ギフトEC「TANP」がコロナで激変したギフト市場、今注目のカジュアルギフトについて語る

西村 勇哉

株式会社Gracia 代表取締役CEO 斎藤 拓泰氏

消費者心理や需要の変化に伴い、ギフトEC市場も大きく変わろうとしている。新型コロナウイルス流行後としては初となる、これからのクリスマス~年末年始のギフトシーズンを前に、EC事業者はギフト市場をどのように捉え、対応していくべきなのか。お客様満足度No.1(※)のギフトECサイト「TANP(タンプ)」を運営する株式会社Gracia 代表取締役CEOの斎藤 拓泰氏に話を伺った。

※2020年2月 日本マーケティングリサーチ機構調べ

「人のつながりを豊かにする」ために。ECサイトから物流まで全てをフルスクラッチで構築したTANP

――TANPはどんなきっかけで誕生したのでしょうか?

斎藤氏:父の誕生日プレゼントを購入するためにECサイトで色々と探したのですが、なかなかピンとくるモノに出会えなかった、という私自身の体験がきっかけです。百貨店で商品を選んで宅配便の手配をするのも手間だし、一方で、大手ECモールで買うと何だか味気ない……。ファッションやインテリアなどの領域に特化したサイトはすでにありますが、カテゴリを超えた品ぞろえの中から気軽に贈り物を選んでもらえる、そんな場所はなかなかありません。

ギフト市場は10兆円規模と言われる中で、贈り物をしたい人たちのニーズに全面的に応えられるサービスを作ることは、社会的に意義があることじゃないかと思いました。

――今でこそ、ECにおける“おもてなし”を意識するブランドも多いですが、少し前までECは「便利で早い」ことが重要視されていました。

斎藤氏:これまでの10年はECが普及していく時代で、今までネットで買えなかったものが出回るようになってきました。これからの10年は、本当に欲しいモノをどう選ぶか、という志向が広がっていくと考えています。その中で、お客様の誕生日や結婚、出産などのさまざまなシーンに合わせて、いかに良い商品を、優れたサービスと一緒に提供できるか、という体験の向上を当社では重要視しています。


――その想いは、株式会社Graciaのミッションにも通ずるものがありますか?

斎藤氏:当社は「大切なひとときを彩り、人のつながりを豊かにする」というミッションを掲げています。あくまでギフトは手段であって、目的ではありません。誰かと仲良くなりたい、誰かに恩返ししたいなど、多様な想いがあって、私たちはその手段としての場所を提供する。良質なギフト体験を通して、人間関係やつながりが深くなっていく。そんなことが実現できたら、社会はもっと良くなっていくのではないかと思っています。

丁寧に人の手でラッピング

――そのミッションを実現するためにTANPが大事にしていること、そして他社にはないTANPならではの強みはどんな部分でしょうか?

斎藤氏:前述の通り、当社ではギフトを渡す“体験”が大事だと考えています。そのために自社で倉庫を保有し、ラッピングはもちろん、名前を彫ったり、刺繍をしたり、豪華なボックスでお届けするなどの演出をセットで提供しています。ECでもクオリティの高い贈り物ができるよう、ロジスティクスにはこだわっていますし、今後も常に改善を図っていきます。

――物流はなるべく効率的にして費用を抑えるのが一般的ですが、あえて手間をかけるなど、トレンドに逆らっているわけですね。

斎藤氏:現在TANPは、お取引社数でいうと約800ブランド、SKUにして約12,000点ほどの取扱いがあります(※2020年7月末時点)。パートナー企業様の視点で見れば、少なくとも売上の2~3割はギフト需要だと言われています。しかし、ギフト需要に焦点を合わせ、自社の物流オペレーションから注力しようとすると、コスト高になってしまいます。体制整備が容易ではない部分を当社が代行する形で、お客様の伝えたい気持ちを表現できるギフトECを、パートナー企業様と共に作り上げていきたいです。

お客様の気持ちを伝えるものであり、細やかな対応が求められるギフトシーンでは、一度信頼を失ったら、取り戻すのは容易ではないでしょう。そのため、商品によってサイズや形状が異なる中でも、細やかな対応ができるようオプションやロジスティクスのオペレーションを工夫することで、お客様の求めるサービスを構築していくことができると考えています。

自社物流倉庫の様子

――ここまでギフトに特化した体制を作り上げるまでには、困難も多かったのではないでしょうか?

斎藤氏:ギフトECを追求したシステムが市場にないこともあって、創業から今に至るまで、ECサイトはもちろん、倉庫運用・WMSも全てフルスクラッチで内製しています。物流は3PLを検討したこともありますが、多品目×ラッピングという課題は当社だけのものですし、パートナー企業様もお客様も当社の品質に期待いただいています。さまざまな失敗はありますが、お客様のお話を聞いて、自分たちが実現したいことを洗い出して、常にアップデートに取り組んでいます。

フォーマルな季節の贈り物から“カジュアルギフト”への転換

――2017年にTANPがローンチしてから今までの3年間、ユーザーニーズに変化は見られましたか?

斎藤氏:「ギフトをネットで買うことに抵抗があったけど、TANPを使ってよかった」というお声はよくいただいていて、リピーターのお客様も増えています。強化してきたオプションを評価いただき、「あえてネットで買う」ベネフィットを感じていただいていると思います。お客様の年齢層でいうと30代が多いですね。特に周りの方の結婚や出産、お仕事では社内外のお付き合いに、と公私共にギフトを贈る場面が多いのかもしれません。

――お中元やお歳暮といった日本ならではのギフト市場についてはどうでしょうか?

斎藤氏:当社でもお歳暮などはニーズ喚起に取り組んでいますが、形式的なフォーマルギフトは衰退気味です。コロナの影響もあるのか、外出する機会も減り、義務感で贈っていたものが「別に贈らなくてもいいのでは?」とリセットされたといいましょうか。百貨店の催事場に並んでお歳暮を買おうとすると、時間も体力も必要となる、まさに一大イベントです。

ここ半年で本当に大切な人や家族との時間が増え、価値観も変わってきたのではないでしょうか。これからは形式的なものを配るのではなく、身近な人に気持ちを伝えるための“カジュアルギフト”が増えていくと考えています。当社ではそんな気持ちをカタチにするための施策やオプションの充実に力を入れています。

開封した時の体験が上がる同梱

――具体的には、どのようなことに取り組んでいますか?

斎藤氏:一例でいうと、これまで一般的にギフトラッピングとして提供されていたようなギフトボックスに加え、より豪華なギフトラッピングのオプションをご用意しています。宝箱や宝石箱のような、ボリュームのあるボックスにお花を同梱したり、写真付きのメッセージカードを贈れるようにするなど、「もっと気持ちを伝えたい」という需要の解像度を上げていきたいです。TANPに掲載しているオプションは、何度もトライを重ねて、一定の需要があったものを残していますが、まだ最終形ではないと思っていますので、常に改善していきます。

――“カジュアルギフト”の需要増の他にも、新型コロナウイルスの影響はありましたか?

斎藤氏:以前は、注文されるお客様ご自身で商品を受け取って、それを相手に手渡しするケースが8割を占めていました。それが最近では、相手のご自宅に直接お届けするパターンが増えています。TANPには相手の住所が分からなくても、購入後に発行されるURLをSNSやメールでお相手に伝え、お相手の方が受け取り住所を入力できる機能があるのですが、その機能の利用率も大幅に上がりました。帰省ができなかったり、結婚式が中止になったりと直接会う機会が減ったので、気持ちを伝えるためにTANPをご利用いただいているのだと思います。ギフトは手渡しで贈るもの、店舗で買うものという既成概念はどんどん崩れていくでしょう。

――メーカーからのアプローチも増えたのではないですか?

斎藤氏:おかげ様で多くのお問い合わせをいただいています。オンラインでの買い物需要の増加、また新型コロナウイルスの影響が今後も続いていく可能性を考慮した時に、ECはまず候補に挙がるのでしょう。大手ブランドとのお取引も増えています。各社が事業モデルの転換を目指されていることが、当社にとっても転機になっています。既存のパートナー企業様も新商品の展開に積極的です。

――商品軸から見た市場の変化はありましたか?

斎藤氏:今までギフトとして贈るものではなかった商品が売れている傾向が見られます。顕著な例がマスクですね。今年はアパレル各社からもマスクが販売されています。4月には、TANPで人気のコスメやアクセサリーに次いでランキング3位になったこともありました。あとは“おうち時間”の増加とともに、入浴剤などご自宅で日常的に使えるアイテムが増えました。他には頭髪ケア用品など、一見ギフトとは親和性のない商品も売れ始めていて、ニーズの多様化を感じます。

ギフト商戦のカギは、コロナによって激変したトレンドの把握。TANPが目指すもの

――今年の11月~12月、翌1月のギフトシーズンに向けて、TANPとしてはどのような対策を立てていますか?

斎藤氏:今年は引き続き家族の時間、ひとりの時間が増えると予測しています。マーチャンダイジングの面でいえば、クリスマスにはお子様向けのおもちゃやケーキ、また引き続き外出の自粛が続くことを見越した「お家グッズ」の充実を図っています。

――メーカーやEC事業者はどのような準備をするべきだと思いますか?

斎藤氏:当たり前ではありますが、需要を予測することは大事です。例年とはトレンドも変わってくるので、どれだけ在庫を確保して、発送の体制をどうするか、例年以上にケアしなければなりません。商材でいうと、インテリアや雑貨や食品などコロナ禍でも売れているものと、伸びていないものを見極める必要があります。海外からの輸入品が期日通り入ってこない可能性があるなど、今年は本当に何があるか分かりません。目に見えるリスク以外にもさまざまな視点でシナリオを想定し、通常以上に早期で準備を進めることが求められます。

――近い未来、ギフトのあり方はどうなっていくとお考えですか? その中でTANPが目指す方向性についても教えてください。

斎藤氏:より気軽に良質な体験が得られるサービスが普及すれば、ギフトもハードルが下がり、いい意味で “日常的に行われるもの”になっていくでしょう。日本は物資的に豊かになった一方で、インターネットやSNSの普及により、一部では人間関係はシステマティックになっているという側面もあります。新型コロナウイルスの影響も含め、もっと今あるつながりを大切にしたい、家族や友達と深い関係を築きたいという潜在的なニーズがあるはずです。気持ちを表現するものとして、もっとカジュアルに贈り物をする文化が根付いていくのではないかと期待しています。

パートナー企業様の視点で言えば、安易に「低価格であること」を求められないギフトは、コストや労力をかけて作り上げた商品を、適切な価格で売買できる市場でもあります。優れた商品が作り続けられるためにも、その市場は守っていかなければと考えています。

TANPは、安全かつ気軽に気持ちを伝えられるプラットフォームとして、価値を高めていくことを目指しています。ギフトを通して人間関係が良好になる、購入+αの体験を増やしていけたら、ミッションに掲げた「人のつながりを豊かにする」ことの実現に近付けると思います。そのために「商品を手に取れないECでもクオリティの高いギフトを贈ることができる」という認知を広げるとともに、商品の拡充、ブランドの積み上げ、ロジスティクスや機能の改善などを着実に積み上げていきます。

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記者プロフィール

西村 勇哉

メディア運営事業部 編集チーム所属
見た目はヒョロイのに7歳から空手を習っています。
他にも水泳、サッカー、野球、弓道の経験有り。
たまにメルマガに登場しますが乃木坂46の話しかしません。
連絡先→nishimura@ecnomikata.co.jp

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