【第一回】越境ECと決済の進化~利用者約1.9億人のPayPalが語る決済~

野田 陽介

【第二回】フィンテック法規制
https://www.ecnomikata.com/column/11154/

【第三回】意外と知らない海外ユーザーの実態
https://www.ecnomikata.com/column/12069/

PayPalが見る大きな3つのトレンドは?

 こんにちは。PayPal(ペイパル)の野田陽介です。早速ですが、皆さまの中でPayPalを日頃使っている方はどれ程いらっしゃるでしょうか?ECに携わっている方であれば「名前は知っている。決済でしょう?」もしくは「海外でものを買う時に使ったことがある」という方は多いのかな、と。一方、IT業界から一歩外に出れば「聞いたことがない」や「名前知ってるけど、どうやって使うのか分からない」という方が多いのかな、と思っています。現に私の両親(60代後半/日頃から楽天、Amazonは使用)は「PayPalって何?」と言ってました。

 ご存知ない方のために、簡単にPayPalのご紹介をしておきます。創業は1998年にピーター・ティール氏とマックス・レヴチン氏らがアメリカで創業したConfinity社が母体となっています。当時はインターネット・バブル真っ盛り。同時期にアメリカではGoogle(98年)やeBay(95年)、日本ではヤフー(96年)や楽天(97年)が創業した時期でもあります。その後、Confinity社はイーロン・マスク氏率いるX.com社と統合し、今の社名PayPalと改名しています。創業時から一貫して”デジタルウォレット”をコンセプトに挙げており、安心・安全・簡単に人々がお金のやり取りを出来る世界を目指し、今日に至っています。

 元々Confinity社は、Palm PDA(今思えばスマホの原型ですね)のユーザー同士が端末間で自由にお金のやり取りを可能にする暗号化技術が基盤にありました。それを基にe-mailで簡単に送金できるようになり、それが当時オークションで急成長していたeBayユーザーにうけ、インターネットの普及に伴い拡大していきました。現在は、取引きの不正などによる被害を未然に防ぐため、2,000人以上の専任体制を整えており、創業してから一貫して買い手・売り手両者に安心してお使い頂けるサービスを根幹にしています。

2000年当時のトップページ

 現在ではグローバルでアクティブユーザー約1.9億人、そして約1,500万の事業者の方々にご利用頂いております。去年一年で約30兆円の取扱高、そして件数に換算すると一秒間に155件の決済インフラを担っています。私、そんなPayPalで日本の事業開発を担当しており、主にスタートアップやパートナー様、そして越境分野を担当しています。決済と言う立場上、我々は売り手と買い手の両者に様々な機能を提供していますが、本コラムでは主に事業者の方々に有益な情報をご提供していきたいな、と考えています。我々から見るEC、およびその周辺トレンドを大きく3つの視点でご案内します。

 まず一つ目が国境をまたいだEC、”越境EC”について。今週(※コラム執筆8月4日)はちょうどメディアでも大きく越境EC関連のニュースが報道されました(「アマゾン、日本サイトで中国語版を追加」「日通がアリババと越境配送で提携」)。昨今のインバウンド需要も相まって、越境ECについてより世間の注目度が増しているのを感じます。具体例として以下がGoogle Trendで「越境EC」を検索した結果になります。2015年に入ってから急激に「越境EC」の検索数が伸びており、この一年強で大きく世の中の関心が高まったことが伺えます。

Google Trendで「越境EC」を検索した結果

 PayPal年間取扱高の約22%は越境で占めており、年々増加傾向にあります。越境ECに関してはクレジットカード番号を入力したくないユーザーが多いことや、我々が各国の通貨に対応していることから、現在多くの越境EC事業者様にご活用頂いております。その中で我々が日頃みている越境ECで成功するポイント、または各国の特徴についてデータを用いながらご案内していきます。

 二つ目に日本のEC全般におけるトレンドと、そこに我々のような決済がどのように位置付けられるかを考察してみたいな、と思います。日本のEC市場を俯瞰してみますと、楽天、アマゾン、ヤフーの3強が大きく寡占化して行っているのが見えます。私の試算ですと、2010年当時この3強のEC市場に占めるシェアは約20%でしたが、直近の2015年、この5年間で約30%まで上昇しました。

 今後は目的買いのユーザー、特にコモディティ商品の購入はこの3強に集約していくのではないかな、と考えています。探しているものをより探しやすく、より安く、そしてより簡単に決済できることがポイントに。一方で他ECについては購入が目的ではなく、ふらっと立ち寄る感覚の「メディア化」が進むのではと思っています。そのトレンドの中、メディアから直接購入が出来るような決済(Contextual Commerceと呼んでいます)をご案内します。

 最後に二つ目と少し重複する部分がありますが、我々が考える決済の未来について。冒頭ご案内しましたが、創業時から掲げています”デジタルウォレット”についてどのようなことを解決しようとしているのか、に重点をおいてご案内したいと考えています。16桁で管理しているクレジットカードのデザインは50年前に考えられたもので、本当に今後もこの形が継続されていくのか、と言う点も含めてPayPalの考える未来を紹介します。

 それでは、次回からPayPalから見る越境ECについて詳細をご案内していきます。


著者

野田 陽介 (Noda Yosuke)

 事業開発部 部長

 電機メーカーで設計開発に従事後、ベンチャーキャピタルにて米国を担当。ITにフォーカスした投資および日本におけるビジネスディベロップメントを担当した後、シリコンバレーにてスタートアップ立ち上げ。その後、PayPalに参画し事業開発を担当。

PayPal Pte. Ltd. https://www.paypal.com/jp

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