意外と知らないメルマガの法規制(下)
【連載コラム】これだけはおさえておきたいECの法律問題
アンダーソン・毛利・友常法律事務所 弁護士 木川和広
第6回:薬事法の基礎② 「広告」とは?
http://ecnomikata.com/ecnews/strategy/7799/
第7回:意外と知らないメルマガの法規制(上)
http://ecnomikata.com/ecnews/strategy/7867/
措置命令違反による逮捕事例
2014年9月、警視庁は、特定電子メール法に基づく措置命令に違反したとして、株式会社SANSの社長らを逮捕しました。この会社は、2014年2月に総務省と消費者庁から特定電子メール法に基づく措置命令を受けたにもかかわらず、その命令に反して違反行為を継続していました。報道によると、約2年半の間に、約20億通の迷惑メールを送っていたとういことです。
措置命令の制度は景品表示法にも規定されており、命令違反には刑事罰が科せられますが、措置命令が出た後も違反行為を継続することは極めて稀で、景品表示法上の措置命令違反で逮捕された事例はこれまでにありません。特定電子メール法上の措置命令違反で逮捕者が出たのも、この事例が初めてです。
特定電子メール法の措置命令
前回のコラムで、特定電子メールの送信には受信者の事前の同意が必要であること(オプトイン規制)、同意の記録を保存する義務があること、確実なオプトアウトのために事業者の氏名や連絡先等を表示する義務があることをご説明しました。
事業者がこの規定に違反した場合、総務大臣と消費者庁長官は、「電子メールの送信の方法の改善に関し必要な措置」をとるよう命令することができます。これを「措置命令」といいます。
株式会社SANSに対する措置命令では、以下のような違反行為が認定され、これらの違反状態の改善措置を講じることが命じられています。
① 自己の運営するウェブサイト「WHO」の広告又は宣伝を行う電子メールの送信に当たり、受信者から同意を得ていなかった。
② 受信者から送信の同意を得た記録を保存していなかった。
③ 広告又は宣伝を行う電子メールの本文に、法に規定された事項を表示していなかった。
措置命令違反に対する罰則
措置命令に違反した場合、個人に対して、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金、会社に対して、3000万円以下の罰金が科されます。
この刑罰の定めについては、軽すぎて抑止効果が薄いという批判があるようです。特に、会社に対する3000万円という罰金の上限額については、こうした事業者が売り上げている金額に比べて低額過ぎるという意見があります。
確かに、景品表示法上の措置命令違反に対する罰則が、個人に対して、2年以下の懲役又は300万円以下の罰金、会社に対して、3億円の罰金であることを考えると、同じ措置命令の違反について、このような差をつける理由があるのかは大いに疑問でしょう。
違反メールの通報先
違反メールを受信した場合、総務大臣と消費者庁長官の登録を受けた「登録送信適正化機関」に通報することができます。具体的には、「日本データ通信協会」という財団法人が登録を受けており、この協会が運営する「迷惑メール相談センター」のサイトに掲載されている転送用アドレス(meiwaku@dekyo.or.jp)に迷惑メールを転送することで、情報提供が可能です。株式会社SANSの事例では、247人から延べ1万2647通の情報提供があったということです。
2015年は、この協会からの通報により、10件の措置命令が行われており、措置命令を受けた会社名と違反内容が総務省ホームページで公表されています。