今、EC市場はどう変化しているのか?5つの視点から解説

ECのミカタ編集部

 今回は、特にEC事業者がこの1〜2年、従来の方法では対応できなくなってきたと感じることが多い点に焦点をあて、「物流/配送」「集客/接客」「多店舗展開」「オムニチャネル」「越境EC」の5つの視点からEC市場を解説する。

物流/配送の多様化

 国土交通省が2015年に発表した「宅配の再配達の削減に向けた受取方法の多様化の促進等に関する検討会」の報告書によると、宅配便の不在再配達により、年間約9万人分の労働力に相当する社会的損失が発生している。そこで、今後取り組むべき内容として、消費者と宅配業者・通販事業者のコミュニケーション強化や、コンビニ受取など受取方法の更なる多様化・利便性向上等の新たな取り組みの推進があげられている。

 また、ECのミカタRESEARCHが2016年11月に発表した「EC市場調査 レポート」(※)によると、ネットショップで商品を購入した際、利用した受取方法で最も多かったのは「自宅への配送(初回配達)」98.2%であったが、次いで「自宅への配送(再配達)」36.0%が続き、3割以上が再配達を利用していることが分かる。さらにスマートフォン利用の場合、再配達率は43.0%にも上る。スマートフォン利用の増える中、再配達への対策が、今後必須のものとなるだろう。同調査では、現状、コンビニ受取の利用率は11.5%、宅配ロッカーの受取が5.3%となっている。これらの新しい受取方法についても、PCよりスマートフォンの利用率が高い。今後、利用できる場所を増やし、消費者の認知度を上げていくことが求められる。

集客/接客の多様化

 総務省が発表した「平成28年版情報通信白書」によると、2015年末のインターネット利用端末は、「パソコン」56.8%、「スマートフォン」54.3%と僅差になっており(ちなみに「タブレット」(18.3%)、これまでの伸び率から2016年〜2017年にはスマートフォンとパソコンの利用率が逆転していることが予想され、また、既に逆転しているとするデータも出てきている。スマートフォンの普及に伴い、ECを利用する状況も多様化しつつある。

 ECのミカタRESEARCH 2016年11月発表の「EC市場調査レポート」(※)によると、ECで商品を検索する際の場所について、最も多かったのは「自宅」98.3%であるが、次いで「職場・学校」24.8%、「電車やバスの中」21.3%となっており、特にスマートフォン利用者では、「職場・学校」34.0%、「電車やバスの中」31.0%。と、自宅外での商品検索が、PC利用者に比べ高い割合となっている。

 しかし、商品を購入する場所については、自宅外での場所の割合が下がる。これは、個人情報の入力などを、不特定多数の人がいる公共の場所では躊躇うことが原因でないかと考えられる。つまり、自宅外で商品を検索して、それを自宅で購入するというパターンができているようだ。さらに、購入する商品の検索にかける時間については、最も多かったのが、「15分以上30分以内」で27.0%となった。

 ちなみにスマホ利用者では、「15分以上30分以内」が29.0%、次で「5分以上15分以内」と「30分以上1時間以内」が同じく20.0%と、PC利用者に比べ短い傾向となっている。これらの利用傾向がある中で、消費者への集客や接客の方法について、変化が求められている。限られた時間の中で消費者の興味を惹くために、よりパーソナライズされた情報を、適切なタイミングで提供することが求められているのだ。

※1.調査方法:インターネット調査
 2.調査対象:年に1回以上スマホもしくはPCを使用してネットショッピングをする20歳〜39歳の全国の男女400人
 3.有効回答数:400人
 4.調査実施日:2016年11月4日(金)〜2016年11月6日(日)

多店舗展開

 経済産業省が2016年6月に発表した「平成27年度我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」によると、2015年のB to C EC市場規模は、288兆2,950億円(前年比3.0%増)、EC化率は27.3%(対前年比0.8ポイント増)と、EC市場の継続した成長が分かる。市場の成長と共に、新規EC事業者も増え続けている。

 スタートアップの事業者にとっては、やはりモールへの出店が手軽であるが、自社のブランド力や利益を高めるためには、独自ドメインの自社サイトが推奨される。また、さまざまな顧客層にアプローチするために、複数モールへ出店する多店舗展開も効果的とされる。ECのミカタRESEARCH2016年11月発表の「EC市場調査レポート」(※)によると、よく利用するショッピングサイトとして最も多かったのは「Amazon」75.3%、次いで「楽天市場」67.0%、そして「Yahoo!ショッピング」30.0%となった。

 1回の買い物で比較検討する品数について、最も多かったのは、「3品」31.5%、次いで「2品」20.0%という結果になった。1回の買い物で購入する平均の品数については、最も多かったのは「1品」49.5%、次いで「2品」22.0%という結果になっている。1回当たりの平均購入金額としては、最も多かったのが「1,000円以上3,000円未満」42.3%、次いで「3,000円以上5,000円未満」35.5%という結果だ。

 ネットショッピングにおいて商品を検討する場合、複数のモール、店舗を比較検討して、予算に合ったものの中から、条件の良いところという風に選ばれることが多い。その中で消費者にアプローチするためには、消費者のニーズに合うように商品情報をこまめに管理する必要があるが、これを人力で行うとなると、膨大な手間と時間がかかる。そこで、それらを一元管理できるシステムも登場している。

オムニチャネル

 EC市場が拡大する中で、実店舗からEC事業への参入、さらにスマートフォンアプリ、ソーシャルメディアや従来型メディア(新聞・雑誌・TV)、カタログ、DM等、あらゆる販売チャネル・情報流通チャネルを経由する「オムニチャネル」展開が活発になっている。特に2014年は「オムニチャネル元年」とも言われ、その勢いが以降も続いている。

 経済産業省発表の「電子商取引に関する市場調査(平成27年度)」では、セブン&アイ・ホールディングス、高島屋、J.フロントリテイリングのオムニチャネル事例が紹介されている。また、こういった大企業に限らずとも、中小事業者でも参入できるオムニチャネルのプラットホームやサービスも生まれてきている。オムニチャネルにより、顧客との交流や、商品を直接試せないというECの弱点を補うことなどもでき、今後のEC市場の新たな可能性となっている。

越境EC

 経済産業省発表の「電子商取引に関する市場調査(平成27年度)」によると、2015年の日本の越境B to C-EC(米国・中国)の総市場規模は2,229億円(対前年比6.9%)となっており、ポテンシャル推計では、2019年に3,338億円の総市場規模が見込まれている。また、2015年の日本の越境越境B to C-EC (米国・中国)の総市場規模のうち、米国経由の市場規模は2,019億円、中国経由の市場規模は210億円となっている。

 2019年までの消費国としてのポテンシャル推計としては、日本は約1.50倍、米国は約1.57倍であるのに対し、中国は約2.94倍の規模になると推計されており、中国市場は引き続き可能性の大きい市場として考えられている。越境EC市場への参入障壁も下がりつつある。越境EC参入というと特に、物流・決済・言語の点が課題となることが多いが、こういった点で気軽に利用できるサービスが増えてきているので、今後もまだ参入事業者が増加していくのではないだろうか。

<ECのミカタ通信 2017 SPRING vol.13より抜粋>

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