BtoB-ECサイトで業務の自動化を実現! デジタル化(DX)を促進する秘訣とは?
コロナ禍の影響もあり、BtoBビジネスにおいても業務のデジタル化に取り組む企業が急速に増えている。株式会社西武ライオンズ(以下、西武ライオンズ)でも、BtoB ECサイトを立ち上げることで受注・在庫管理、出荷などの業務を自動化し、大幅に効率を上げている。同社のMD事業部 石川知明氏と、同社のデジタル化(DX)促進をサポートしている株式会社久(以下、久)取締役 小山智充氏に、BtoBビジネスの課題や、その解決方法を聞いてみた。
埼玉西武ライオンズのグッズを卸とスポンサー向けに販売
――デジタル化を行う以前の、西武ライオンズ様のBtoB取引のやり方について教えてください。
石川 私のいる事業部ではライオンズグッズの販売を行なっています。BtoCのECサイト「ライオンズストア オンライン」と、卸やスポンサー向けにBtoBのECサイト「ライオンズBIZ」の2つを運営しており、私は後者を担当しています。商材は、球場で通常販売しているグッズのほか、受注生産をおこなっているグッズもあります。商品数は卸で2200点、BtoCのECでは6000点、合わせて2万SKUほどあります。売れ筋はユニフォーム、タオルなどの定番グッズ。卸先のメインは他球場や書店、スポーツショップなどです。またBIZをご利用いただいている方は900以上にのぼります。
「BIZ」を立ち上げる前は、業務を非常にアナログ的に行っていました。具体的には、営業担当を通して、メール等で注文を受け、私が倉庫で在庫を確認し、確保して発送するというものです。
在庫が足りない場合はメールで代わりのものをご提案し、数量を確認し、さらに足りなければ他店舗やメーカーの在庫もつき合わせながら代わりのものをご提案し…やりとりが延々続くこともありました。
受注1件ごとに処理1時間…限界を感じてデジタル化を検討
――デジタル化を決めたきっかけは?
石川 窓口を一本化したいこともあり、この業務を5年の間ずっと1人で行っていたのですが、1件処理するのに1時間ほどかかっており、効率の悪さを感じていました。
また私はスポンサーさまからの受注処理だけでなく、シーズンシートを購入いただいた方の特典消化の業務も担当しています。昨年からはコロナの影響でイベントができなくなったこともあり、グッズを購入して特典を消化するファンの皆さまが増えてきたことから、さらに忙しくなり、デジタル化に踏み切ることにしました。
ちょうどBtoCのECサイトを久さんのサポートで立ち上げていたので、BtoBもお願いすることになりました。今となってはもっと早くお願いしていればよかったと感じています。
「Bカート」を活用し、BtoBビジネスのデジタル化を促進
――久様ではどのようなサービスを展開されているのでしょうか。
小山 BtoBビジネスのデジタル化をサポートするほか、BtoCのECサイトのコンサルティング、構築、運用などのサポートから、システム開発、企業研修まで、幅広い業務を展開しています。BtoBビジネスのデジタル化においては、BtoB EC専用のカートシステム「Bカート」の認定パートナーとして、さまざまな企業の業務効率化のリクエストに対して、「Bカート」と自社開発のECデータ変換システム「ECコネクター」を連動しながら対応しています。
BtoB専用のカートシステムを導入し、煩雑な業務を自動化
――BtoBのデジタル化は、どのように進めていくのですか?
小山 西武ライオンズ様の事例でお話ししますと、まずは石川さんが日頃されている業務フローを伺い、仕組み化も含めて工数をどう減らし、業務をいかに効率化するかを検討しました。
たとえば弊社で倉庫も保有しているので、BtoB とBtoCの倉庫を統合し、弊社で受注管理もしながら、よりスムーズに出荷していくことをご提案しました。
そして、機能面で柔軟性のある「Bカート」も組み込みました。たとえば西武ライオンズ様には、スポンサー特典として10万円分のライオンズグッズを買えるという企画があります。以前は石川さんがメールで注文を受け、アナログで処理されていましたが、在庫や特典金額の残高を確認したり、メールでやりとりする作業が非常に煩雑でした。
そこで、「B カート」に10万円の上限金額を設定し、購入金額ごとに残高からマイナスしていくJavaScriptを記述。購入金額が10万円を超えるとカートに進めなくなる制御をかけながら購入できる仕組みを作りました。スポンサーごとに異なる上限金額を設定できる対応もおこなっています。
また「Bカート」に連動する形で、ECデータ変換システム「ECコネクター」も使用。西武ライオンズ様ではBtoCのECサイトの商品マスターがベースにありますが、基幹システム側で保有するJANコードも別で存在します。そこで「ECコネクター」を使ってそれらを照合し、商品コードにSKUコードを付与させたデータをBカートに反映。スポンサー向けの商品については、基幹システムでの管理上、SKUコードがないと処理しづらいため、こうした仕組みを実装しています。
デジタル化にあたっては、お困りの点だけを改善するのではなく、業務フロー全体を見ながら、どこかがマイナスになるとしても、トータルでなるべく大きなプラスになるようなご提案を心がけています。
1時間の業務が10分に短縮、コロナ禍での効用も
――自動化の結果、どのような効果がありましたか。
石川 1時間かかっていた業務が10分で終わるようになりました。受注後、倉庫まで在庫を見に行ったり、ない場合はメーカーに確認したりする手間がなくなり、今はパソコンだけで業務を完了できるため、相当楽になりましたね。
BIZではスポンサーさまもリアルタイムで在庫が見られるので、問い合わせも圧倒的に減りました。お客様にとっても時間を選ばず注文ができるようになったことは大きなメリットです。またこれまで注文を受け取っていた営業部門も、今はBIZのアカウントをお渡しするだけで、お客様自身で注文していただけるようになり、助かっています。
スタート時にBIZをご利用いただいていたのは、スポンサーさまやシーズンシートの購入者さまなど合わせて100程度でしたが、今は10倍近くに増えているので、あのタイミングで「Bカート」を導入していなかったら、相当きつかっただろうと思いますね。
「Bカート」を導入したことが、コロナ禍で思いがけず役立ったとも感じます。試合ができない時期には、シーズンシートを持っている方に上限金額を設けてグッズを購入いただける企画をしましたが、先んじて「Bカート」の仕組みを取り入れていたことで、お客様の上限金額ごとに、サイトで見せる商品を変えるなどしながら、当社もお客様も使いやすい形で展開できています。
また当社では、BIZの商品を埼玉県にあるECサイトの倉庫から移動させる出荷指示のやりとりを「Bカート」でおこなっています。非常に自由度のあるシステムなので、活用の幅が広いと思います。
――業務に時間がかからなくなった分、空いた時間はどのように活用されていますか。
石川 売上拡大に繋がるプロモーションや、お客様の利便性を向上させ顧客接点を磨く施策を考えたり、新たなシステム導入を検討したりなど、これまでの業務フローでは確保しづらかった仕事に時間を使えるようになりました。
社内業務の効率化と、お客様へのサービス拡充を強化
――今後の展望をお聞かせください。
石川 現在、BIZでは1万円以上の購入で送料無料としていますが、欲しい商品の合計額がそれ以下の場合、買い控える方も多いです。そこで試合開催日に送料を負担することなく球場で受け取れる運用体制を構築しています。単に球場で購入していただく方法をとれば、試合開催日には長い行列ができてしまいます。事前に球場受け取りとして注文・決済ができ、スムーズに受け取れるようにしたいと思っています。そのための課題は多いのですが、久様に伴走していただきながら解決していきたいと考えています。
小山 現在、西武ライオンズ様のBtoCのEC向けのグッズの在庫は弊社でまとめてお預かりしていますが、球場店舗の在庫は埼玉県の倉庫で保管されているものもあるので、それらをできる限り統合し一元管理した上で、球場受け取り分を現場のバックヤードでも保管できるようにすれば、在庫管理の運用面を考慮しつつ、より良いユーザー体験をご提供できるのではないか。というお話をしております。
また、球場や店舗での受け取りについては、「ECコネクター」の中に受付システムを別途構築して、該当する注文に関しては出荷データを倉庫には流さずに、お客様側に受け取り用のバーコードメールをお送りし、現地でバーコードを読み取り商品を受け取れる仕組みを構築することも可能です。他社事例になりますが年始の福袋や家電の販売などで、この仕組みを活用し運用をおこなっているケースもございます。
その他には、営業の方がスポンサーに直接納品するような個別の注文があったりするなど、西武ライオンズ様は多彩なチャネルをお持ちですので、「Bカート」と「ECコネクター」がうまく連動するようなご提案ができればと考えています。
今後、BtoBでもECサイトを立ち上げる企業は増えていくと思いますが、日頃アナログで行なっている業務をどのようにデジタル化するかで悩む方は多いと思います。当社では様々な企業に対してECを活用した業務の効率化をお手伝いしてきた経験を生かし、ご要望に対して親身になってご提案をさせていただきます。お気軽にお問い合わせいただければ幸いです。