押さえておくべきECマーケティング7つのトレンド(2)

清水 将平

前回のコラムにて、SEO対策での集客や、メールマガジンでの顧客へのアプローチ、そしてPCよりも利用率が高いスマートフォンについて触れてきましたが、今回は、そのスマートフォンで利用できる自社ECサイトの公式アプリについて、解説してきます。

④公式アプリは必要?

④公式アプリは必要?

アプリの開発には、主要なiOSとAndroidの2つのOSに対応したプログラムの開発が必要となり、またそれぞれのバージョンアップにあわせての仕様変更、動作確認など、自社開発を続けるのが困難なケースも多く、クラウドで提供されるアプリ開発プラットフォームを利用されるケースも多いのではないでしょうか。

また、外部の業者に開発を依頼してリリースしたもののダウンロード数も増えず、アップデートや機能改善もほとんどされない。そういったブラウザでの閲覧と何ら変わりない機能だけを提供しているECサイトのアプリも多く見受けられます。

自社ECサイトにおけるアプリとは、テレビCMで放送されるようなゲームや楽天やAmazonなどの大手モールのアプリとは違い、お客様が能動的にダウンロードしてインストールされにくいものではないでしょうか。そもそもPCやスマートフォンのブラウザで閲覧できるECサイトで、注文から決済まで完結してしまうため、アプリをインストールしなくても困ることがないというのが現実。

では、自社ECサイトにとってアプリの役割は何なのでしょうか?「プッシュ」などの機能的なメリットは後述しますが、まずはお客様が所有するスマートフォンのホーム画面に、お店の入り口となるアプリのアイコンを表示してもらうことではないでしょうか。

お気に入りと呼ばれるブックマークやメールマガジンよりも、スマートフォンでは検索で情報収集をし、普段訪れているサイトにも再訪されるケースが増えています。同じように、スマートフォンのホームボタンの大量のアプリに埋もれたとしても、スマートフォンの検索機能に入力されたキーワードでWEBサイトだけではなく、自社ECサイトのアプリが表示されるメリットは大きいと考えます。

Yahoo!ショッピングでは、「5のつく日」にアプリで購入すれば、ポイント+2倍になり、楽天市場でもアプリで購入すると+1倍などの工夫をされているように、自社ECサイトでもアプリで購入するメリットを提供することも大事ではあります。しかし、その前にアプリをインストールしてもらえる「理由」として、アプリでしか取得できないクーポンや購入できない商品を案内するなど、できることから工夫してみまいかがでしょうか。

⑤プッシュ通知は、毎日配信してもOK!?

ECサイトではメールアドレスでの会員登録が必須であり、メールマガジンでの販促が当たり前ではありますが、スマートフォンが普及したおかげで、楽天やAmazon、ZOZOタウンなどのモールでもアプリの提供と販促が一般的になりつつあります。

そして、アプリで可能となるのが、「プッシュ通知」です。メルマガの場合、アプリのプッシュ通知と比較して非同期性が高く、送信したタイミングで必ずしも開封して閲覧してもらえるものでもありません。また受信者のメールボックスに埋もれてしまったり、迷惑メールとして振り分けられてしまい、開封さえしてもらえなくなると送信者側では手の打ち用がありません。

プッシュ通知の場合、基本的には即時配信されスマートフォンの画面に通知履歴が表示されます。そのため、メルマガより反応が早くなり、かつクリックした先のURLを指定することもできますので、お知らせしたいページへの誘導にも有効な手段だと言えます。

また、アプリのアイコンに表示されるバッジに数字を表示させるなど、リアルタイムに通知をお客様への訴求できる点で、メルマガよりも優れている販促手段と言えるでしょう。

ただ、プッシュ通知の場合もiOSとAndroidでは仕様が異なり、iOSの場合はアプリをインストールされたお客様に通知を許諾してもらう必要もあります。そのためAndroidのアプリと比較して、到達率は低くなる傾向があることは理解しておく必要があります。

その上で、プッシュ通知はテキスト情報だけではなく画像と音、更に動作までサポートできるので、メルマガと併用しながら活用することが有効な施策と言えるでしょう。

例えば、ZOZOのアプリの場合など、ほぼ毎日、それも1日に数回のプッシュ通知が送られてきます。メルマガほど通知回数を気にする必要もなければ、クーポンの配布ではなくクーポンを強制付与してお知らせする出荷や再入荷通知などを送ることで、お問い合わせを減らすことができ、より購買意欲を高めることが気軽にできるのも「プッシュ通知」の特徴です。

「プッシュ通知」は、メルマガ同様に顧客情報を元に、性別、年齢、誕生日や購入回数、都道府県など、セグメントして配信することが可能ですが、何よりもメルマガと違い、通知が目的となります。そのため、原稿の作成の手間も少なく配信数無制限で無料というサービスが多いように、メルマガと違い配信コストが低い点を考えると早く取り組むべき販促手段と言えるでしょう。

⑥これから当たり前になる?WEBプッシュ

⑥これから当たり前になる?WEBプッシュ

最近では、メディアなどのサイトにアクセスすると、上記のようなダイアログが表示されることが多くなりました。これは「WEBプッシュ」と呼ばれるブラウザに通知できる機能によるものです。「WEBプッシュ」をサポートしているブラウザも増え、メルマガの代わりとしてサポートするサイトが年々増えているようですが、まだまだ多くのECサイトでは活用されていないようです。

最近では、Yahoo!ショッピングの「5のつく日キャンペーン」のサイトでも設定されましたので、ECサイトでもPC版のトップページに設定しておくこともできます。また、購入履歴など特定のページに設定しておくことで、購入者への通知手段として活用できるのではないでしょうか。

アプリのプッシュ通知のように100%お客様に届く通知手段ではありませんが、日中にはスマートフォンではなくPCを操作することが多いOLやサラリーマンがターゲットとなるようなECサイトの場合、WEBプッシュとアプリのプッシュ通知を併用することで、より見込み客にセールなどのイベントを認識してもらえる可能性も高くなるでしょう。

弊社でも活用しているアプリのプッシュ通知とWEBプッシュをサポートした「OneSignal」というサービスがありますが、無料プランもありますので、参考までにご紹介さていただきます。

⑦一度使うとハマるのがSMS

昔から存在する通知手段にも関わらず、ECサイトであまり活用されていないのがショートメッセージとよばれるSMS。SMSを送信するプラットフォームは数多く存在しますが、NTTドコモやソフトバンクなど国内のキャリアと直収接続して配信する方法と、海外の回線を経由して配信する国際網を利用して配信する方法と2パターンが存在します。前者は、比較的配信コストが高い反面、送信先のキャリア判別も可能になり、また到達率が高いのが特徴です。後者は配信コストが抑えられる反面、海外からのSMS送信を拒否されていると配信されないため到達率も低くなる傾向があります。

また、SMSでは送信元の番号や番号の代わりに文字列を指定することも可能ですが、キャリア別にSMSの仕様が異なるため、受信者のキャリアによって異なる通知手段ということも把握しておく必要があります。

更に、昨今のMVNOを呼ばれる格安携帯の普及により、データ専用SIMなどSMSサービスを契約していない携帯電話番号へは送信できないケースもあります。SMSを送信するまで、届くかどうかがわからない通知手段でもあることも理解しておく必要があります。

それでもメールやアプリのプッシュ通知と比較して、①着信したかどうかまでを判断できる通知手段として、②他の通知手段と比べて確実にお知らせする方法として、ECサイトでも活用すべきサービスだと考えています。そのため、弊社でも数百社のクライアントに配信できる環境を提供してきました。

その効果として、従来では支払い遅延のお客様に対して、最終手段として葉書などの郵送物に変えてSMSを活用することで未払い率も大幅に低下し、1通あたりコストも10分の1に削減できている結果を報告いただいております。

弊社自身も自社開発した国内と国際のSMS配信サービスを活用し、用途に応じて使い分けております。その結果、セミナーの受講票の送付から顧客へのセールスなど、メールマガジンでは考えられないほどの開封率と反応率の高さで、無くてはならない販促手段となっております。

SMSはメルマガやプッシュ通知のような不特定多数に一斉送信するにはコストが高くなります。ですから、まずはカスタマーサポートでのメールや電話の代替え手段の1つとして、利用されてみてはいかがでしょうか。


著者

清水 将平

JECCICA 一般社団法人ジャパンEコマースコンサルタント協会 特別講師
楽天株式会社でのECコンサルタントの経験を経て、上場企業からショップ・オブ・ザ・イヤー受賞店舗も含む楽天ショップ1,000社以上が所属する日本最大級の会員サポートサービス「ECマスターズクラブ」を運営。47都道府県すべての会員に対して、24時間以内に回答するフォーラム、毎日のサポートレターでは、最新情報からノウハウ、そして、業務効率化や集客対策ツール、ライブ形式でのセミナーなどを様々なサービスを提供中。

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