越境ECの勝ち組企業に聞く!好調な本当の理由とは?

石郷“145”マナブ

5年前から越境ECで成長の一途を辿る新日本機能食品

 株式会社新日本機能食品(本社:岡山県岡山市 代表取締役 小林憲司 以下、新日本機能食品)は、近年、越境ECで売上げを伸ばしているとの話をキャッチし、代表取締役 小林憲司氏に取材を行うこととした。アリババでの展開ではアリババ自体が認める成長店鋪として取り上げられ、みずから展開する卸サイトでの海外向けの商品販売も躍進している。

 もとよりこの新日本機能食品は、国内でサプリ等の健康食品や雑貨、化粧品などについての卸売業と小売業をやっており、そのイメージが強い。むしろ、海外向けがそこまで伸びているのは筆者には意外だった。「ここ最近で海外向けが増えたという背景には、新日本機能食品の取組み自体に海外向けを意識する大きな変化があったからなのでは」と小林氏に聞くと、帰ってきたのは「実はそれほど、根本は変わっていないんですよ」というこれまた意外な答えだった。

 小林氏が海外を意識し始めたのは、今から遡る事5年ほど前だ。その頃から輸出が増える事を予感しアリババでの展開を始めた。アリババは、直接海外のお客様に買っていただくというもの。とはいえカートはなかったので、直接メール等でやり取りをしお客様に見積もりを見ていただいた後、その金額で折り合いがつけば前金で回収するかあるいはPayPalを活用する等して、商品を出荷していた。言語の問題については、英語でのやり取りを出来るようにし、相手との間で契約書が必要であれば国際弁護士を活用して契約を結び、さらに、海外のPL保険にも対応できるようにと、一つ一つ、地道にやり続けた。それに伴って売上げが伸びてきたのは、そこでの真摯な対応が海外から評価されたのではないか、と当時を振り返る。

卸サイトでも中国の店鋪からの注文

卸サイトでも中国の店鋪からの注文

 時を同じくして、卸サイト「kenko卸.com」でも主に中国からの問い合わせが増え始める。もともとは同サイトは日本国内向けの卸サイトで、扱う商品はサプリ等の健康食品、雑貨、化粧品等。日本語で書かれているものの中国人が運営する中国人向けのインターネット通販サイトの店鋪から問い合わせが入り始め、今では「盆と正月がずっと続いているような状態」と話すほど、受注が来ていると言う。

 当初は、アリババでの動きも見つつ、中国の店鋪で売れると思ったものは積極的に入荷し、SEO対策を徹底することで、同サイトを中国の人に見つけてもらいやすくした。海外の対応も徐々にノウハウとして蓄積されていたので、それがここでも最大限に生きて、スピーディーな対応へと繋がり、店鋪も安心して、商品をリピートし、その度合いが大きくなっていっているというわけだ。

 しかし、小林氏が強調するのは、冒頭にもあった通り、「昔からやってきたことと何ら変わらない」ということだ。新日本機能食品は、今から14年ほど前、2002年にKenko.卸.com( http://www1.kenko064.com/ )を開始した。勿論、日本向けにだ。その後、美容健康商材等での伸びもあり、大きく成長したが、ここで意識した事は商品の点数を増やす事、そして、それを説明するページの拡充と、先ほどにもあったSEO対策なのだ。この姿勢に何ら今も変化はないのだ。

 現在の商品点数は、約6万点にものぼる。それだけの商品点数を持ちながら、多くの商品は在庫を抱えている。しかし、その殆どが常に回っている状態で、デットストックはない。その理由はなぜか。商品を説明するページを作成し、実際にそれに基づいて商品をテスト販売していく。何分間で、何個売れたら合格!と言う具合に、効果測定をした上で、商品を仕入れ、伸びる商品に関しては積極的に在庫も抱えるので、卸先も商機を逃す事はない。不思議なもので、日本で売れるものは海外でも売れる。この仕組みがそのまま同社への信頼に繋がり海外でも成功事例となっているといえよう。

それぞれの強みを生かせば、越境ECでも成功できる

 同社が長年、自らの卸サイトを浸透させる為に培ったSEO対策は中国人などの海外の人にその存在に気づいてもらうキッカケとなり、そこには確実に売れる商品が揃っている。それはデータに裏付けされているから、店鋪も安心して売れるし、実際に販売して売れる。ゆえに、その信頼はどんどん大きく事となっていくという、良いサイクル。結果、中国の小売店の印象がアップする事で、小売店同士の口コミで新たな店鋪を呼び込んできてくれて、卸先の幅がさらに広がっていく。これが、成長の理由なのだ。

「長年、地道にコツコツやってきた事が、越境ECにおいても生かされただけ。越境ECだからと言って構える事無く、それぞれの会社の持つノウハウをしっかり海外でも浸透できれば、きっと越境ECで新しいお客様を切り拓く事が出来ると思っています」。その力強い言葉がどんな企業でも越境ECが出来る可能性がある事を物語っている。


記者プロフィール

石郷“145”マナブ

キャラクター業界の業界紙の元記者でSweetモデル矢野未希子さんのジュエリーを企画したり、少々変わった経歴。企画や営業を経験した後、ECのミカタで自分の原点である記者へ。トマトが苦手。カラオケオーディションで一次通過した事は数少ない小さな自慢。

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