「ネットショップ担当者フォーラム2014」リポート「これからのEコマース パネルディスカッション」

これからのEコマース パネルディスカッション

モデレーターを務めた株式会社インプレス ネットショップ担当者フォーラム編集部の瀧川正実氏


株式会社インプレスはデジタルマーケティングとECの最新情報を50セッションの講演にまとめた「ネットショップ担当者フォーラム2014」「Web担当者Forumミーティング2014秋」を11月12日、13日の2日間行った。

今回は12日の講演の中より業界のキーマンを集め行った「これからのEコマース パネルディスカッション」の模様をレポートする。

今ディスカッションのモデレーターは、
株式会社インプレス ネットショップ担当者フォーラム編集部の瀧川正実氏。
パネリストに、
オーマイグラス株式会社 代表取締役CEO 清川忠康氏
株式会社三越伊勢丹 顧問兼営業本部EC事業部長 中島郁氏
有限会社スタイルビズ 代表取締役 村山らむね氏
Williamson-Dickie Japan Limited 北アジア物流・IT部長 白川久美氏
という4人を迎えた。

業界人が振り返る2014年

オーマイグラス株式会社 代表取締役CEO 清川忠康氏



物流業界の値上げ、流通業界では大手のオムニチャネル推進など、様々な動きがあった2014年。パネリストの4人にとって起きた大きなトピックは何だったのか?という質問からディスカッションはスタートした。

オーマイグラスの清川氏は自身の専業も踏まえ、EC大手米Amazonの実店舗展開が非常に印象深い出来事であったとし、自身の運営するオーマイグラス初の実店舗を渋谷ロフトにオープンさせたことに触れた。
清川氏はロフトへの出店に関し、自分たちのような小規模EC事業者が実店舗を出すことは資金的に非常に難しいとし、ベンチャーキャピタルから約15億円調達できたからこその、レアなケースであることを語り、インターネットだからこそできる運営をしていきたいとした。
そして、実店舗がECの倉庫を兼ねたり、運営方法においても実店舗とECの境がシームレスになっていく流れが加速していた2014年。来年も同様の流れが続いていくのではないかと分析した。

eBayがPayPalをスピンアウト

株式会社三越伊勢丹 顧問兼営業本部EC事業部長 中島郁氏



株式会社三越伊勢丹 顧問兼営業本部EC事業部長 中島郁氏は、eBayがPayPalをスピンアウトするという出来事が印象的で驚いたという。同氏がeBayグループに在籍していた2年間は、成長戦略のど真ん中にPayPalが存在しており、こんな出来事はありえなかった。eBayのマーケットプレイスよりもPayPalのほうが売上が上がるという予測の中でビジネスプランが書かれていただけに、今後のオムニチャネル構想やオフラインを含めたプランがどうなるのかとても興味があるそうだ。
また、同氏はオムニチャネルが乱立する最近の風潮に、以前からやっていることは変わっておらず、本当の意味でのオムニチャネルがまだ実現できていないという印象を2014年に持つようだ。

増税と円安の影響

有限会社スタイルビズ 代表取締役 村山らむね氏



有限会社スタイルビズ 代表取締役 村山らむね氏は、買い手と売り手を支援する2つの立場で今年を振り返る。4月以降、明らかに売れ方、買い方が変わるほど、消費者に大きな負担としてのし掛かっていた消費税増税。そして、売り手を支援する立場としては、円安の影響で日本の製品が価格的に優位に立っており、越境EC事業者にはとても良い追い風が吹いている現状に可能性を感じているとした。

11月11日の中国セール事情

Williamson-Dickie Japan Limited 北アジア物流・IT部長 白川久美氏



Williamson-Dickie Japan Limited 北アジア物流・IT部長 白川久美氏は、自身の転職経験から多くのエージェントと話すことが多いという。その中で、オフラインメインの有名企業によるEC進出プロジェクトなどの相談を多く受け、EC化の大きな流れを感じ、驚いたという。
また、中国における世界最大規模の売上が話題となった11月11日の独身の日セール。日商数百万単位のDickies Chinaの売上も、たった1日で前年比約200%の2億近くに及び、中国市場の規模の凄さを実感したようだ。

オムニチャネル、実店舗化の狙い


ここで、モデレーターの瀧川氏が、オーマイグラスの実店舗化に関し、清川氏にコメントを求める。
オムニチャネル化の流れになった際、各チャネル間での縄張り意識のようなものは、少なからず様々な会社に存在していると始めた清川氏。そのような店側の都合や縄張り意識は利用者にとって、実店舗だろうがECであろうが関係のない問題だ。お客様へのより良い対応や購買環境を作る事が中長期的に会社を成長させること。そして、接客や商品提供の仕方も、ECで培ってきたやり方を取り入れることで、店舗業務のオペレーション効率の改善や、事業構造を変えられる可能性があるのではないか語った。

中島氏はトイザらス在籍時、立ち上げ時に別会社化したことでとても苦労したこと語った。しかし、店舗での返品引受、TV CMや買い物袋へのURL表示など、その当時より「いつでもどこでもトイザらス」という言葉を用いて、クロスチャネルやマルチチャネル化を推し進めてきたという。
また、ジュピターショップチャンネルに関わっていた頃にも「いつでもどこでもショップチャンネル」というキャッチフレーズを用いて、携帯、PC、電話、カタログ全てを一元管理し、今言われるオムニチャネルの定義に一番近い事業構造ができていたという。

白川氏はここで、発展しているという韓国EC事情を語る。例えば、ECでコスメを購入すると、ロッテ百貨店の店員が店舗在庫を卸し、駐車場で待機する物流トラックに商品を渡すというフローで在庫を活用していたという。インフラ、EC事情共に発展している韓国では、店頭在庫切れや過受注にも対応可能なほど在庫管理がしっかりしており、それは日本でも対応できるオムニチャネル施策の一つではないかと語った。

店員とのコンタクトポイントという点では、店員がオムニチャネルを理解し顧客との関係を良好に保てている実例として、無印良品やパルコを挙げ、現場もアガる購入体験の重要性を説いた村山氏。清川氏の語っていた異なるチャネル間での縄張り意識の問題にディスカッションは進んだ。

急成長中のジュピターショップチャンネル時代に入社した中島氏は、EC事業部立ち上げの苦労を交え、結果を出していくことで縄張り意識を無くすことが可能であると語る。また、会社の中でECやネットビジネスの新規事業を立ち上げる際は、既存のビジネスでしっかりとした実績を持った人を採用する効果を説明した。実力者の持つ経験や実績に基づいた説得力の強さは、縄張り意識を壊すのに一番最適な方法だという。

ECの事業を上手く回すコツ


モデレーターの瀧川氏はEC事業を回していく秘訣とは何かを中島氏に尋ねた。
中島氏はブレてしまうと上手くいかない「どうやってもそれを立ち上げる」という強い意思が一番大事だという。そして、成功させるために抑えておきたい3つのポイントを説明に進む。

1.まずはコンタクトポイント。露出を増やす
既存のリソースをしゃぶり尽くしてどう徹底的に活用するかが重要。実店舗のチラシ、店内での露出、名刺だろうがボールペンだろうが徹底して露出を意識し、お客さんに一度でもサイトへ来てもらい認知してもらうことが大事。うまく行っていないところはまず、これが出来ていない。

2.そしてコンテンツ。商品を増やす
ECは特に多くの商品と情報を見ようとする利用者が多いわけで、商品数が少なければ余程セレクトしてない限り売れない。また、その商品の説明が少なければ現物も見ていないので、購買には繋がりにくい上にSEOにも引っかからない。ここが徹底出来ていなければ、商品が売れないのも当然であるという。品揃えと商品の情報はECの要であると中島氏は指摘する。

3.ユーザビリティ。店作り
どのように商品を見せてくか、利用者に提案していくか、使いやすくするか、と色々な方法があると思うが、実店舗でも同じ話で何か新しいことをやれば良いという話でもない。今出来ている基本をしっかりとこなし、どこまで、何ができているかを計りながら上と相談し、計画を立て、全社的に実行できる形を作っていくことが大事なのだという。

EC業界のキーパーソン、まさに実績のある実力者たちによる説得力のある話は、来場者の持つ悩みの数だけ響いていたように感じた。
それぞれの立場で様々な話題が進む中、職場の縄張り意識に関する話は、EC業界に限らずあらゆる職場に存在し、問題となっているところもあるだろう。新規事業であろうが、ECであろうが、人間関係による問題の厄介さが実感できたディスカッションであった。



−編集部−