーンが分断され、ダイハツ工業グループとの取引に依存する企業のダメージは大きくなる。さらに、運送業や建設業、飲食店などさまざまな周辺業種にも影響が広がるだろう(※8)。

※4 出典元:【2023年11月 軽四輪車 新車販売確報】(一般社団法人 全国軽自動車協会連合会)
※5 参考元:赤帽車の荷台サイズ・積載重量(赤帽千載運送)
※6 出典元:Amazon、Amazon Flexで軽乗用車による配達を開始(Amazon)
※7 出典元:ダイハツ工業(株)の型式指定申請における不正行為の報告について(国土交通省)
※8 出典元:「ダイハツ工業グループ」取引先調査  取引先は全都道府県に6,084社  生産停止で取引先の資金繰りに影響も(株式会社東京商工リサーチ)


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